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立花慎一郎の記憶「息子からの要請」

早朝、我が家がある町の近くにある登山口。

私はそこで息子の大吾からの連絡を待っていいる。

 

深夜二時すぎ、大吾からの要請で山岳地帯で大規模な地滑りが起こっているので、登山口を封鎖して、そのまま登山口で待機していて欲しいと頼まれたからだ。

今は深夜で真っ暗闇だから身動き取れない、空が明るくなって、ある程度周りの状況を確認できたらもう一度連絡すると告げられている。

 

本来所轄の警察や消防に通報するのが筋なので、私は各方面に報告後、登山口に急行した。

大吾からの連絡の際に自衛隊レンジャーの要請も受けている。

現場は暗くてまだ被害の詳細は確認できないが、けたたましい音の地響きと激しい地揺れから警察隊では二次災害に巻き込まれる恐れもあるため、登山口で待機してもらい、まずは災害に強いレンジャーのみを寄越して欲しいとの要請だ。もちろん私もレンジャーに同行するつもりだ。

 

夏の朝だ、もうすっかり辺りも明るくなっている。そろそろ私の方から連絡を取ろうかと思っていたところに。息子からの連絡が入る。

「父さんおはよう、待たせてしまってごめん」

声の感じから元気そうだ。少し安心して大吾と話す。

「どうやら無事のようだな、どうだ現場の様子は?」

「うん、はっきり言って酷い有様だよ。俺は無傷で心配はいらないけど、やっぱりまずレンジャーのみの探索をお勧めするよ。父さんも同行するつもりでしょ?」

「そのつもりだ、私だって自衛隊の端くれだ。それなりの訓練もしっかり受けている。レンジャーの足を引っ張ることはないぞ」

「はははっ、そうだね。俺も父さんが来てくれると心強いよ」

我が息子ながら嬉しいことを言ってくれる。私はゆるむ頬を取り繕いながら問う。

「んんっ。それで災害現場の場所は?」

「登山道の途中でちょっとした広場があっただろ?その広場のちょっと先が俺の確認できた地滑りの現場だよ。その広場のおかげで俺も無事避難できたよ。他にも地滑りがあったかもだから、気をつけて来てくれ」

「ああ、わかったそれでは今から向かう。念の為お前はその場を動かず待機しているように」

「了解。待機しておくよ」

 

大吾との通話を終え、地元警察に状況を伝えて登山口の閉鎖ともしもの時のために待機を要請し、レンジャー三名と共に登山を開始した。

同行のレンジャー三名は、酒井3等陸曹、市岡隊士長、神永隊士長。レンジャーの中でもさらに精鋭と呼ばれるものたちで、私とバディを組むのは酒井三等陸曹、残りの市岡隊士長と神永隊士長のバディで山道を進む。

ちなみにこの三人は屈強な隊士であることはもちろんだが、厳つい外貌とは裏腹に内面はとても温厚で、人情家でも知られている。ついた通り名が「鬼団子三兄弟」である。昔流行した子供向けの歌のタイトルを引用して、見た目は厳ついが中身は優しい甘さとの意味が込められているようだ。

 

しばらく辺りを警戒しながら山道を進んでいくと前方より数人が走ってこちらに向かってくる音が聞こえてくる…。

「んっ?あの三人は…」

前を進む、神永隊士長の声に、私は胸元にあった双眼鏡で前方を伺う。

「あっあれは…大吾?待機しておくよう言っていたのに…。誰かを背負っているなぁ…っ!ヒロシか?まさか怪我でも追っているのかっ?」

大吾に背負われたヒロシを確認すると、私は双眼鏡を覗き込みながら、レンジャーたちに伝える。

「負傷者がいる模様!応急処置の用意を!」

「はっ!」

レンジャーたちはテキパキと行動に移す。

「んんんんっ!美羽?なぜこんな危険な場所に美羽がいる!」

美羽のことも気がかりだが、まずはヒロシの怪我の具合だ。

レンジャーたち三人も、応急処置の準備も済ませ、準備万端とばかり三人の到着を待っている。

私は不安を押し殺しつつ、心を落ち着け、前方から向かってくる三人をこの場で待つことした………。

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