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ドラゴンフライ  作者: マサラ
第十章 静岡 決戦編
121/284

第百二十話 繰り返す、我が名は呼炎灼

「やあこんばんは。

 今日も始めていこうか」


「パパー。

 今日はどんなお話?」


「今日はね。

 僕の兄さんと(げん)の対決……

 かな?」


「ふうん」


 何か不思議そうな顔をしている(たつ)


「じゃあ始めるよ」


 ###


「どうしたァァァァーーーッッッ!

 ドラペンーーーッッ!」


 僕の絶叫が会議室に響く。


「り……

 竜司……

 まあ落ち着け……」


 ドラペンの激変ぶりに驚いた僕を心配して兄さんが話しかけてきた。


「兄さん……

 何したの……?」


「いや…………

 まあ……

 元々はここまでするつもりも無かったんだがな……

 まさかここまで追い込まれているとは思わなかった……」


「だから……

 何したのって……

 何したらああなるの……

 兄さん……」


 僕の目線の先には棚の上に直立不動で腕組みしながら鋭い眼光を放っているヘンなドラペン。


「いやな…………

 キッカケはお前が旅行に行った日だよ……

 いくら大声出してもコイツが起きねぇからな……

 性根叩き直してやるって思ってな…………

 そっから筋トレとロードワークを課したんだよ……

 ドラペンに」


「筋トレとロードワークったってこんなに変わるものじゃあないでしょ……」


「竜司君、隊長が言ってる筋トレとロードワークって多分想像しているより五倍は過酷だから」


 カズさんが会話に入って来た。


「ごば…………

 何それ……」


「隊長って軽い体育会系のノリがあるからね。

 根性で何とかなると思ってるんだよ。

 あの地獄筋トレをスルーしてるのウチじゃあリッチーぐらいだよ」


「オイ、カズ。

 黙れよ」


 カズさんに鋭い眼光を向ける兄さん。


「ちょっとちょっと兄さん。

 何カズさんに怒ってるの。

 兄さんが課した筋トレでドラペンがこうなったのは事実でしょ。

 それで筋トレさせてどうなったの?

 ベビーカステラあげなかったの?」


「いや…………

 そのベビーカステラなんだが……

 あるルールを設けたんだよ……

 一日の筋トレ全て終えたら……

 ベビーカスタラをやるってな……」


「それだったら頑張ってやるんじゃないの?」


「一日目はな……

 でも一日目にあげたのが一個だったんだよ……」


「え!?

 一個?

 一袋じゃなくて?」


「あぁ……

 今考えたら多分それが大元の原因だな……

 俺もその時はドラペンのグータラぶりに頭に来ていたからな……」


 地獄の様なトレーニングに対して対価が少なすぎる。

 直感的に頭に浮かんだイメージは黒人奴隷。

 とりあえず僕は兄さんとドラペンの七日間の概要を全部聞く事にした。


「そっ……

 それでどうだったの?」


「そりゃ最初は“もっとよこすでヤンスーッッ”って飛びかかって来たよ。

 んで俺の不等価交換(コンバーション)で取り押さえて……

 何回か繰り返したらその日は諦めた……」


「そっ……

 それで……?」


「それで二日目…………

 泥のように眠ってるドラペンを担いで出勤して……

 叩き起こして筋トレを半ば強制的にさせてたらな…………

 ………………逃げた」


 電車で見た景色がフラッシュバック。


「それって何時ぐらい……?」


「確か昼前……

 十一時ぐらいだ……」


 色々と合点がいく。

 僕が見かけたのは三重と奈良の県境だ。

 そして時間は三時ぐらいだった。


 でも思い出してみるとカラスに襲われてた時は僕の知ってるドラペンだった……

 と思う。


「それで……

 ここに居るって事は戻って来たって事だよね……

 何でだろ?」


「ん?

