表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

今は悪い女になった、昔はいい女けど。

今は悪い女になった、昔はいい女けど。


ぼくはいつも通り、オフィスを出て、バイクタクシーを

呼ぶ。10分くらいすると、タクシーが来た。


Pak, silahkan hindari belok ke kiri sono nanti lalu lintasnya macet gitu.


わたしは渋滞を避けたいから、運転手にそこの道を左に曲がらないでくれと言った。運転手は鮮やかなアクセントで、


はい、まっすぐ行きますね。


日本語で返してきた。ぼくは思わず、日本語すごいですね、と言うと、彼はかつて愛知県で働いていたという。彼の名前を以下、r とする。


r の家は貧しかった。rは地元の高校を卒業すると、溶接工として働き始めた。しかし、大学を卒業していないため、給与がいい仕事には着けなかった。技術はあるのに悔しかった。rはそう語った。


日本のことは大好きです。技術あれば、お金をたくさんくれますから。


彼は結婚後、家族を養うため、日本へ出稼ぎに行った。愛知県で5年、溶接工として、建設現場で働いた。月給は多いときに30万円あったという。日本で働いて5年、rは32歳になっていた。


rは日本で貯めた貯金をもって、ジャカルタに凱旋した。しかし、ある事件が起こる。


今は悪い女になった、昔はいい女けど。


rの妻が貯金を全て使ってしまい、夫婦仲は険悪に。結局、rは妻と離婚して、そのままコロナ禍に入って、仕事を見つけることが難しくなった。毎日の生活のため、rはバイクタクシーの運転手となった。


rに聞いた。もう一度日本で働きたいか。


はい、そうです。溶接工として働きますよ。

ニコニコしながら、元気よく答えた。


rに聞いた。ずっと日本に住みたいか。rは少し黙って、日本語で話すのをやめて、こう言った。


Tidak, setelah menabun banyak sono, saya akan langsung kembali ke sini. Jepeng adalah tempat untuk bekerja.


たくさん貯金をしたら、ジャカルタへ帰ってくる。彼はインドネシア語で続けた。


Karena tidak bisa punya anak isteri sono.

そこでは、家族を養うことはできないと。


この言葉を交わしたあと、タクシーはわたしのマンションに着いた。ありがとうと言って、rと別れた。


わたしは、日本では家族を持てないと思った。これは移民をした大きな理由の1つだ。インドネシア人の中には、日本で働きたいという人が多くいる。その理由が少しわかった気がした。


出稼ぎで日本に来て、お金がたまったらインドネシアに帰る。これなら、確かに夢が持てる。頑張って稼ぐぞと思えてくる。わたしももし、出稼ぎに行くなら、日本がいいと思う。


しかし、わたしは日本語を学ぶインドネシア人に接していて思う。彼らは言う。日本に行きたい、日本で働きたいと。しかし、わたしは日本に住みたいと言った者があまりいないことに気づく。


マンションのエレベーター。

住人が乗り込んできても、挨拶は少ない。


妻の実家の下町

歩いているだけで、

Mari kita mengopi bagaimana ?

一緒にコーヒーを飲もうと誘われる。


インドネシアは発展して欲しくない。

発展すると、失うものもある。

日本社会は生きづらい。インドネシアは、今のまま、生きやすい場所であってほしい。


インドネシアは住みたい場所。

また、パパイヤの木の下で、近所の人たちとだらだら過ごしたい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