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勇者がいない別世界1(学校の怪談)

俺は今、学校の怪談というものを目の当たりにしている。


今までの俺なら学校の怪談と聞けば、誰かが面白がって作った、作り話だと鼻から信じてはいなかったのに…。


でも、今、目の前で見ている光景を見ると、あながち今まで聞いてきた話の中には真実も混じっているのではないのか…。と思わされてしまう。


ふと、時計を見る。午後6時58分。


今の季節は秋で、夜が訪れるのが早い。下校時間をとっくに過ぎたこの時間帯、窓から見える校庭はもう真っ暗で生徒や先生の人影は全く見当たらない。


そんな中、俺のクラスの教室だけ煌々と明かりが灯されている。


俺は廊下から、煌々と明かりが灯る教室の中を、恐る恐るのぞいている状態だった。

俺が覗き込んでいるその教室の中には、男子生徒がひとりいる…。


その男子生徒は、「誰も座っていない席」に向かって楽しげに話しかけていた。


それだけなら、俺としては、その男子生徒にどこか良い病院を紹介すれば済むことなのだが、その男子生徒しかいない教室内から、男子生徒とはまったく違う声で、その男子生徒へ返事を返す声が「誰も座っていない席」から聞こえてきているのだ…。


結局、俺は教室内に入ることができず、下校途中で気がついた自分の席の忘れ物を取ることもできないで、すごすごと帰宅するのだった…。




「よう!『夏彦?』おはよう!」

「おはよう!『夏彦?』くん!」

「おはよう!『夏彦?』今日も早いんだな」


翌朝、いつも通り登校して教室内の自分の席に座っていると、ここ最近ではすっかり見慣れた風景になっている「誰も座っていない席」へのクラスメイトたちの朝の挨拶が、聞こえてくる。


クラスメイトたちから挨拶されている「誰も座ってない席」。

そう、昨日の夜、俺が目撃した会話を返してくる不思議な席だ。


その席は、クラスメイトたちから「夏彦?の席」と命名されていた。

きっかけは、誰だったかは忘れたが、その席に向かって「夏彦?」と呼びかけたことから始っている。


前から二番目のど真ん中に鎮座するその席は、よくよく考えてみると、俺がこの高校に入学した時から、そこにあった。

誰も座らないのに、誰も片付けようとしない。


担任の教師も、この教室に訪れる各教科の先生も、そしてずっとこの教室にいる生徒たちも、全く気に留めることなく、「夏彦?の席」はそこにあり続けていた。


俺にしてもそうだ、昨日の出来事があるまでは、「夏彦?の席」のことを全く気にしていなかった。ただ、そこにあるのが当たり前と思っていて、何の違和感も感じていなかったからだ。


「『夏彦?』おはよう」

来た!


昨日の夜、「夏彦?の席」と楽しそうに会話をしていた男子生徒…美波雄二だ!

美波雄二は一学期の頃、俺のことを大層嫌っていたそうだ。だが夏休みの頃、中学時代の俺の友達たち「三人衆」と美波雄二の和解がきっかけで、俺ともかなり仲良く接してくれるようになったのだ。

