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サウナー、先人の想いに応える

ある夜。街全体の改修に目処がついた頃、ユキハが俺を宿の奥の蔵へと呼んだ。


「サウナー様。これを見ていただきたくて……」


彼女が差し出したのは、カビ臭い一冊の古い日記だった。それは、かつてこの街を築いたという、あの異世界転生者の手記だった。

そこには、驚くべき事実が記されていた。


『……温泉街は形になった。だが、私の心には一つだけ心残りがある。故郷にあった、あの熱い石の部屋……サウナを作りたかった。しかし、この街の泉質は特殊すぎた。硫黄が強く、不用意に蒸気を溜めれば毒となる。今の私の技術では、人々を危険にさらす。私はこの夢を、いつか来るかもしれない、私よりも賢い、あるいは私よりもサウナを愛する者に託そうと思う……』


日記の最後には、日本語で一言、こう書かれていた。


『あとは頼んだぞ、同志。』


俺は、その言葉をなぞりながら、目頭が熱くなるのを感じた。

(……あんたの夢、確かに受け取ったぜ。あんたが作ったこの街は、今、最高にととのってるよ)


「……サウナー様?」


ユキハが不思議そうに俺を覗き込む。


「いや、なんでもない。ただ……この街に来て、本当によかったと思ってな」


俺は空を見上げた。先人が見たのと同じ月が、湯けむりの向こうで輝いていた。

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