表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/21

第1話 スキル授与と追放

ガタン、と石畳に膝をついた。


 ――俺は、異世界に転生したらしい。


 ……劣悪な環境の中、金属音が響くあの工場。休日出勤、長時間労働、機械油にまみれた日々。最後の記憶は、ラインの異常を直しに入った機械の中、突然落ちてきたアームの下敷きになったことだった。


 その次に目を覚ましたのが、このどこかファンタジーじみた空間。


 ここは「エストレア王国」。転生した俺――名を「ユウト」と与えられた――は、貴族の次男として生まれた。だが、それも今日で終わる。


「――スキル授与の儀を始める。静粛に」


 神殿に響く司祭の声。祭壇の上に立ち、ひとりずつ名前を呼ばれていく少年少女たち。スキルの光に包まれ、祝福の言葉を浴び、歓声が上がる。


「ユウト・グランディール」


 俺の番が来た。


 胸の奥で何かが震える。これは運命か、それとも再びの試練か。


 スッと意識が空に引き上げられ――視界が白に染まる。


 そして次の瞬間。


《授与スキル:工業技術Lv1》


 ……は?


 神殿に戻ると、沈黙が場を支配していた。


「……なんだ、それは」


「聞いたこともない」


「“工業”……? 職人スキルか?」


 貴族たちはざわめき、司祭ですら困惑した顔をしている。俺だけが、そのスキル名を見て震えていた。


 ――やっぱり、持ってきたんだ。俺の世界の技術と知識。


 それを確信した瞬間だった。


 だが、誰もそれを理解できるはずがなかった。父は失望をあらわにし、兄は嘲笑った。


「こんな外れスキルの者をグランディール家の名に置いておけるか。ユウト、貴様は今日限りで破門だ」


 そして、与えられたのは、北の荒れ地。人も住まず、草木も育たぬという捨て地。


 だが――俺は、うつむかなかった。


(いいだろう。なら、ここから始めてやる)


 この手にあるのは、“工業技術Lv1”。ブラック企業で叩き込まれた知識と技術。そして、何もないからこそ、何でも作れる自由だ。


 革命の火種は、今、石ころだらけの地に落とされた――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