なんで!?現実世界にモンスターが!?
人生を諦めていたいじめられっ子はどのようにして、モンスターに支配された世界を生きていくのか。
「ファイアボール!」
「おい、ブレイブそっちにモンスター行ったぞ!」
「任せとけ!」
「ブレイブ!お前は最高の仲間だ!」
「よし、今日はここまでだな。」
「ブレイブさん、お疲れ様です。」
ーーまただ。
夢を見た。
僕、古川晴翔は昔から1人の人物?になる夢を見る。
その人はブレイブといい、この地球にずっと昔に暮らしていたらしい。
本当に実在したのかは知らない。
でもその頃の地球にはモンスターというあり得ないような存在があり、僕は夢の中でそいつらと戦っていた。
普通に考えてあり得ないのだが僕はこの夢が現実にあったことだと考えてしまっている。
「もう数え切れないほどこの夢見たな……」
僕はそう呟いていた。
「はるとー。朝ごはんできてるわよー!」
「わかった。」
母さんに声をかけられ僕はそう応える。
僕は少し焦げかかったトースト1枚を手に取り学ランを着て家を出る。
「行ってきます。母さん。」
「行ってらっしゃい!今日も楽しんできてね。」
そう言われてドアを閉める。
「……楽しんできてね……か……」
僕は学校というものを楽しめているかといえば全然楽しめていないだろう。
僕は世間一般で言ういじめられっ子という奴でいつも学校に行くのが憂鬱だ。
何故僕がいじめられてるかって、それは、
僕の髪色のせいだ。
僕は何故か生まれた時から赤色の髪をしていた。
黒髪が基本となる日本では赤髪はバカにされた。
そして僕の性格は内気でいわゆる陰キャという奴だ。
母さんにはそれは言えていない。心配かけたくないから。
「あぁ……いやだな。」
学校に行くのが辛い。そう考えていると、
「いっっ!?」
背中に衝撃が走って思わず倒れ込んでしまう。
「ハルトくんよー、何そんなとこで倒れてんだー!邪魔だろうが!うおらっ!」
「ぐはっ!」
あぁ、今日もか。
僕をいじめてくるクラスメイトたちに登校中に出会ってしまった。
昔は物を無くされたりバカにされただけで済んでいたが、最近は暴力で傷つけてくる。
痛い、苦しい。僕はいつまでこんな生活をしなければならないのだろう。
いじめっ子達は僕を存分に殴り終わるとそそくさと学校の方へ向かって歩き出した。
「はぁぁーー、僕、なんで生きてるんだろう。」
正直夢の中でモンスターと死闘を繰り返している方が一方的に殴られて死にそうになるよりいい。
そんなことを思いながら僕は再び学校へ向かった。
ーーキーンコーンカーンコーンーー
「あれ、授業終わった?」
授業の間寝てしまっていた。
「おい晴翔!殴らせろ!」
「えっ!?ふぐっ!?」
鼻頭から思いっきり殴られた。
鼻血が止まらない。
クラスメイトは見てみぬふり。
こんな奴ら全員死んでしまえばいいのに……
そんなことを思ってしまった自分が許せない。
その時地面が、地球が揺れた。
ーードーーーン!!!!
すごい衝撃波で全員がその場に立っていられなかった。
「ピロピロピロ。緊急地震速報。緊急地震速報。今すぐ安全なところに避難してください。」
クラス中のスマホがそう告げる。
いや、地震にしては揺れが大きすぎる。
震度20くらいじゃね!?
それから少しして揺れはおさまった……が、僕は次の瞬間衝撃のものを目にした。
「うわぁぁ!!なんだこいつ!」
「いやぁぁぁ!」
あれ、これって夢の中か?
そこには夢の中で何度も見たモンスターというものがいた。
「夢で見たやつと全く一緒だ……あいつは確かゴブリン。」
ブレイブさんが雑魚狩りにちょうどいいと言っていた。
いやいやいや、どこが雑魚なんだよ!?
包丁みたいな物持ってるぞ。
なんで教室に入ってくるんだよ!?
