サク
【八月二十八日(日)】
次の日の朝早く、真紀から花火のお礼のメッセージが届く。そのメッセージはいつもの真紀らしく丁寧な文章で書かれていた。
それを見た俺は『真紀が俺に好意を持っていなければ、アイさんが来ても修羅場にはならないじゃん』ということに気が付いた。
胸に眠っていた真紀への想いが再燃してしまったとはいえ、それで俺の想いが彼女に受け入れられるわけではない。ともかく、本命のアイさんとの関係を進展させたい俺は、彼女を食事に誘おうと気合を入れて文面を考えていた。
「住まいを知らないから仕事後に誘うのが難しい。やっぱり来週末かな」
どのあたりに住んでいるのかという質問に対して『秘密だ。でも遠からず近からず』と濁されて以来、俺は聞けずにいる。そんな彼女を食事に誘い、その手応えによっては半分放置していたアプリをやめるつもりだった。
いざ、考えた文面を入力しようと携帯を開くと、一件の『いいね!』が入っていたことに気が付く。
「まじで?」
開くことを迷いつつも結局タップしてしまったのは、単純に可愛かったからだ。
ハンドルネームは『サク』。赤いメガネをかけた可愛らしい子だった。
「見たことあるような?」と思い、そのことを思い出そうとしていると、アイさんを誘う気持ちの腰を折られてしまいメッセージを打つことなくその日は終わった。
可愛い子からの『いいね!』ではあったが俺にはアイさんへの想いがある。とうぜんそれはスルーしなければと、後ろ髪は引かれつつも忘れることにした。
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