 そんなもん簡単だ。

 俺が連れ戻したんだよ」


「よく居場所が解ったね……」


「翼の付け根辺りにGPSつけといたんだよ。

 んでその日に連れ戻して、軽く制裁入れて筋トレさせて帰した。

 んでもその時はベビーカステラ一個でも何も言わず帰ったなあ……」


 制裁の内容が気になる。


「んで次の日だ。

 また同じ様に泥のように眠るドラペンを担いで出勤。

 叩き起こして筋トレ。

 軽く脅し入れてロードワークに行かせてな。

 んで帰ってきてまた筋トレ……

 その日はそれで終わった。

 んで四日目朝起きたらこうなってた」


 うん。

 完全に兄さんが原因だ。


「兄ィーーーさァーーーんッッッ!!

 何してんのぉぉぉッッ!

 僕の知ってるドラペンじゃないよぉぉッッ!」


 僕は大声を張り上げずにはいられなかった。


「わっびっくりした……」


「ハァ……

 僕の知ってるドラペンはもっと可愛かったのに……」


「りゅ…………

 竜司…………

 何も俺は目的も無くスパルタしてた訳じゃ無いぞ…………

 オイ、ドラペン」


 兄さんがドラペンを呼びつける。


【何でしょうかぁっっ!

 デカ長ッッ!】


 ヘンなドラペンが飛んでくる。


「この七日間の成果を弟に見せてやってくれ」


【フフン…………

 了解でェェありますっっ!】


 ヘンなドラペンは不敵な笑みを浮かべる。

 小さいナリをして、オッサンみたいな顔を見せるから物凄く違和感。


「加減しろよ」


【勿論でぇぇありますっっ!

 比重領域(エリアレシオ)ッッッ!】


 ヘンなドラペンがそう叫ぶが何も変化は無い。

 と思っていた矢先、目の前が薄暗くなる。


「うわっ」


 驚いた僕は後ろに下がる。

 すると目線の先に長方形の四角い薄暗い()()が出現している。

 本当に測ったような四角い長方形が宙に浮いている。


「こ……

 これは……?」


【これぞ我が新能力ッ!

 比重領域(エリアレシオ)ッッッ!

 今小童(こわっぱ)の目線座標に半径五メートル付近の塵、埃を集めたのよぉっ!!】


「ドラペンの能力、比重(レシオ)は触れた物の中の成分比重を自在に変化させるものだったが、この比重領域(エリアレシオ)なら指定範囲内のあらゆるものを指定した場所に集める事が可能だ。

 勿論熱量もな」


 ドラペンに代わって兄さんが説明してくれた。


「す……

 凄いね……」


「ただ……

 問題があってな……」


「何……?」


「まず……

 このシリアス……

 っていうかヘンなドラペンじゃないと使えない。

 あと範囲がまだせいぜいこのフロアぐらいだ。

 おそらく呼炎灼(こえんしゃく)の有効範囲は百~三百メートル。

 となると味方全員を護りきるには少し足りない」


 兄さんの台詞に引っかかりがある。


「え!?

 このシリドラ(シリアスなドラペンの略)から元に戻るのッッ!?」


「ん?

 あぁ簡単だ。

 ベビーカステラ一袋食わせりゃ元に戻るよ。

 やってみようか?

 おいっっ!

 ドラペンッッ!」


【何でしょうッッ!

 デカ長ッッ!】


「本日のトレーニングご苦労だったっ!

 褒美を授けようっ!」


 ガチャ


 鍵をかけた棚から中袋を取り出す兄さん。


「受けとれぃっ!」


 兄さんもノリノリだ。


【ははーーっっ!】


 (うやうや)しく袋を受け取るシリドラ。


「ただしっっ!」


【はうあっっ!】


「条件がある。

 この場で袋の中身を全て食べる事だ」


 それを聞いたドラペンが不敵に笑う。

 何だこの何十年も老け込んだ顔は。


【フフン……

 デカ長ッッ……

 お安い御用ですぞぉぉっっ!】


 ガツガツベビーカステラを貪り出すシリドラ。


【美味しッッ!

