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立花大吾の記憶「青鬼のおじちゃん」

俺は海の中を漂っていた。

ふと傍を見ると、妹の美羽も俺と同じように、海中をゆらゆらと漂っている。

(なんとか美羽だけでも、助けたかったなぁ…)

…んんっ!なんだこの感じ!デジャブ?

 

「美羽起きろ!」

美羽の肩を揺さぶる。

「ん〜、お兄ちゃん?」

美羽は目を覚まし、しばらく呆然としていたが、やがてこの状況を把握したのか、ゆっくりとした口調で俺に尋ねてくる。

 

「この状況、前にもあったよね?」

その美羽の言葉に反応するように俺たちの頭上から声が響いてきた。

《おおっウヌら目覚めたか!》

「「あっ!青鬼のおじちゃん!」」

《フフフッ…ウヌらは変わらんな…》

息ぴったりの俺たち兄妹のセリフに、全身を海のような青で染めた大男が苦笑する。

 

「えぇっとぉ、どうして私たちは海にいて、どうして青鬼のおじちゃんがここにいるのかしら?…私たちは家の前で死んだはずなのに…」

《それはだな、我がウヌら兄妹の危険を察知して、ゲートを使って助けに向かったのだ。だが、あの海難事故の時と同様に間に合わなくてな…。その場にいた魔物どもは我が蹴散らしたが、ウヌらをそのまま放置する気になれなかったのでな、あの時と同じこの海に連れてきたのだ…本当にすまぬことをした…》

「フフッ、おじちゃんは私たちと会う時はいつも謝ってるわね。でもおじちゃんが謝る必要はこれっぽっちも無いと思うのだけど…」

「ああ、そうだな、俺もそう思う…。だが何か深い事情がありそうだな、おじちゃん、俺たちに詳しい話を聞かせてくれないだろうか?」

 

おじちゃんは俺の頼みに頷くと、これまでのことを時間を遡って語り始めた。

まず、おじちゃんの故郷「異世界」では地球でいうところの酸素にあたる、魔素の減少により、このままなにも手を打たなければ、異世界に住む全ての生き物たちが死滅することになることを俺たちに語った。

 

「なっ!それは大変じゃ無い!」

《そうだな…だが、それは異世界の問題であって、ウヌらの住む地球にはなんら関係の無いこと…。なのにあ奴らは…》

そして俺たちは、青鬼のおじちゃんは元々異世界を想像した神であったこと。その神のカラダを捨てて、魔物に生まれ変わり、皇帝として異世界全体を統治していたこと。そのうち魔素減少問題が勃発し、それが原因で皇帝の座から引き摺り下ろされたことを聞きく、そして最後に、大多数の魔物たちが、地球にある魔素を求めて、地球に侵略しに来ていることを聞く。

 

《五年前にウヌらと出会ったときは、日本への侵攻の計画も無く、我はまだ皇帝の座にいたのだが、なんとか魔素減少を食い止める手立てを求めて、姉弟星であるこの地球にやって来ていた頃だったな…》

「そうか…この地球はおじちゃんのお姉さんが創造したもの。確かに何かの手がかりがありそうだものね…」

《そこでだが…我はウヌらに頼み事があってだな…》

「なにっなにっ?私たちが出来ることならなんでもやるけど?」

《そうかっ、では聞いてくれ、すまぬがウヌら今一度、生のやり直しをして、魔物どもの侵略阻止の手助けをしてくれまいか…。情けないが、我も姉が亡くなったように、死期が近いようでな、全盛期のような力の行使ができぬ、一人でも多くの地球側の協力者が欲しいのだ…》

「え〜っ!そんなの頼まれなくったって、やるに決まってるじゃ無い!」

「ああ!そうだな、むしろ俺たちの方が頼みたいぐらいだ!」

《そっそうか!やってくれるか!》

「もっちろん!任せて!」

 

そして俺たちと青鬼のおじちゃんは、魔物の侵略を阻止するための作戦会議をその場で開いた。

「おじちゃんの見立てでは、魔物軍は日本全国にすでに潜伏し終えているのね?」

《ああ、間違い無いだろうな。だが、ひとつ気になることがある》

「えっなに?」

《我の見立てでは、ヤツらは一斉に全国同時攻撃を仕掛けてくる、そう思っておったのだが、なぜかウヌらの町だけ他のどの地よりも先行して襲われていて、その間、他の部隊は動いた様子が一切見られなかったのだ》

「…それについては、俺に心当たりがあるよ」

《ふむ、その心当たりとは?》

「小鬼たちと話しているときに度々出てきたんだが、どうやら俺たちの町への先行攻撃は『勇者』って呼ばれているヤツの指示らしい。それでその『勇者』俺のことを知っているらしくて、まず俺が死なないと安心して日本への攻撃ができないって言ってたらしい…」

《勇者…。我が帝国にいた頃はその称号を持つものは誰もいなかったのだが…どうやら二世め、どこからから強力な助っ人を連れてきたようだな…》

「それでお兄ちゃんは、その勇者に心当たりは?」

「全く無い…。全く無いが、その攻撃開始の時間のズレ、それをうまく利用すれば、戦況はかなりこちら側に向くんじゃ無いかと思っている」

「えっなにそれ?」

「うーん、それについてはもう少しおじちゃんの持っている情報を聞いてからだな。

おじちゃん、異世界側にはおじちゃんに協力してくれる仲間たちはいないのか?」

《ああっ、それならいる。かなり多数の仲間達が集結を約束してくれたが、それでも今はまだ帝国側に対抗できるほどではなくてな…。だが、地球側と協力しあい連携をとることができれば、逆転が可能になるのではと考えておる》

「それじゃ、もうひとつ聞きたいだが、五年前の海難事故の時、おじちゃんは俺たちの時間を巻き戻してやり直しをさせてくれただろ?その時間どれぐらいまで巻き戻しができる?」

《やろうと思えば、ウヌらが生まれ落ちた時まで戻すことも出来るが、そうなると今回の侵略に関する一連の記憶が全てなくなってしまう。記憶の全てを失わなわずに巻き戻しができるのは命を落とした当日の起床した時間までだが、数分程度の記憶の欠落があっても良いなら、五時間程度が限度だな》

「その数分の記憶に大事なことが含まれなければ問題ないわけだ」

《そうだ。それにウヌらはふたりだ、ふたり同時に同じ時間の記憶を失うことはまずない。もしも記憶の欠落が起きてもお互いに補いあえばよいだろう》

「う〜む………よし!じゃあ俺たちも自衛隊や警察を仲間に引き入れよう!」

「えっどうやって?」

「それはだなぁ………」

そこで、俺が思いついた案を美羽とおじちゃんに披露する。

《ふむ、それが可能なら確実に魔物たちを押さえ込むことができるだろうな…》

「うんっ!私もいいと思う!」

「よしっ!それじゃ、巻き込んで悪いと思うが、ヤツもこの作戦に加わってもらうとするか!」

「えっ誰?」

「敵の嫌がることを瞬時に思いつき、実行できるヤツだ」

「あ〜わかった!ヒロシくんね!」

「そう、あいつがいたなら、不足の事態が起こっても、窮地を乗り越える更なる妙案を打ち出して、誰よりも効率よく進めることができるはずだからな…」

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