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非日常な週末⑥

 駅前のアーケード街をウインドウショッピングをしながら歩いていると、あっという間に昼下がりを過ぎた。

場面は先ほどの賑やかなアーケード街とはうって変わり、しんっと静まった図書館の一角である。

この街の図書館は県内最大級の大きさであり、館内のPCによって読みたいジャンルの本の位置がどの辺りにあるか検索できるようになっている。


「伝承って、こんなに色々あるんだね」


「だなあ、面白くて読み入っちゃうな」


流石にここには、詳しく祠の伝承が乗っている資料は無いみたいだった。

なので、海の神とはどういうものなのか、ということについて調べていた。


「やっぱり女性の神様だよね、話に出てくるの」


「漁船だとさ、女性を船に乗せると神様の嫉妬で天罰が下るなんて話もあるし、日本の神様だとそうなのかもな」


「あ、お父さんから聞いたことあるよ」


「けどまあそんなの迷信だけどな」


漁協には夫婦で乗っている船も、勿論ある。

そういう船が沈んだと聞いた事もないし、まして海が荒れるのは低気圧の影響だ。


「うーん、直接手掛かりになりそうな話は無いな」


「そうだね、やっぱり郷土資料館とか行くしかなさそうだよね」


そう言うと、お互いに読んでいた本を棚に戻す。

他に手掛かりになりそうは本は無いかと棚を見渡すが、そういう伝承系の物自体の蔵書が少なく、この一時間ほどで二人で粗方確認し終えてしまった。

今日はこんなところかと、外を見ると風に揺れる街路樹の銀杏が夕焼けに染まっていた。


「そろそろ帰るか。普段こんな本読まないから疲れたわ」


「そうだね。うわ、外風強いね」


結局、この先役に立ちそうな手掛かりは何も無かったが、普段図書館なんて来ないので、中々新鮮な時間であった。

二階にあった、その一角を出て階段を下る。

閉館時間が近いということもあり、気づけば館内の人はまばらになっていた。

そのままロビーを突っ切り、図書館を出ると並んで駅に向かう。


「今日楽しかったなあ、遊んだって感じするね」


「ほんとほんと、ハンバーグまじでうまかった」


図書館は、高台にある駅から少し降りたところにあり、銀杏の葉が舞い散る緩い坂道を並んで歩く。

同じように駅に向かうであろう人たちが、連なって歩いていた。


「明日の実習どうしよっか」


「取り合えず祠とかの写真でも撮りに行くか。もしかしたら拓海と京子がやりたいことあるかもしれないし。要相談だな」


「そうだね、二人にも聞かなきゃね。けどあっという間に日が落ちるね。冬だなって感じるね」


「だな、こっからは漁も少なるし、バイト代が悩みどころだ」


「漁でない日って、航のお父さん何やってるの?」


「漁協行って何かやってるのは知ってるけど、何してるんだろうな」


「まあそんなもんだよね、私も手伝い以外の仕事の内容知らないし」


「今週は本当に漁が休みになって良かったよ。こうやって、渚と遊びに来ることも出来たし」


名前を呼ぶときに、どもり気味になってしまい恰好はつかなかったかもしれないが、率直な気持ちを伝えることにした。

最近また一緒に行動するようになってから、渚にばかり気持ちを言わせていたような気がしたから。

何時だって助けられているのは、自分の方だから。


「私もだよ。ふふ、また実習とはいえ四人集まったんだしさ、次は四人で遊びに来ようね?」


「勿論!あいつらもな。また来よう」


小さい頃は理屈なんてなく、四人集まっては遊んでいた。

いつの間にか、理由が無いと誘えないような歳になってしまった、それでも今日は次に繋がる時間だったのではないか。

完全に日が落ちる前に、丘を登り切り駅の改札に着く。

生憎普段から電車を使用しないので、便利な電子マネー等お互いに持っておらず、また切符を買い駅のホームへ向かう。

タイミング良く、電車がホームに流れ込んで来たので、寒さのあまり、駆け込むように電車の中に入る。

中を見渡すと、帰宅時間ということも有り、そこそこの乗客で満たされていた。

生憎座れるほど席は空いていなかったので、扉の近くのつり革付近で、二人向かい合って帰り道の電車に揺られた。


「ここに遊びに来るたびに思うけど、早く車の免許欲しいって思うわ」


「確かに。あれば便利だもんね。けど私はこういう時間嫌いじゃないよ」


「趣ってやつ?」


「そうそう、趣ってやつ」


二人で冗談を言いつつ、向かい合って笑う。

各駅停車のこの車両は、ゆっくりと何事もなく、もう日が落ちる所が見える海岸線を走る。

景色を見つめる渚の横顔を、少しだけ見つめ、今日一日を振り返る。

最初の目標の、渚を楽しませるという項目は何とか達成できたと思えた。

ころころと変わる渚の表情は、どれだけ見ても飽きないだろうなと感じた。

そう感じるたびに、あの時から疎遠になったのが勿体ないなと、渚に、嫌な思いをさせていたのかもしれないと思うと、胸がチクチクと痛んだ。

けじめではないけれど、ちゃんとあの時の事を渚に伝えることが出来るだろうか。

夜の帳が降りるのを見ながら、自分の気持ちが沈んで行くのを感じた。

ただ、隣で眠たそうに揺れている渚を見ると、ちゃんと受け入れてくれる、何故だかそう思えた。

今日は一緒に遊べた、それ以上は望まない。

帰りは遊んだ疲れもあり、口数は少なかった。

けれどその時間は、心が通じているような、とても幸せな時間であった。


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