七日目 1/2
【七日目】
7/21 Tue. 1:00 P.M.
「休憩入ります」
一言だけ告げて、俺は休憩室に入って行った。
ロッカーから鞄を取り出し、その中から無線式盗聴器を取り出した。
イヤホンをセットして、“菅生先生”の自宅の様子を盗み聞く。
『……――ああ、分かった。じゃあ、いつもの場所で』
(……いつもの場所?)
先生が誰かと不審な通話をしていることに気付き、盗み聞きに神経を集中させる。
『あ、いや、僕の行き付けの喫茶店だよ。知ってるだろう?』
(………………)
少しだけ肩の力が抜けた。許容した外出圏内である。
先生の話し口調からして、会話の相手は担当編集者の榊という男だろうか。
『えーと、それじゃ、そっちで合流ということで、はい。じゃあね』
ピッ、という電話を切る音とともに静寂が訪れる。
後に部屋から聞こえる音は、衣擦れや足音などの単調な生活音だけになった。
(…………まぁ、いいか)
イヤホンを外して、再び鞄の中に仕舞いロッカーに戻した。
先生の行動を監視する意味合いで盗聴を始めたが、彼は思ったよりも協力的で、今日まで警察への通報を仄めかすような行動は見せなかった。
担当とのやり取りを聞いていても、誰かに口外しているとは思えない。それほどまでに愛猫のことを想っているのか、とつい首を傾げてしまう。
そっと右頬を撫でると、未だにヒリヒリとした痛みが残留していた。
……そろそろ休憩を終了しよう。
重たくなる腰を上げて、休憩室のドアを開いた。




