初めての訪問者
あれから数日が経ち、土地には少しずつ変化が見え始めた。
井戸から水を汲み、火を使って暖をとり、何とか食料も確保できるようになった。日々の作業に追われる中で、俺の体力は確実に増していくのを感じる。しかし、まだまだ足りないことが多すぎる。
そして、その日もいつも通りに仕事をしていた。木を伐採し、薪を作り、かまどに火を灯し、朝の食事を作る。これが毎日の流れだ。
だが、昼頃。ふと、遠くのほうから人の声が聞こえてきた。
「誰だ?」
周囲には誰もいないはずだ。まだ領地の周辺にはほとんど人がいないし、隣国との戦争の影響で近くには避難民も少ない。
俺は手を休めて、音の方向に耳を澄ませた。すると、草むらの向こうに何かが動いているのが見えた。
「……まさか」
疑念が過る中、そっとその方向へ近づいていく。木々の間から覗くと、そこには一人の女性が倒れていた。
「しっかりしろ!」
慌てて駆け寄り、肩を支えて起こす。見ると、顔色が悪く、ぐったりしている。服は擦り切れ、足元も不安定だ。どうやら相当な疲労が溜まっているようだ。
「おい、大丈夫か?」
必死に声をかけるが、女性はうっすらと目を開けただけで、何も言わない。状況は予想以上にまずいようだ。
焦った俺は、すぐに持っていた水を彼女に差し出した。
「飲め、少しだけでも」
少しずつ水を口に運ばせ、彼女はしばらくしてからようやく口を開いた。
「……ありがとうございます」
その言葉に、俺はほっと一息をついた。そして、彼女がどんな状況でここまで来たのか、話を聞くことにした。
女性は震えながらも、ゆっくりと話を始めた。
「私の名前はリサ。隣国の村から逃げてきました……」
リサの話によると、彼女は隣国で起きた戦争の影響で、家族と共に避難をしていた。しかし、途中で家族と離れ離れになり、無事に逃げてくることができたのは彼女だけだったという。
「村は焼かれ、家族も……もう、どこにも帰れない」
彼女の目に宿る悲しみが、俺には痛いほど伝わってきた。だが、そんな彼女に俺はどうすることもできない。
「とりあえずここで休んでくれ。食事と水を取って、落ち着くんだ」
俺は手近にあった簡単な食事を差し出し、彼女が落ち着くまで待つことにした。その間に、どうしたらこの状況を乗り越えられるのかを考えていた。
リサが食事を取った後、少しずつ元気を取り戻し始めた。そこで、彼女が言った言葉が、俺にとって予想外のものであった。
「もしよければ、私、あなたの領地で働かせてもらえませんか? 今、私は住むところもなくて」
その一言が、俺にとっては大きな転機となるかもしれない。
しかし、この時点で俺にはまだ何も整っていない。
まだ荒れ地で生活基盤を作っている最中だ。
「領地なんて、まだ何もないようなものだ。でも、もし君が力を貸してくれるなら……」
そう言って、俺は少し考えてから答えた。
「君を無下にはできないから、しばらくここで休んで、何かできることがあれば手伝ってもらえるか?」
リサは目を輝かせて頷いた。
「はい、もちろんです!」
その後、リサは数日間、俺のところで休みながら、少しずつ体力を回復させていった。
そして、彼女の元気が戻った頃、俺は彼女に軽作業を頼むことにした。手伝いができるところから少しずつ始めてもらおう。
それから、リサと一緒に少しずつ土を耕し、畑を作ることを始めた。
最初は小さな範囲だったが、少しずつ土地が耕されていく。だが、それがどれだけ重要なことかは言うまでもない。
「こんなに早く畑を作れるなんて……」
「当たり前だ。こうして土地を育てて、食料を安定供給できれば、もっと多くの人をここに呼べるようになる」
そう言って、俺はリサと一緒に畑を耕し、少しずつ生活基盤を整えていった。