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第29話 シャルウィドレス無双?

 甲虫人モドキへと進化した寄生型魔物が私達に襲い掛かる。

 その数は国王ふくめて七体。

 いずれも屈強な肉体を誇り、その腕だけでも私の胴回りより太い。

 こんなもので打たれでもしたら、私どうなっちゃうのかしら。


 ゆえに複数からの鉄拳を寸前で飛んでかわす。

 レスティと呼ばれた近衛兵も一匹からの拳撃を剣で受け止めていた。


 ――が、直後にはレスティの剣がへし折られていて。


「ぎゃあああ! ミスリルの剣がァァァ! これすっごい高いのにィィィ!!?」


 あの剣は近衛騎士団が使う最高品質の物のはず。

 強化魔術(エンチャント)も施されているから鋼鉄より硬いのに、まさかこうもたやすくへし折ってしまうなんて……!


 しかし彼女も腐っても近衛兵に選ばれた人間らしい。

 半分になった剣で応戦しながら逃げまどっている。


 なら、一匹だけでも任せるしかない!


 残念ながらもう私に余裕は無かったのだ。

 なぜなら、跳ねていた私を五匹の魔物が取り囲んでいたのだから。


 なんて反応速度!

 なんて身体能力!

 こいつら、私の跳躍に合わせて一緒に跳ねていたっていうの!?


 しかも羽根をすばやく羽ばたかせ、遂にはまっすぐ飛んで来るという。


「くっ、飛行能力までッ!?」


 その姿には嫌悪感さえ憶える。

 ただでさえ無駄に筋肉質で気色悪いっていうのに!


 そこで私はドレスギアを風船状に変形させて対応。

 五体同時攻撃を受け止め、直後に刃に変形させて叩き切る。


 ――が、斬りきれない。

 二匹ほどの腕は切り落とせたものの、残りは傷を負った程度だ。

 反応速度も速くなっているが、肉体強度も半端じゃない。


 だが私がタダで転ぶと思うなよ!


 そこで敵を弾いた後、ドレスギアを一本の巨大なドリルへと変形。

 一匹の胴を貫き、そのまま展開して四肢・頭部を吹き飛ばしてやった。


「ギギィ!!」

「ヨッグッモ!」

「仲間意識はあるのね、さすがだわ!」


 そんな私の着地を狙おうとしても無駄よ。

 今度はドレスギアを私の両腕へまとわせ、巨大な腕へと変形。

 そのまま近づいて来た二匹を潰して一気にミンチに。


 紫色の体液が気色悪いけれど、この際仕方がないわ!


 その隙を狙って残り二匹も来ていたけれど、もう遅い。

 既に両腕のドレスギアは変質、リボン状へと姿を変えて彼等を囲んでいる。


 そして一気に縛り上げ、その根っこを掴んだ右手を一気に振り下ろした。


 たちまち細切れになる二匹の甲虫人。

 無数の血飛沫が舞うが、それも全てドレスリボンで防いで弾く。

 その上で体液全てを跳ね飛ばし、ドレス本来の姿へと戻した。


「これで全――」

「たっ助けてぇ~~~い!!」

「グゥオオオ!!」

「……まったくもう」


 あとはレスティを追う個体に、転がっていた剣を投げつけて頭を貫く。

 するとグッシャアと倒れ込み、もう動かなくなった。

 どうやらあの身体になると人間と同じく頭が弱点となるみたいね。


 まぁ普通の人間じゃあの硬い頭を貫くのは厳しいかもしれないけれど。


「ギギィ! オノレェ!」

「さて、あとはお前一人よ。知能があるならもうわかるでしょう? いい加減諦めなさい」

「諦メルモノカ、貴様達ヲ殲滅スルマデハァ!」


 ここまで強くなるのは私も想定外だった。

 確かにものすごい進化だと思う。


 ただ、それ以上に知能の成長幅が大き過ぎる。

 まるで人と同じくらいかと思えるくらいね。


 それだけの知能があるなら対話だってできるでしょうに。


 けど彼等は本能を未だ取り払う事ができていない。

 戦意が、敵意が、殺意がまだ根底に残って戦いを否定できないんだ。


 もし対話ができるなら私も興味があるし試したいとも思う。

 けどその可能性が万が一にも無いとするならば。


 ――奴等はこの世に存在してはいけない、害悪よ。


 だからこそ私は今、両手に魔力を籠めた。

 たった一匹が対象なら、追尾能力無しの霊子砲(エンス・ミデン)を撃てばいいからと。


 だったのだけど。


「ゴッゲゲッ! 許スマジ、許スマジィィィ!!!!!」

「えっ……ちょ、ちょっと待って!?」

「ヒィィィゥエェェェ!! 陛下虫が巨大化してりゅゥゥゥ!!!??」


 想定外の相手がさらなる想定外を引き起こす。

 なんかよくわからないけど、相手の身体が急激に巨大化し始めたのだ。

 どんだけ内側に力を溜め込んでいたっていうのよぉ!?


 しかも巨大化はもはやとめどない。

 高かった天井へも到達し、更には貫き破壊していく。

 更には謁見の間を拡げ壊し、内壁をも崩し始めていて。

 倒れていた仲間も飲み込んでいく――取り込んでいるのだ。


「いけないわ! 脱出するわよ!」

「脱出!? どこからァ!?」

「そんなの決まっているわ! 窓からよぉぉぉーーーーーーッ!!!!!」


 その速度は顕著で、すでに空間の半分以上が奴の身体で埋め尽くされた後。

 なので私はレスティの下へ走り、その腕を掴み取る。

 そうしてそのまま窓へと走って突き破り、外へと飛び出した。


「イィィィヤァァァ!!! 落ちて死ぬゥゥゥ!!!!!」

「そう簡単に死ぬものですか!」


 ただここはアウスティア城の中腹階層。

 地上は遥か下にあり、このまま落ちてしまえば落下死はまぬがれない。


 そこで私はドレスギアに魔力を送り、その本領を発揮させた。

 フリルからの魔力放出を利用した推進能力を。


 実はこのドレスギア、使い方次第では空も飛べるのです!

 フフン、さすが設計した通りの性能ね!


 ただし今は一人分の余計な重量があるから今は滑空が限度。

 それでも城からは離れられ、無事に一般市民街へと降り立てた。


「た、たすかった……」

「良かったわね。後はさっさとどこへなり逃げなさい」

「貴女はどどどうするの!?」

「決まっているでしょう? あれをどうにかしないといけないもの」


 それでレスティを突き離して振り返ってみたのだけど。

 そんな私の視界にはとんでもないモノが映り込む事となる。


 超巨大な甲虫人である。

 あの元国王が城を内側から押し出し、潰していたのだ。

 ただしほぼほぼ胴体だけが大きくなったような丸々しい姿で、だが。


「今回ばかりは、私だけじゃどうにかするにもギリギリかもしれないわね……!」


 その圧倒的な光景を見上げ、私は覚悟を決める。

 場合によっては自身の何かを犠牲にしなければならないかもしれないと。


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