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誤解

「仮に、仮にだぞ、相棒が犯人だとして、他の事件も説明がつくんだろうな? もし間違いがあれば、ただでは済まさないぞ」草次さんはすごい剣幕だ。


「そのときはどのような処罰でも受けよう。さて、暁殿が犯人だとすると、『春の間』の事件は簡単に説明がつく。自作自演じゃよ」

 喜八郎さんはたった一言で『春の間』での事件を片付けた。

「喜八郎さん、待ってちょうだい。暁さんは危うく死ぬところだったのよ。そんなリスクを負ってまで自作自演する必要があるのかしら」

 冬美さんは犯人が分かったことで、以前の恐怖心は消えたようだった。


「それは簡単じゃよ。自分で薬量を調整すればすむ話じゃ。気を失えば良いだけの話じゃ。少量でことは足りる。仮に由美子嬢が来なくても自力で起きることは可能じゃよ」

「確かにそのとおりです。本来の睡眠薬の使用方法とは違いますから。そうなると、事前に医療従事者に相談が必要だし、かなり綿密な計画ってことになりますね」由美子さんは看護師の立場から意見を述べる。


「さて、『春の間』の事件はあっさりと解決したわけじゃ」

「おい、それは俺を犯人と仮定すればの話だ! それに俺には『夏の間』の事件のときに、周平と一緒にいたっていうアリバイがあるんだぜ?」暁が噛みつく。

「暁の言うとおりです。彼は僕と一緒にいましたから、『夏の間』の事件を起こせるはずがありません。そもそも喜八郎さんが僕たち二人は白だって言ったじゃないですか! 矛盾してます!」

 喜八郎さんのちぐはぐな言動にイライラした僕は久しぶりに大声で怒鳴った。自分で言うのもなんだが、温厚な僕が怒ることはめったにない。最後に怒鳴ったのは反抗期に母親と言い争ったとき以来だ。


「そうじゃな。そこが一連の事件の肝じゃ。さて、次は『夏の間』での夏央嬢の殺人事件じゃな」

「な、夏央嬢!? 夏央さんは男性じゃないの? 事件が複雑すぎて混乱してませんか」天馬さんが心配する。

「気遣いありがとう。じゃが、心配は無用じゃ。わしはしっかりしておる。夏央嬢は女性じゃ。彼女は出で立ちも立ち振る舞いもボーイッシュじゃったからの。男性と勘違いするのも無理はなかろう。しかし、よく観察しておれば気づくことはできよう。彼女は時間を確認するときは手首の内側につけた腕時計で確認しておったじゃろう。女性特有の行動じゃな」


 確かに夏央は口調も男っぽいから、初対面の人には男と間違われることもたびたびあった。彼女は気にしていないようだったが。

 それに天馬さんはこの島で初めて会ったのだ、勘違いしても無理はないのかもしれない。草次さんは夏央を呼び捨てで呼んでいたし、由美子さんは「夏央さん」と呼んでいた。誰も「夏央くん」とは呼んでいないのだ。


「あとは天馬殿はその場におらんかったから知らんじゃろうが、『春の間』での一件のあと、その場にいた者で手荷物検査をしておる。そのとき彼女は女性チームとして同性同士で互いにチェックしておる」

「まさか夏央を男だと勘違いしているやつがいたとはな」暁がポツリと言う。

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