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下校

 冬の初めなので日が暮れるのは早く、空は今、赤色のグラデーションが埋め尽くす。

これからの実習の内容が決まった日の帰り道。たまたま渚と下駄箱で一緒になったので帰ることにした。

京子は部活。拓海はどこに行ったかは分からないが帰りにホームルームが終わったら声をかける前にそそくさと帰ってしまった。

魚を卸すときに店では渚と会うのだが、学校でとなると話は別である。思春期の難しいところだ。

どうせいつもは拓海と話しをながら帰るだけなので、丁度いいとかなんだとか、女子と一緒に変える気恥ずかしさを誤魔化す理由を探す。


「最近も土日は、お父さんのお手伝いしてるの」


学校からの帰りの坂道を歩いている途中、渚から口を開いた。


「そうだな、バイト代出るし。まあ海は嫌いじゃないし」


「そっか。あ、うちのお父さんとお母さんにね、航と京子と拓海と、今回実習一緒にするんだって話をしたの」


「お、なんかオヤジさん言ってた」


「なんだか悪だくみしてるみたいだなって言われちゃった」


この辺りでは渚の家は大きく、よく俺達四人で遊んでいた。

そもそも自分たちが住んでいる地区には同年代が、この四人だけだったのもあり、必然的に仲良くなった

のだ。

その中でも自分は、昔から母が居なかったこともあり、ご飯なんかは良くお世話になった記憶がある。

仕事の関係もあるとは思うが、そういうこともあって自分の父と渚のオヤジさんは結構仲がいい。


「しょっちゅう悪戯してたもんな、京子と拓海は、そういうことに関しては天下一品だな」


航もでしょ、なんて小言を、渚に挟まれつつ、懐かしさに頬がほころぶ。


「お前だって、ノリノリだったじゃん。けど懐かしいよな、ほんと久しぶりに四人集まった気がする」


「無理やり連れまわしたのは航たちでしょ。けど、そうだよね。本当に久しぶりだよね」


そういいながら渚は優しい笑顔を見せる。

やはり、渚のこういう表情は、年頃の男子をドギマギさせるには、十分な破壊力がある。


「私ね、すっごいわくわくしてるの。また四人で集まるキッカケができて、嬉しいんだ」


こういうストレートな感情表現は、なんだか心を鷲掴みにされる。

冷たい風のせいなのか、はたまた照れくさくて赤くなったのかは定かではない頬を搔きつつ、次の言葉を探す。


「そうだな、またバカ騒ぎするのも悪くないな」


「もー、程々にしてよね?」


他愛もない話をしているとあっという間で、渚の店の前に着く。


「じゃぁ、また明日ね」


そういうと同時に、中から渚の母、由美子さんが顔を覗かせた。


「あら、航ちゃん。いらっしゃい!この子と帰ってくるなんて珍しいわね」


「お久しぶりです。たまたま話もあったので次いでです」


少し照れ隠しに、ぶっきらぼうに言ってしまったことを後悔し、渚の顔を伺うと不満そうな顔をしていた。


「学校の実習でしょ?最近ねこの子が良く話すの、また皆で色々出来るって」


そう言った由美子さんの言葉の後に、その話はいいでしょと渚が割って入った

渚は本当に嬉しいんだなと、改めて実感し、なんだか自分の気持ちを言わないのもフェアじゃない気がして、


「俺も本当に嬉しいです、拓海とは結構遊んでますが、京子も部活だし、渚とも魚卸に来た時に話すくらいだったんで。やっぱり嬉しいですよね」


恥ずかしくて渚の顔なんて見れたものではないので、そうそうに家に帰ろうと思い足を少し動かした。


「じゃぁ、お仕事の邪魔になってもいけないんで、また来ます」


「またね、航ちゃん。いつでも家においでね?お父さんも寂しがってるから」


「ありがとうございます。おじさんにもよろしくおねがいします。渚も、またな」


「うん、また明日」


とりあえずその場を切り抜け家に足を向ける。少し素直になれたことにより、充実感が心にあふれ、たまにはこういうのも悪くないなと思った。





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