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婚約破棄ですか?まぁ良いですよ。貴方が本気ならお受けします。

作者: 浅村鈴

「ルシンダ・ホールソング!今この場で婚約破棄を申し出る!」


「………」


「なんだ?驚いて声も出ないのか?」


この顔の良い男は私の婚約者でジョシュア・ムーサン。この国の第一王子。まぁ顔だけのアホなのですが…。

私はルシンダ・ホールソング。ホールソング辺境伯家の長女です。私の両親は仲睦まじく、私の下に7人の弟妹がいますのよ。それはもう可愛い子達ばかりで……。あっ。

今は別問題の話でしたわね。


「おっしゃる通りビックリしてしまいました。ですが、本気ですか?」


「本気に決まってる!」


「理由は?」


「理由?それはお前が悪女だからだ!か弱いエンジェラを虐めていただろう!全て分かっているんだ!」


王子にピッタリよりそう儚げな小動物の様な少女がエンジェラだった。


「その方初めて見ますので、虐める理由もありませんが…」


「嘘を言うな!全てエンジェラから聞いているんだぞ!」


「私はジョシュア様に愛を頂いてからルシンダ様に色々な嫌がらせをされました。先日はあの剣でジョシュア様には近づくなと脅されました。怖くて怖くて……」


「…。まぁどっちでも良いですが、その方がお好きなのですか?それとも遊びですか?」


「あ、遊びなわけないだろう!本気だ!俺はお前と婚約破棄してエンジェラを新しい婚約者にするんだ!」


「私達の婚約が王家が決めた事だと分かっていてもですか?」


「俺は王太子で国王になる男だ!その隣に居る女性は俺が決める!

田舎の辺境で育った女なんか、俺に釣り合う訳がない!

大体女だてらに帯剣するなど、恥ずかしくないのか!?」


ジョシュアはドレス姿に帯剣しているルシンダの剣を指差しながら叫んでいた。


「決意が堅いようですので、婚約破棄了承致しました。契約解消の魔法紙はご用意されてますか?」


この時代、片方の意思で婚約破棄を勝手にしない為、婚約する時も破棄する時も魔法紙で執り行う決まりになっていた。


「勿論だ。俺のサインは終わっている」


差し出された魔法紙にルシンダもサインした。

次の瞬間勢いよくドアの開く音と声がした。


「ま、まて!その婚約破棄は待つのだ!」


「手遅れですわ。サインし終わりましたから」



「ジョシュア!なぜ勝手に婚約破棄をしたのだ!お前は事の重大さを分かっているのか!?」


国王はジョシュアに怒鳴りつけた。


「で、ですが、私はルシンダを愛していません!愛してない女を妻に迎えるなんて出来ません!俺はエンジェラを愛しているんです!」


「お前の意思など関係ない!この婚約はこの国の為の婚約だったのだ!」


国王の余りの激怒にジョシュアは顔を真っ青にしていたが、そんな事は関係なく、ルシンダが国王に声をかけた。


「国王様、私は領地に帰らせて頂きます。それから、先程そこのアホ王子が我が家を田舎の辺境と言った発言と帯剣を馬鹿にした事は既に早馬で領地に報告に向かっています。我が家の諜報部は優秀ですから。今後魔物討伐などは一切期待されないでくださいね」


「ま、待ってくれ!ホールソングの者が魔物退治をしてくれなければ我が国も国民も終わりだ!

考え直してくれ!」


「それは仕方ないですわ。次期国王である王子を甘やかした国王様とこの国の問題です。

大体我が家、我が領地の事を揶揄する者など滅んでしまえ!」


会場を立ち去ろうとしたルシンダの前に珍しい黒髪で黒い瞳の美青年が立ち塞がり膝を突き、声を掛けた。


「ルシンダ様、暫しお待ち下さい」


「アラン様。どうされたのですか?」


「ルシンダ様!僕と結婚してください!!僕は貴方だけを愛するし、貴方と魔物討伐も戦場も共に行きたい!

貴方を愛しています!」


「ストレートですわね」


「僕は甘い囁きなど出来ないので…」


「貴方のご家族と戦う事になるかもしれませんよ。貴方は国王のご子息ですわ。どうなさるおつもりですか?」


アランは国王の婚外子だった。侍女との逢瀬で産まれたアランは息子としても王子としても認められて居なかった。それでも己の実力だけで騎士団長になっていた。アランが国王の息子だと知っていたのはホールソング家の諜報部、情報だった。



「母は亡くなり、僕には家族は居ません。貴方と家族になりたいんです!」


「強い貴方が私は好きですわ。でももっともっと強くなってくださる?」


「もちろんです!貴方も貴方の大事な方々も守れる様に強くなります!!」


「私、貴方と結婚しますわ」


飛び切りの笑顔で右手を差し出した。


「生涯貴方を大事にします!」


アランはルシンダの出した右手を取り手の甲に誓いのキスをした。



「馬鹿王子の動きを知り娘を迎えにきたら、嫁の行き先が決まってしまったとは……。まぁ強い男なら歓迎だがな」



ルシンダの父、バルカン・ホールソングとホールソング騎士団が会場入りした。



「ホールソング!此度の事、愚息がルシンダを傷つけ申し訳なかった。どうか、どうか、魔物退治を止めるなどと言わないでくれ!」


「条件次第ですな」


「どんな条件なんだ!?」


「まずはそこの馬鹿王子の廃嫡と市井に落とす事。娘に恥をかかせたのですから、そのくらいはして貰いませんと。そして国王の退位とアランが次期国王になる事。この条件飲めますか?」


国王は汗をだらだら流しながら考えて、答えを出した。


「その条件全て飲もう」


「ち、父上!?何故ですか?」


「お前にはまだ分からないのか!?ホールソングに見放されれば魔物が押し寄せ我が国は終わりだ!お前の身勝手な行動の結果がこれだ!すぐに市井に去れ!横に居る娘もだ!」


ジョシュアもエンジェラも衛兵達に連れて行かれた。この先後ろ盾もなく市井で市民として暮らす事になる。自分の愚かさを悔いながら。



アランが新国王になり、横には帯剣した美しい花嫁が国民に手を振っていた。

二人がこの国を守ると宣言し、国民は喜び祝っていた。宣言の通り、魔物が来ても騎士団や時には王や王妃自身が剣を握り守る姿を見て国民自身も奮起し、国は栄えていった。



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