いつもなら、登校したらすぐに俺に話しかけに来てくれる雄二は、なぜか今日に限って話しかけにこない。

昨日の夜のことを、それとなく聞いてみようと思っていたのに…。


「ようっ!大吾っ!……どうしたボーとして、いやボーしているのはいつものことかっ!」

「わっびっくりした!なんだヒロシかよ、脅かすなよ」

「何だ?…普段は何事にも動じない不動の大吾が、今日は珍しいな。何かあったのか?」

俺にそう話しかけているのは、俺の小学校からの相棒、三島ヒロシだ。

こいつは俺の隣のクラスだが、なにせ頭が切れて、勘がいい。「夏彦?の席」と雄二のことを、こいつに相談することしよう。

「ちょっと、お前に相談がある。昼休みに屋上で飯を食いながらどうだ?」

「ああ、それはいいけど、雄二はどうすんだ?あいつも一緒についてくるんじゃないのか?雄二に聞かれてもいい話か?」

「おう、雄二がついてくるなら、それはそれで好都合だ。なにせその雄二のことでの相談だからな」



俺たち以外誰もいない昼休みの屋上。今日は天気も良くてポカポカしていて気持ちがいい。怪談話をするにはもってこいだ。


ヒロシが言ったとおり、雄二も一緒についてきている。俺は卵焼きを口に入れようとしている雄二に単刀直入に聞いてみた。

「なぁ雄二、お前昨日の夜、『夏彦?の席』と何を話していたんだ?」

「ブッ!ゲホっゲホっ!…なんだ大吾くん聞いていたのかい?」

「なんだ?なんだ?夏彦?の席?なんのことだよ」

「まあ、まあヒロシくん、落ち着いてくれ。ちゃんと説明するよ、ちょうど僕から君たちに、その話をしようと思ってたんだ。どうやって切り出そうか悩んでいたけど、手間が省けて丁度よかったよ」


そうして、雄二は俺たちに、昨日の夜の「夏彦?の席」との会話の内容を話し始めた。

「その『夏彦?の席』には、1号くんと2号くんが座っていてね、そのふたりが、大吾くんとヒロシくんに会いたがっていて、僕も含めた三人に話がしたいと声をかけてきたんだ」

「1号?2号?誰だそりゃ?それに、なんでひとつの席にふたりで座ってるんだ?」

「それは僕にもよくわからないけど、なんだろう?急に声をかけられたのに怖くなかったていうか、逆に懐かしくて、安心感を覚えたというか…。とにかく、どうしてもふたりのお願いを聞いてやりたくなったんだよ…」

「ほう、極度のビビり症のお前が、珍しいな…」

「いやいや大吾。お前、言い方ってやつがあるだろう…」

「いいんだ、ヒロシくん、大吾くんのいう通りなんだ。君たちが知ってるように、極度の小心者の僕が、全然平気だったんだよ!これには僕自身がビックリしちゃって…。なぁどうだろう、今日の放課後、誰もいなくなった教室で、1号、2号くんの話を聞いてやってくれないか?」

「ああ、俺は構わないぞ」

「誰も座っていない、喋る席の話を聞くのか…なんだか面白そうだな!よしっ俺も行くぜ!」



午後8時、俺たちは放課後、一旦自宅に戻り、ふたたびこの教室に集合していた。

「なあ、こんな時間に教室の明かりをつけたら目立つし、誰か先生とかが注意しにやってくるんじゃないか?」

「ああ、それが不思議なんだよ、昨日の夜、僕は『夏彦?の席』と話し込んでいたんだけど、しばらくしたら警備の人だと思うんだけど、遅い時間なのに電灯が灯っているこの教室を無視するように、廊下を通り過ぎたんだ…。だから今日も大丈夫だと思うよ」

「へぇ、それは不思議だな…。きっと『夏彦?の席』が不思議な力を使っているのかもな」

「おいおい、大吾はともかく、雄二、お前なぜだか全然平気そうだな…」

「フフッそうだね」


若干ビビり気味のヒロシをほっといて、教室の電気をつける。

『おおっ!大吾っヒロシっ待ってたぜ!雄二もありがとうなっ』

『やぁ!ふたりとも、こんな遅い時間にすまないね』

突然、ふたり分の声が、「夏彦?の席」から聞こえてきた。


「ああっ大丈夫だ」

いきなり声をかけられた俺だが、なぜだかふたりの声に親しみを覚えて、普段友人に話すように返事を返す。

「おおっ大丈夫だぜ、どうかしたのか?」

どうやらヒロシも、俺と同じような感覚になったのか、いつもの調子で友達に会った時のような返事を返している。


『ハハッ、ふたりとも相変わらずだな。今日お前たちを呼んだのは、三人に頼み事があってな』

「「「頼み事?」」」

『頼み事っていっても、そんなに難しいことじゃないんだ。だけど君たち三人にしか頼めないことなんだよ…』

「そうなのか?それなら、話してくれ、俺たちで出来ることなら、なんだってやるぞ」

『ありがとう!それじゃ話すけど大吾くん、君は昔、海難救助をした時に大きな青鬼に会ったことがあっただろう?その青鬼ともう一度会って欲しいんだ』

「なに?青鬼のおじちゃんのことか?そんなことよく知ってたな…」

「青鬼のおじちゃん?…そういえば美羽もそんなこと言っていたよな…」

「なになにっ!その青鬼のおじちゃんって?」


俺はヒロシと雄二に、青鬼のおじちゃんの話を聞かせる。両親にさえ信じてもらえなかった話だ、俺と美羽は、いつも一緒にいるヒロシにだけ打ち明けたことがあったが、ヒロシでさえ本気にしていなかったようだ。

