次郎さん 死す?
『ま、魔物!?』
忘れていた
俺が土の中にいた時も4足歩行の群れが何度も歩いていたと
次郎さんに助けられた時も魔物がいるから家に向かったこと
外に行こうとする次郎さんを見て
慌てて止めた
『待って次郎さん 魔物って襲ってくるんですよね 大丈夫なんですか!?』
次郎さんはにっこり笑って大丈夫と言った
しかし次郎さんのスキルってゾンビを人間に戻すスキル しかも今って85歳なんだよな……
魔物の強さがわからないけど さすがに無理では……
次郎さんは 立てかけていた釣り竿を持ち外に出ていた
は?釣竿が武器なの!?馬鹿なの?
もしかして 認知症からくる間違いとかそういう事!?
俺は慌てて外の様子を見た
狼のような魔物が3匹と二足歩行している狼 あれはワーウルフっていうやつかな?
いや…… きつくね?
次郎さんは何やら呪文のような言葉を唱えている
すると釣竿が光だし ルアーを狼に向かって投げた
ルアーはまるで生きているように狼に向かっていき首元にひっかっかった
これが魔法?なのかな?
そして さらに呪文を唱えると狼はいきなり黒焦げになって倒れた
すごい……
それを見た狼は後ずさっていると ワーウルフが次郎さんへと突っ込んでいく
次郎さん 危ない!!
ワーウルフが次郎さんに嚙みつき
バリバリと骨が砕かれる音がこちらまで聞こえてきた
俺は目を瞑ってしまい
このままではヤバいと思った
なぜ俺は家に居た?
俺は不死身なんだぞ
俺が囮でもなんでもすれば結果は変わったかも知れないのに
いろんな後悔と罪悪感
これは利用者さんの状態が急変した時と同じような感覚があった
苦しんでいるのに何もできない
出来る事と言えば 状態を観察して看護婦さんや主治医への報告
自分がもっと楽にさせれる知識があればと何度も悔やんだ
でも今なら不死身というチート能力がある
次郎さんを救える
無我夢中で外へ出ると
ワーウルフが噛みついていたのは さっき焦がした狼だった
どうやら 噛まれる前に引き寄せて身代わりにしたようだった
俺と次郎さんの目があったと同時に ワーウルフも焦げて倒れた
それを見て他の狼は逃げて行った
俺は安心して膝から崩れ落ちた
次郎さんは笑いながら俺を抱えて家に戻った
椅子に座ると
『お前は馬鹿じゃの~ わしがここに何年住んでおると思っておるんじゃ』
と笑っていた
言われてみればその通りだ
こんなに魔物しかいないのに普通に生活が出来る訳がない
それでも生活が出来ているっていう事は それなりに強いってことだ
85歳だけど…
こっちでの生活を学ばないとな
昔の次郎さんを知っているせいで 頼もしいと思いたいのに受け止めきれない……
たとえるなら ラーメンに一味を振りかけて辛さを求めたら 実は砂糖のように甘い……的な?
脳を切り替えていかなきゃな
『で さっきのが魔法だったの?』
あの釣竿が狼に触れてからの感電
あれはすごかった
『そうじゃな ワシは魔法が苦手でな 飛ばせないんじゃよ』
本来なら 魔法は飛ばして攻撃 アニメやゲームでは定番なやつ
しかし次郎さんは昔から魔法は飛ばせなかったようだ
でも至近距離からの魔法 つまりスタンガンみたいには使えるようで
触れていればかなりのダメージが入るようだ
『まーそれに気づいたのはこっちに来てから50年くらいしてから知ったんじゃがの』
と笑っていたが なんか色々もったいないと思えた
つまり50年間魔法が使えない ゾンビを人間に戻すスキルのみで生きてきたってことなわけで
ある意味すごいっていうか よく生きてたな次郎さん……
その後 俺は次郎さんから色々教わった
この世界の事 魔法の事
そして 約1年が過ぎた