 甘しッッ!

 美味しッッ!】


 何か武士(もののふ)の様な口調のシリドラ。

 まだ変わって無い様だ。

 と思っていた所変化がある。


【甘しッッ……

 美味しッッッ…………

 でヤンス…………】


 ヤンス?


【甘いでヤンスね~~

 とろけるでヤンスよ~~】


 顔が戻ってる!

 僕の知ってるドラペンだ!


「ドラペーーンッッ!

 おかえりーーっっ!」


 僕は思わずドラペンに抱きついてしまった。


【ワァッ!

 何でヤンスかっ!

 うっとおしいでヤンスーッ!

 離すでヤンスーっ!】


 僕の腕の中でパタパタ暴れるドラペン。

 うん僕の知ってる可愛いドラペンだ。


「竜司、何やそのこまい(小さい)竜は?」


 (げん)と蓮がこちらにやってきた。


【ムキーッッ!!

 誰が豆ドラ…………】


 本能的に小さいと言われたと感じ取ったドラペンは怒りのままに振り向く。

 が、すぐに怒りを引っ込める。


「ん?

 何やこのこまい竜、ワイと闘る気か」


 遥か上からギョロリと太い眼光を送る(げん)

 これが(げん)と初対面のドラペン。


【ヒエーーーッッ!】


 ぴゅうっと僕の後ろに隠れてしまうドラペン。

 ガタガタ震えている。


「ドラペン、外見はアレだけどそんなに怖い人じゃないよ(げん)って」


「オイオイ竜司、アレって何やねんアレって」


「竜司、その可愛らしい竜は誰?」


 続いて蓮。

 蓮が話しかけたらまたぴゅうっと前に出てくるドラペン。

 現金な奴だ。

 僕はとりあえずフォローを入れる。


「ド……

 ドラペン……

 この二人は僕の友達だよ……

 こちらが鮫島元(さめじまげん)さん、それでこちらが新崎蓮(しんざきれん)さん」


「お初にお目にかかるでヤンス。

 オイラはラペルニクル・ドラペルダンラペ・ラペ・ラペルージャ三世でヤンス。

 よろしくお願いするでヤンス」


 完全に(げん)を視界から外しているドラペン。


「立派な名前ね。

 フフッ

 よろしく」


 にっこり微笑みながらドラペンの小さい手と握手する蓮。

 若干頬の赤いドラペン。

 本当に現金な奴だ。


「何やラペラペ長ったらしい名前やのう」


 (げん)の太く低い声が響く。

 ビビビッと下から身震いしたドラペンはぴゅうっと飛んでガレアの所へ行ってしまった。

 ガレアは怖くないんだよなドラペンって。


 弄られはするけど。

 そして僕は一応カズさんに事の顛末を報告する事にした。


「カズさん、ちょっと良いですか?」


「ん?

 竜司君、どうしたんだい?」


「少し……

 外いいですか……?」


「…………うん、良いよ。

 悪い(つづり)、僕ちょっと竜司君と話してくるよ」


「ウフン……

 いいわよぉ……

 いってらっしゃあい……

 良いわねぇ……

 まさに青い果実……」


 妙な事を言って見送る(つづり)さん。

 僕とカズさんは室外へ出て自販機の前まで。


「で、何だい?

 話って」


「あの…………

 旅行に行くキッカケをくれた人にちゃんとお礼を言っておこうと思いまして……

 カズさんのお蔭でお爺ちゃんと仲直り出来ました……

 ありがとうございます」


「僕は何もしてないよ。

 ねえ……

 竜司君?

 僕は君をどう扱えばいいかな?