「マジかよぉ…あの話本当のことだったんだな…信じてやれなくてゴメンな…」

「その時、美羽くんもいたんだね…怖かっただろうに、頑張ったんだね…」

「それで、青鬼のおじちゃんに会うってどうすればいいんだ?会い方がわからないぞ」

『それなら簡単だぜ、大吾と美羽ちゃんが海難救助したあの海に行くだけだ。そうすればその青鬼に出会える。できればお前たちが思いつく限りの人を誘って、その海に向かって欲しいんだがな…』

「出来るだけ大人数で行った方がいいんだな。わかった、出来るだけ誘ってみよう。でも、なんで俺たちは青鬼のおじちゃんに合わなくてはいけないんだ?」

『それは僕から説明するよ…』


おそらく話し方が雑がほうが1号、丁寧なほうが2号だから、2号が青鬼のおじちゃんと再会しなければならない理由を俺たちに話し出す。


その話はかなり長かったので簡単に説明すると、異世界と呼ばれる世界から、魔物と呼ばれる恐ろしい生き物が、この日本に攻めてくるとのことで、青鬼のおじちゃんはというとそれを阻止するために動いていて、俺たちの役割はその青鬼のおじちゃんが動きやすいようにするための手助けとのことだった。


ちょっと簡略しすぎたが、大丈夫だ。俺はちゃんと話を理解している。多分…


「でも、日本…いや世界の命運を分けるような、そんな重大なこと、まだ高校生の僕らにできるのかなぁ…」

『それなら、大丈夫だ!何せお前たち三人は、この俺たちを負かしたんだぜ!きっとうまく行く!俺が保証するぜ』

「お前たちを負かせた?俺たちが?それはいつのことだ?」

『まあ、それはおいおい話してやるよ。それよりも頼んだぜ!日本をよろしくな!』

時刻は0時を過ぎた頃になっていたので、俺たちはひとまず学校を後にした。



次の日から、早速俺たちは行動を開始する。

青鬼のおじちゃんに会いに行くのは今度の土日。その日は親戚の家に泊まらせてもらうことになっている。メンバーは俺の友人関係で、ヒロシ、雄二、三人衆、大谷、そして塩谷。美羽の友人関係で、サチコ、美奈、橋田ユキ。隣の県に引っ越していた橋田は丁度その日はサチコの家に遊びにくるとのことだったのでサチコが誘ったようだ。

そして最後にうちの両親。土日に併せて連休が取れたらしく、大型車の免許を持つ父が、レンタカーでマイクロバスを借りてくれて、みんなを引率してくれることとなった。


俺たち三人と美羽以外には、青鬼のおじちゃんのことは伏せてある。1号2号は、みんなに事情を話してもらっても構わないと言っていたのだが、2号が「でも、話しただけでは信じてもらえないだろうから、直接、青鬼さんに会ってからでいいかも」というので、今は黙っていた。


明日はいよいよ、青鬼のおじちゃんとの再会の日だ。

何せ青鬼のおじちゃんは、俺と美羽の命の恩人でもある。あの時はロクにお礼も言えなかったので、明日会ってちゃんとお礼を言おうと美羽と話し合っていた。


その日の放課後、ヒロシと雄二、そして美羽を連れ立って、明日のための買い出しに街に繰り出していた。


「大吾?それにヒロシか?…美羽ちゃんもいるのか?」

四人で街を歩いていると、声をかけてくるヤツがいる。


「井上先輩?…ああやっぱり裕太先輩だ!久しぶりだなぁ」

ヒロシが、井上先輩に駆け寄って行き、俺たちも後を追う。

「井上先輩、久しぶり!こっちに帰ってきてるのか?」

井上先輩は俺たちのひとつ上の先輩で、かなり頭が良くって、俺とヒロシの勉強をよく見てくれていた。今の高校に通えるのも、井上先輩のおかげだと言ってもいい。今は県外のめちゃくちゃ頭のいい学校に通っているはずだ。