「やめて、殺さないでぇぃぃぃやぁぁぁ……」
ゴブリンの1番近くにいたクラスメイトの女の子が目の前で包丁により殺害された。
「う、うぉぉぇぇぇ……」
僕、だけではなくクラスメイト達がその光景を目の当たりにして吐いている。
血の匂いがする。首が転がっている。ゴブリンが笑ってる。
そこからはどんどんクラスメイトが殺されていった。
たった一体のゴブリンに……
教室の1番奥にいた僕だけはまだ殺されていないが、もう殺されるだろう。
僕は教室を見渡して一つ思った。
いいざまだ。
僕をコケにしてきたクラスメイト達が無様に死んでいった光景を見てそう思ってしまった。
でも、やはり人が死ぬのを見るのは辛い。
色々な感情が混ざり合って自分が壊れそうだ。
それでも最後には一つの感情に辿り着いた。
怖い……死ぬのが怖い……
そんな僕の気も知らないゴブリンはどんどん近づいてくる。
やめて、やめて、やめて、やめて、
その時僕の頭の中で一つの声がする。
『おい、晴翔、俺に体を預けろ。助けてやる』
この声、どこかで聞いた……ブレイブさんだ。
「ブレイブさん!?体を預けるって?」
『いいから意識をこっちに持って来い!』
そう言われたのでやってみると、
僕の意識は乗っ取られた。
『おい雑魚ゴブリン!俺が相手だ!』
あれ、僕の意思と体の動き方が違う。何か後ろから僕の体を、意識を覗いてるみたいだ。
『久しぶりに暴れてやんよ!だがこの体じゃあまだ魔法も使えねぇしスキルも使えねぇ、何もできねぇじゃん。まぁゴブリン一体ならこれでいいか。』
おれのからだ?ブレイブさんはそういうとゴブリンを殴った。
そしてゴブリンは首からうえが無くなっていた。
「ええーー、ブレイブさん!?何したんですか?」
『殴った。』
いや知ってるよ……まぁいいか。
命は助かった。
「体返してもらえますか?」
『おう!こんな不便な体使いたくねぇ。』
「というか、何故俺の意識の中にあなたが存在しているんですか?」
『ふっふっふ、特別に答えてやろう。俺は前世のお前だ。まぁ詳しく説明すると……』
ブレイブさんによると、
地球。そこには昔モンスターや人間が住んでいて日々戦っていたらしい。
でもある日、地球は二つに分かれてしまい、僕たちが今住んでいる地球とモンスター達が暮らすいわゆる異世界というものになったらしい。
ブレイブさんたちは地球が分かれる前にモンスター達と戦っていたらしい。
恐竜などはモンスターの生き残りが何とかして生きようとした進化体だという。
だが、今日何らかの影響で次元が揺れて現代の地球と異世界が合体。基の形に戻ってしまったという。
だから、世界に魔力が充満してモンスターが出現した。
そして、その地球の流れに僕の中で眠っていたはずの前世の僕。ブレイブさんの魂が復活したのだという。
今僕の中には晴翔とブレイブの二つの魂、二つの人格があるということになる。
「なるほどぉ、よく分かりません。」
『だろうな!まぁとにかくこの世界で生きるために協力していこうぜって言う話だ。それとレベルアップしてたぞ。』
「ん、レベルアップ?なんのこと?」
『ステータスとでも唱えてみろ。』
僕は不思議に思いながら言う通りにした。
「す、ステータス。」
そう唱えると(フォン)と言う音がして目の前に半透明の色々な文字が書いてあるプレートが出てきた。
「レベル3になってる。」
『あぁ、普通はゴブリン一体じゃあレベルなんざ上がらねぇが、お前の称号見てみろ。』
「称号?」
僕はプレートの下の方に目を向ける。
「称号ー過去の栄光。前世でモンスターを1000000体以上倒した者にのみ与えられる称号。この称号を持っている人は固有スキルー成長速度アップ、限界突破、スキル選択、職業選択が与えられる。らしいです。」
『この称号を持っているのはお前だけだな。モンスターを1000000体倒した人なんて俺しかいねぇもん!』
何か自慢げに言っているが生きていくにはありがたい。
「スキル選択と職業選択って何ですか?」
『この世界ではモンスターから身を守るためにスキルや職業というものがランダムで与えられる。俺は冒険者とかいう職業があたった。スキルはモンスターを倒してレベルアップしたらポイントがもらえて普通はガシャみたいな感じでポイントを使ってランダムでスキルが当たるんだが、お前はそれが選べるらしい。チートだな。多分固有スキルっていうのは持ってる人が少ない。もし生きてる人にあっても口にするなよ。』
「生きてる人、か。」
僕は再び教室を見渡してそんな人いるのかと疑問に思う。
そんな疑問を抱きながら学校の外に出てみると、
「グォォーーー!」
「グワァぁわー!」
あちこちでモンスターが暴れ回っていて町は大災害にあったみたいになっていた。
僕はこの世界で生きていくのか。
改めてこの世界に恐怖を抱きながらも絶対に生き抜いてみせると決意した。