 一人の大人としてか……

 もしくはまだ未熟な少年としてか」


 正直ズルい聞き方だと思った。

 そんな風に聞かれて後者を選ぶ人は稀だろう。

 多分カズさんは僕を一人の男として、大人として見たいのだろう。


「…………一人の大人としてです……」


「わかった…………

 じゃあ言わせて頂く。

 竜司君が本当に言いたい事はそんな事じゃ無いだろう」


 確かに。

 僕の本当の目的は蓮の話をするためだ。


「そうです……

 前にスキルで顔を見た事があるからご存じだと思いますが……

 あの女の子が……

 例の女の子です」


「君は暮葉(くれは)さんを選んだんだろう。

 それで説明しに出て行ったのに何でついて来てるの?」


「はい……

 実はですね……」


 僕は大阪での経緯を掻い摘んで説明した。


「なるほど…………

 蓮ちゃんって子は本当に君の事が好きなんだなあ……

 そしてかなり芯の強い子だね」


「はい……

 僕の頼れる親友です」


「話を聞く限りでは未だに君の側に居れるのは可能性を見てるからだと思う」


「可能性?」


「君が振り向いてくれるかもって言う可能性だよ」


「それは……

 ありません……

 ごめんなさい」


「僕に謝ってもしょうがないだろ。

 本当に可能性が無いならそれを蓮ちゃんの告げるべきだと僕は思う」


「そ……

 それは……」


「まあ僕の知らない関係が二人にもあるんだと思う。

 言うタイミングに関してとやかく言うつもりはないよ」


 何となく冷たいカズさん。

 いや、これが大人として扱うと言う事なんだろう。


「はい、わかりました」


「うん、いい顔だ。

 そう言う所はきちんとしていい男になってくれよ。

 ハハ」


「フフ……

 わかりました」


 僕らは部屋に戻った。


【んでよーゴール爺……】


 ガレアはドッグと話している。

 本当に好きだなあ。


 僕らはそのまま談笑を躱しながら時間を待った。

 兄さん達警ら隊は直に外へ出て行った。

 会議は再開されなかったけど良いのだろうか。


 午後二時四十五分


 ガチャ


 会議室の扉が開く。

 兄さんだ。


「よし、君たち。

 今日の仕事はもう終わらせた。

 そろそろテストに向かうぞ」


「お、もうそんな時間か。

 へへっ

 ほんじゃあいっちょぶちかましてやろかいっ」


 (げん)はやる気満々、意気揚々と言った所。


「はいっ

 わかりましたっ」


 蓮は若干緊張している様子。


 僕ら七人と兄さんは一階に降りる。

 (げん)が一歩足を踏み出した途端。


「うおっとぉっっ!!」


 ズルゥッッ!


 ガンッッ!!


 勢いよく後方反転する(げん)の身体。

 状況を確認する間も無く鈍い音が大きく響く。


 後頭部を押さえ無言でのたうち回る(げん)

 何か今回、(げん)がのたうち回ってる所ばかり見てるなあ。


「げ……

 (げん)……

 大丈夫?」


 僕はしゃがみ様子を伺う。


「いったぁぁぁぁ~~

 何や急に滑ったで……

 ん……

 バナナの皮……?」


 (げん)は足裏に付いたバナナの皮を手に取り不思議そうに見つめる。

 あぁなるほどそういう事か。


 合点がいった僕はチラリと横を見る僕。

 床に夥しいほどのバナナの皮。皮。皮。


「兄さん……

 これって?」


「あぁ……

 またアイツは……

 (げん)くん、蓮ちゃん、危ないから少しここで待っていてくれ」


 兄さんは器用にバナナの皮が落ちてない所を踏みながら入口の方へ。


「こらっ!

 ボキーッッ…………!」


 遠くで怒声が聞こえる。

 僕も兄さんの辿った経路を通り入口へ。


「コラッッ!

 いつも言ってるだろぉぉっっ!

 喰うのはいいが散らかすなってっっ!」


 ポカッ


 ボギーの頭を小突く兄さん。


【イタッ!

 何だようー

 叩くなようー。

 あ、弟君っ!

 弟君ならわかるだろっ?

