表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/21

初めての訪問者

あれから数日が経ち、土地には少しずつ変化が見え始めた。

 井戸から水を汲み、火を使って暖をとり、何とか食料も確保できるようになった。日々の作業に追われる中で、俺の体力は確実に増していくのを感じる。しかし、まだまだ足りないことが多すぎる。


 そして、その日もいつも通りに仕事をしていた。木を伐採し、薪を作り、かまどに火を灯し、朝の食事を作る。これが毎日の流れだ。


 だが、昼頃。ふと、遠くのほうから人の声が聞こえてきた。


「誰だ?」


 周囲には誰もいないはずだ。まだ領地の周辺にはほとんど人がいないし、隣国との戦争の影響で近くには避難民も少ない。

 俺は手を休めて、音の方向に耳を澄ませた。すると、草むらの向こうに何かが動いているのが見えた。


「……まさか」


 疑念が過る中、そっとその方向へ近づいていく。木々の間から覗くと、そこには一人の女性が倒れていた。


「しっかりしろ!」


 慌てて駆け寄り、肩を支えて起こす。見ると、顔色が悪く、ぐったりしている。服は擦り切れ、足元も不安定だ。どうやら相当な疲労が溜まっているようだ。


「おい、大丈夫か?」


 必死に声をかけるが、女性はうっすらと目を開けただけで、何も言わない。状況は予想以上にまずいようだ。


 焦った俺は、すぐに持っていた水を彼女に差し出した。


「飲め、少しだけでも」


 少しずつ水を口に運ばせ、彼女はしばらくしてからようやく口を開いた。


「……ありがとうございます」


 その言葉に、俺はほっと一息をついた。そして、彼女がどんな状況でここまで来たのか、話を聞くことにした。




 女性は震えながらも、ゆっくりと話を始めた。


「私の名前はリサ。隣国の村から逃げてきました……」


 リサの話によると、彼女は隣国で起きた戦争の影響で、家族と共に避難をしていた。しかし、途中で家族と離れ離れになり、無事に逃げてくることができたのは彼女だけだったという。


「村は焼かれ、家族も……もう、どこにも帰れない」


 彼女の目に宿る悲しみが、俺には痛いほど伝わってきた。だが、そんな彼女に俺はどうすることもできない。


「とりあえずここで休んでくれ。食事と水を取って、落ち着くんだ」


 俺は手近にあった簡単な食事を差し出し、彼女が落ち着くまで待つことにした。その間に、どうしたらこの状況を乗り越えられるのかを考えていた。


 リサが食事を取った後、少しずつ元気を取り戻し始めた。そこで、彼女が言った言葉が、俺にとって予想外のものであった。


「もしよければ、私、あなたの領地で働かせてもらえませんか? 今、私は住むところもなくて」


 その一言が、俺にとっては大きな転機となるかもしれない。

 しかし、この時点で俺にはまだ何も整っていない。

 まだ荒れ地で生活基盤を作っている最中だ。


「領地なんて、まだ何もないようなものだ。でも、もし君が力を貸してくれるなら……」


 そう言って、俺は少し考えてから答えた。


「君を無下にはできないから、しばらくここで休んで、何かできることがあれば手伝ってもらえるか?」


 リサは目を輝かせて頷いた。


「はい、もちろんです!」




 その後、リサは数日間、俺のところで休みながら、少しずつ体力を回復させていった。

 そして、彼女の元気が戻った頃、俺は彼女に軽作業を頼むことにした。手伝いができるところから少しずつ始めてもらおう。


 それから、リサと一緒に少しずつ土を耕し、畑を作ることを始めた。

 最初は小さな範囲だったが、少しずつ土地が耕されていく。だが、それがどれだけ重要なことかは言うまでもない。


「こんなに早く畑を作れるなんて……」


「当たり前だ。こうして土地を育てて、食料を安定供給できれば、もっと多くの人をここに呼べるようになる」


 そう言って、俺はリサと一緒に畑を耕し、少しずつ生活基盤を整えていった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