この海の神について①
月曜日の朝が一番辛い。
土日に漁を手伝うものだから休む暇がない。
オヤジは気を使って無理しなくていいとは言うものの、一人で海に出る父親はどこか寂しそうに感じ、付き合うことにしている。
自己満足ではあるが、バイト代も貰えるし悪いことばかりではない。
家には母親が居ないので食事は自分で用意している。
朝はオヤジは適当に食って出ていくし、なにより平日も漁があり、時間が合わないので一緒には食べられない。
荒れた日なんかは家にはいるが起こすのも忍びないので。
夜は大体一緒に食べるのでそれでいいかなんかと思ったりもする。
今日も一人の朝食を済ませ、学校に向かう。
「おーっす」
教室にいる数人に挨拶しながら席に向かう、朝なのでやる気のない挨拶がちらほら返ってくる。
「おはよっす」
隣の席からこれまたやる気のない返事が返ってくる。
吉田拓海は生まれたころからの顔なじみだ、家が近いこともあり、やる事が無い時なんかは二人で自然と集まり遊んでいる。
「地元のレポートの内容何にするか考えたか」
「あー、一応な。割と面白そうな話を聞いて」
学校の特殊カリキュラムで地元のことについて調べることになっていて、今日がその2回目の授業だ。
今日までに具体的な調べる内容を決め、学外に出て調べていいことになっている。
班ごとに分かれて調査をし、こいつと自分以外に後二人女子が居る。
そういうふうに決められた男女混合の班で調査を進めていくのだ。
「お、どんな話なのよ」
「オヤジからさ、たまたまこの海の神の話を聞いてね。調べるにはうってつけかなってな」
「あー、よくその辺のじっちゃんばっちゃんが言ってるよな。最近はあんま聞かないけども」
拓海は良いんじゃないと相槌を打つ。同意を得られたことに少しの安堵感を覚える。
「後は女子二人の反応だよなー 」
という拓海に、
「反対されたらよろしく頼むわ」
お前自分が考えた内容なのに適当かよという拓海のツッコミでこの話題は終了し、ゲームの話やどうでもいい日常の会話に担任が来るまでの間いそしむのであった。