「あ…ああ…、そうなんだ…、ちょっとお袋の顔を見に帰ってきてるんだ…」

いつもは快活でハキハキした物言いの先輩なのだが、今の先輩はなんだか歯切れが悪い。少し気になっていると、なぜだかわからないが、明日の旅行に先輩も誘えと俺の心が訴えてくる。


「なあ先輩、もうお袋さんとは会ったのか?」

「ああ…、会ったよ」

「それじゃ、明日の土曜日なんだけど、俺の親戚ん家に、友達大勢で泊まりに行くんだ、よかったら先輩も来ないか?三人衆や大谷、塩谷なんかもいるぞ」


「……………。うんっ!わかった、よかったら俺も参加させてくれ!」


俺の誘いに、少し戸惑って考え込んだ先輩は、次の瞬間、吹っ切れたような笑顔で俺の誘いを了承した。なんだか昔の先輩に少し戻ったような感じがした。


「よかった!それじゃ明日の朝8時に駅前のクバルン号像の前で待っててくれるか?他のみんなもそこに集まるから」

「ああ!わかった。楽しみしてるよ!」


その場で約束を取り付けた井上先輩と別れると、雄二が俺に話しかけてくる。

「井上裕太先輩だっけ?来てくれることになってよかったよ!なんだか胸の奥で1号2号が誘え!誘え!ってうるさかったんだ。それに、とってもいい感じの人だったからね、僕も嬉しいよ」

「ああっ?お前もそう思ったのか?実を言うと俺もなんだ」

「三島くんも?私もそう!」

ヒロシも美羽も激しく同意を示した。

なんだか不思議だけど、これなら他のメンバーも先輩の飛び入りを歓迎してくれそうだ。誘えて本当によかった…。



旅行当日、本日も快晴なり!

俺と美羽は約束の8時の10分前にクバルン号像の前にやってくると、すでに他のメンバーは揃っていた。


「それでね、それでね、井上先輩!このクバルン号というのは、昔、苦学生だった酒井浩がね、新聞配達に使っていた自転車でね…」

何やら大谷が、井上先輩にクバルン号について熱心に説明をしているところだった。

「ほうっほう!あのエピソードはこのクバルン号が関係していたのか!」

井上先輩も熱心に大谷の話を聞いているが、他のメンバーはふたりから少し遠ざかったところで他人のふりをしていた。


「おはよう!みんな早いな!今、親父とお袋がレンタカーを借りに行っているから、マイクロバスがもうすぐ来るよ。みんな忘れ物なんてないか?」

「「「大吾先輩、美羽、おはよ〜。準備万端!大丈夫よ!」」」

「「「「「「「おはよ!大吾、美羽。俺たちも準備万端だ!」」」」」」」

俺の挨拶にみんな元気よく返事を返す。みんな楽しそうでなによりだ!


しばらくしてやってきたマイクロバスがロータリーに停車すると、みんな元気にマイクロバスに乗り込み、いざ出発だ!


道中もマイクロバスの車内は賑やかで、歌を歌っているヤツや、お菓子を分け合って美味そうに食っているヤツ、車内は常に楽しそうな笑い声が響いている。

「なんだか、学生気分に戻れて、とても楽しいわ。ねっダーリン、あなたもそう思わない?」

「ああ、まったくだね。たまには、こういう旅行もいいもんだ!今日が休みで本当によかったよ」

父も母も、満面の笑顔で楽しそうに会話をしている。


「ねえ、裕太先輩、ちょっとだけこの問題の解き方、教えてくれない?」

サチコが先輩に、自分の問題集を見せながらそう話しかける。

「じゃあ、わたしも!雄二先輩、ここの英文法の使い方、いまいちわからないから教えて!」

サチコに便乗してユキが雄二に話しかける。


「おいおい!楽しい旅行中に勉強なないだろぉ…」

ヨコがそう抗議をすると、他の三人衆も大きく頷いている。

「はぁ〜なにを言っているの横山先輩?今このマイクロバスに、ふたりも賢者が同席してるのよ。来年受験の私たちにとって、こんなチャンス滅多にあるもんじゃないわ、ちょっとだけ、30分でいいわ、お願い!」