 ナナーならしょうがないよねっ!?

 ねっ!?

 ねっ!?】


 ボギーが何か懇願するような目でこっちを見ている。

 その前にナナーって何だ?


 バナナ好きの事だろうか?

 “バ”しか略されてないじゃないか。


「いや……

 まあ……」


「全く……

 掃除するのは俺なんだぞ……」


「全く何や……

 このバナナの皮は……」


「物凄く甘い匂いね……」


 (げん)と蓮がこちらにやってきた。

 多分僕と兄さんが通ってきたルートを辿って来たんだよ。


(げん)、蓮」


「何……?

 どうして……

 お兄さんが何で怒ってるの?」


「あぁ……

 蓮……

 実は……」


 僕は事情を説明する。

 その間しゃがんで皮を処理し始める兄さん。


 フィン


 霧散する皮。


「オイ……

 竜司……

 何やこれ?」


 (げん)が皮が霧散していく様を見て聞いてくる。


「あぁこれは兄さんのスキルだよ。

 不等価交換(コンバーション)って言うんだ」


「コレ……

 どうゆうこっちゃ?

 あれだけあった皮がどんどん無くなっていくで……」


「あぁ。

 兄さんの能力はね……」


「ストップ!

 竜司っ!

 説明はいらん」


「えぇっ?

 どうして?」


「ここで説明してもらったら、ワイが勝った時前情報のお蔭やと思われたらかなん」


 (げん)は兄さんに勝つつもりだ。

 流石と言うか何というか。


「うんわかった」


 皮の処理が済み、僕ら九人は一路駿府城公園へ。


 駿府城公園 広場


 再び僕はこの広場に帰って来た。

 兄さんにぶちのめされた広場だ。


【豪輝ー。

 今から何すんのー?】


 ボギーがのん気に聞いている。


「今から少し戦うぞ。

 準備しろ」


【わかったー】


「ベノム、準備しろ」


 ベノムがのそのそ寄ってきてじっと(げん)を見つめるベノム。


「あ?

 何すんのやて?

 今からケンカじゃいっ!

 あ?

 (げん)のケンカは色々めんどくさいから嫌やてっ?

 めんどくさいて何やっ!

 めんどくさいてっ!」


 (げん)が一人で喋っている。

 でもこれでコミュニケーションが取れてるんだよなあ。


「まずはワイからでええやろ?」


「ああ、構わないぞ」


 そう言いながら兄さん達は右へ。

 (げん)達は左へ。


 ここで僕は見た。

 ベノムの右肩から置いていた(げん)の手に魔力が注入されているのを。


 僕はもう少し意識するだけで魔力の流れを見れるようになっていた。

 竜河岸として成長したのかな?


 と、そんな事を言ってる場合では無い。

 このカードは正直興味ある。


 兄さんと(げん)

 しかも(げん)魔力注入(インジェクト)を覚えて強くなっている。


 どうなるのだろうか。

 多分今(げん)の体内は保持(レテンション)を使用した魔力が出番を待っているのだろう。


 コキコキ


 (げん)が首を鳴らしている。


「じゃあワイから行かしてもらう…………

 ……………………でっっ!!!」


 ヒュッッッ


 (げん)が消えた。

 元居た場所は雑草が数本舞い散るのみ。

 急いで目線を右に滑らせる。


 ガッッ!


 音がする。

 だが(げん)は捕捉出来ない。


「オラァァァッ!」


 声がした。

 その声は兄さんの至近距離まで近づいた(げん)の声。

 もう既に右ストレートを放っていた。


 ガンッッッッ!!


 当たった!?


