希望の芽生え
リサの助けを借りながら、俺は領地の整備を続けていた。畑作りや水の確保、そして簡単な住居の修復。少しずつではあるが、確実に形になり始めていた。しかし、まだまだ解決すべき問題は山積みだ。
まず、住居はどうしても不足している。リサと二人で作れるものは限られているし、ここでの生活は荒地そのもの。日々、厳しい条件の中で生き抜くために、少しずつ工夫しながらやっていくしかなかった。
「今日は水を引く作業をしてみよう。ここから少し離れたところに川があるから、そこから引いてこよう」
俺はリサにそう言って、川に向かうために準備を始める。途中、近くの木を切り倒して木材を集め、少しでも効率よく水を引けるように工夫を重ねた。
リサも黙々と手伝ってくれる。俺たちは言葉少なに作業を進めたが、それでも少しずつ、確実に進んでいく実感があった。こうして、どんどん領地が発展していくんだろうなと、少し希望を感じる瞬間だった。
夕方、日が落ちる直前。少し疲れた俺たちが休憩していると、また遠くから足音が聞こえた。
「またか?」
今度は、先日リサと同じように誰かが訪れるのだろうか。気になる俺は、すぐに立ち上がり、音の方向へ向かって歩き始めた。
しばらく歩くと、前方に見知らぬ男が現れた。中年の男で、顔には少し疲れが見えるが、しっかりとした足取りで歩いてくる。目の前に来ると、男は少し躊躇しながらも、ゆっくりと声をかけてきた。
「すまないが、この辺りで一晩泊めてもらえないか?」
その言葉に、俺は少し驚いたが、すぐにリサと顔を見合わせる。
「君も、避難民か?」
男は少し黙った後、頷いた。
「そうだ。隣国の戦争で、家族と離れ離れになってしまった。頼む、ここで一晩だけでも」
その言葉には、ただならぬ事情が感じられた。戦争の影響で家族と離れ、逃げてきた人々がこうして次々にやってくるのだろうか。
俺は少し考えた後、男に声をかけた。
「分かった。ここに住んでもらうのは難しいが、一晩くらいは休ませてやる」
男は礼を言い、俺の後についてきた。
その夜、男を迎え入れた。彼は疲れた様子で簡単に食事を摂り、すぐに眠りについた。
俺もその後、リサと共に焚き火を囲みながら話をした。
「こんなふうに、戦争の影響で多くの人が逃げてくるのだろうか」
「はい、きっと。私も、ここまで逃げてきた理由は戦争からです。でも、少しずつでも力を合わせていけば、この荒れた土地もきっと変わりますよ」
リサの言葉には、希望と信念が込められていた。俺も、少しずつだが、この場所を発展させるためにやらなければならないことが見えてきた。
翌朝、男はお礼を言って去っていったが、彼の訪問は思った以上に大きな意味を持っていた。
その後、男が去った後も何人かの避難民が訪れた。俺の領地はまだ荒地で、何も整っていない場所だったが、それでも彼らには希望を持ってもらえる場所となりつつあった。避難民たちの力を借りて、少しずつ土地を開拓し、生活基盤を作り上げていく。
そんな中、リサもますます手伝いに積極的になり、俺も少しずつ領地の管理を任せるようになった。工業技術のスキルを駆使し、土地の整備が進んでいく。それに伴って、人々の生活が少しずつ楽になり、希望の光が差し始めていることを感じた。
これが、俺の領地の始まりだ。