ユキがヨコの講義に反論する。


「おい、ユキちょっと聞き捨てならないぞ。賢者はそのふたりだけじゃないだろ?」

大谷が自分をアピールするように、親指を自分の顔に向けて、そう抗議する。

「まあ、確かに大谷先輩、大吾先輩、浩先輩、それに塩谷先輩もそれなりに賢いわね、でも教え方が…」

サチコが大谷にそう返すと、三人衆は自分たちの名前が出てこなかったのでショボンとしている…。


「なんだよぉ…。俺たちの教え方が気に食わないのか?」

「そうよ!…そうね、まず大谷先輩、先輩はどんな質問でもすぐに新聞の話に繋げていくでしょ…。大吾先輩はマイペースというか、のんびりというか、とにかく呼吸が合わない…。ヒロシ先輩は教え方がひねくれているというか、普通の考え方の斜め上から説明してくるから、ますます混乱してくるし…。塩谷先輩は問題の解き方の例え話に必ずラノベの主人公を持ち出すでしょ、私たちそのラノベ知らないし…読んではみたいけど受験生だから時間ないし…」


ユキの言い分に、それまで意気揚々と自分の推しのラノベの話をしていた塩谷も、三人衆の近くの席にスゴスゴと移動するとションボリチームに加わる。


「それに比べて、この賢者ふたりは違うわ!裕太先輩は昔から教え方が上手なのは知っていたけど、雄二先輩も裕太先輩に負けず劣らずわかりやすいの、さあ!何か反論はある?」

サチコの勢いに、タジタジとなって「新聞は人生の糧になるんだぞ…」と小声で呟いている大谷のフォローを入れるように裕太先輩が口を開く。

「まあまあ、いいじゃないか。30分だけだろ。俺たちで良ければ喜んで教えてあげるよ!なっ雄二くん?」

「そっそうだね、僕は全然構わないよ」


そうして途中、マイクロバスの前後で勉強チームと、馬鹿騒ぎチームに一時分かれて過ごしていたが、宣言通り30分過ぎた頃に、スッキリ満足した顔で、サチコとユキは馬鹿騒ぎチームに合流した。

「学校の先生になん度質問しても、いまいち分からなかった問題が、今ハッキリ理解できたわ!ありがとう裕太先輩!」

「わたしも!わたしも!これさえ理解できれば他の問題にも応用が効くわ。本当ありがとう!雄二先輩!」

「「どういたしまして!」」

「おお!それはよかったな!ところでお前たちが分からなかった問題ってどんなだ?」

ヒロシが、サチコとユキにそう尋ねると、ふたりは興奮した様子でどんな問題がわからなかったか、そしてそれをどう分かりやすく教えてもらったかを説明する。

「おーそうか!俺も理解できたぞ!…実を言うと俺もその問題、まったく理解できていなかったんだよ!」

ふたりの説明を聞き終えると、これまた興奮気味に是永が声を上げる。

是永の元気な声に便乗して、ションボリしていた三人衆と塩谷が息を吹き返す。

「俺も!俺も!今、ハッキリ理解できたよ!」

「ああ、なるほど、なるほど、そう言うふうに説明すると分かりやすいのか〜」


それからは全員、勉強の話で大いに盛り上がり、ひいてはお互いの将来の夢の話になり、みんな目をキラキラ輝かせて、夢の話に花を咲かせた。


よく耳にする言葉だが、楽しい時間はあっという間で、目的地の港町がもう見えてきた。今日の昼食は、昔、俺と美羽が海難救助をした現場の砂浜でバーベキューの予定となっている。11時半ごろにはその砂浜に到着できるだろう。順調、順調。


ただ、その砂浜に青鬼のおじちゃんが現れることになっているのだが、きっと体長が5メートルほどある、しかも、全身真っ青な青鬼のおじちゃんが突然現れると、みんなは絶対にびっくり仰天するはずだ。


果たしてどうなることやら…。

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