 パラパラパラパラ


 当たった兄さんの左頬下辺りから無色のキラキラした欠片が散り落ちる。

 そして顔の左側を覆う無色の結晶体。


「ほう……

 なかなか魔力の乗ったいいパンチだ……

 竜司といい(げん)くんといい、人工ダイヤを砕くパワーを出すとはな……

 末恐ろしい若者だよ……」


「へっ……

 そりゃ……

 どうもっっ!!」


 (げん)は不思議な防御法でガードされたとしても怯みはしない。

 即座にしゃがみ右から蹴りを仕掛ける。

 これは水面蹴りだ。


「フッ…………

 甘いな……

 (げん)くんっっっ!」


 ゴワッッッ!


 瞬時に(げん)の足元が隆起する。

 (げん)の水面蹴りよりも速く。

 既にモーションに入っていた(げん)の水面蹴りは空を切る。


 頭上を(げん)の左脚が横切るのを見上げた後、無言で右手を軽く振る兄さん。


「うおっっっっっ!!」


 隆起した地面の上に居た(げん)を次は真横に現出した岩が襲う。


 ガァァンッッ!


 大きな衝突音が響く。

 が、(げん)も咄嗟に腕でガードしていた。

 真横に吹っ飛ぶ(げん)


 ズズゥゥゥゥゥゥンッッッ!


 突然上空に現れた大きな岩塊は重力に逆らう事無く地面に落ちる。

 重苦しい着地音がこちらまで響いてくる。

 一体何キロあるんだあの岩は。


 ズザザザザザザッッッッ!


 吹き飛びながらも上手く反転し、何とか着地した(げん)


「いったぁぁぁ~~……

 何じゃこのスキルは……」


 ゆっくり立ち上がる(げん)

 ガードした両腕をプルプル振っている。


「どうしたー?

 もう終わりかー?」


 兄さんから声がかかる。

 同時に隆起した地面や現れた岩塊が霧散する。

 霧の中から不敵な笑みを浮かべる兄さんがいる。


「フム……

 まだ情報が足らんか……

 おいベノム」


 (げん)はベノムを呼びつける。

 のそりと寄って来る。

 ベノムの左肩に手を置く。


 多分魔力供給の為だろう。

 というか結構な魔力量注入してたのにもう消費したのか。


 ドクンドクンドクン


 見える魔力量から中魔力注入(インジェクト)三つか。

 あくまで僕で言う所のだけど。


「へっアホな事言うなや。

 まだまだやるわいっ!」


 ガッッ!


 (げん)が前に飛び出した。

 充分速いが眼で追えない程じゃない。


 ボコォッッ!


 先程と同じ様に地面が瞬時に隆起する。

 が、さっきと違うのはその数。


 ボコォッッ!

 ボコォッッ!

 ボコォッッ!


 (げん)の走るルートが部分的に次々と隆起する。

 まるで(げん)の侵攻を遮る様に。

 が、(げん)もこれを読んでいたらしく、鋭いサイドステップで標的を散らし躱していく。


「へっ。

 さっきと同じゆうのは芸が無いんとちゃいますかぁっ!」


 ザッッ!


 (げん)ジャンプ一番。

 間合いは約四メートル。

 勢いよく近づく(げん)


貫通(ペネトレート)ッッッ!!」


 出た。

 (げん)の新スキル。

 右ストレートが兄さんを襲う。


 が、兄さんも負けていない。

 両間に割り込む形で岩塊現出。


 ガァァンッッ!


 ボコォォンッッ!


 (げん)の拳が岩塊に突き刺さる。

 と同時に粉々に砕け散る。


 あの巨大な岩が。

 何て威力だ貫通(ペネトレート)


「くらえやぁぁっぁぁっっ!」


「むっっ!?」


 ザッッッ


 兄さんが間合いを広げた。

 後ろに下がり距離を取ったのだ。

 あの兄さんが。

 それだけの威力を持っているのか。


 残念ながら(げん)貫通(ペネトレート)は空を切る。


「危ない危ない。

 その……

 貫通(ペネトレート)って言ったか……

 ソレはかなりヤバいな……」


 兄さんが冷や汗をかいている。

 さすが(げん)


「お褒め頂き痛み入りますっちゅうとこか。

 ほいでも当たらな意味無いわ」


 元が立ち上がる。

 その姿に少し違和感。


「が、余りの威力に一発がまだ限度の様だ。

 その右手……

 握力もう無いんじゃないかい?」


 不敵に笑う兄さん。

 そうだ。


 違和感の正体は(げん)の右手。

 小刻みに震えている。


「へっ。

 お見通しっちゅう訳かい。

 悔しいけどその通りや。

 今のワイのレベルやと貫通(ペネトレート)は一発限りの大玉や。

 一回使ったらご覧の通り拳も握れへん」


「どうする?

 (げん)くん。

 もうやめにするか?」


「ハッ冗談ッ!

 こっからがおもろいんやないかいっ!

 まだまだワイはやるでぇっ!」


「うん。

 その覇気や良し。

 竜司にも見習ってほしい所だ。

 よし!

 相手になろうっ!」


 兄さんが僕の方をチラッと見ながらニヤリと笑う。

 戦闘続行。


「じゃあ元くん、次は俺から行かせてもらうぞ……

 形状変化(コンフィグレーション)……」


 僕の時はどんなに攻撃しても自分から行く事は無かったのに。

 それだけ(げん)の実力を認めたって事なのかな?

 少し悔しい。


 と、そんな事を言ってられない。

 この戦いは絶対に参考になる。


 見逃しちゃいけない。

 兄さんの身体に変化。


 バリィッッ!


 ズボンの膝から下、靴が弾け飛ぶ。

 中から現れたのは兄さんの脛()()()もの。

 らしきものと形容したのは現れたソレは明らかに違っていたから。


 色は深い鋼色(スチールグレー)

 関節が前にズレ、真っすぐであるはずの人の脚が横から見ると稲妻の様な形をしている。


 五、六周り太くなった足首から続く足は陳腐な言い方だがまるでTレックスの様。

 巨大な三本爪が地面に食い込み踵が無い。


 その異形な足に絶句し、目線をゆっくり上げる僕。

 脛から上は普段の兄さん。

 五十センチ程兄さんの身長が伸びている。


「何じゃそら……」


 余りの異形の姿に(げん)も絶句している。


「よっ……

 ほっ……」


 ドッ

 ドッ


 足が異形になった兄さんはその場で足踏みする。


「さあ行くぞ……

 げんくん……

 よっと……」


 バンッッッ!


 速い。

 さっきの(げん)と同様眼で追えない。

 僕はすぐ眼を左に。


 兄さんはもう(げん)の至近距離上空まで接近。

 攻撃態勢。


「フフ……

 構成変化(コンステテューション)


 バキバキバキバキ


 兄さんの右拳が黄褐色の結晶へ瞬時に変化。

 あれはロンズデーライト。

 ダイヤよりも硬い鉱石だ。


 ガァァァァァァァンッッッ!


 強烈な兄さんの右拳が(げん)に接触。

 大きな衝突音が響く。


 ズザザザザザァァァァッッ!


 (げん)はっ!?

 (げん)はどうなったっ!?


「おーいってぇぇぇ……」


 プスゥゥゥゥ


 接触個所から煙が上がっている。

 (げん)は両腕を交差させたクロスガードの体勢だった。


 だが兄さんから行くと言った。

 まだ攻撃は終わらない。


 ガッッ!


 兄さんは瞬時に飛び上がり、(げん)の左隣りへ


「これならどうだっっ!」


 ドゴォォォォッッッ!


 兄さんはその異形の脚で元の左肩へ痛烈な蹴りを放つ。

 流石にこれは(げん)も対応できなかった。

 まともに兄さんの蹴りを受けた(げん)は吹き飛ぶ。


 ザザザザザァァァァァッッッ!


 吹き飛んだ(げん)は地面に倒れ込む。


「クゥゥゥッッッ……」


 左肩を押さえながら苦悶の呻き声を上げる(げん)

 心配してみていると(げん)がゆっくり立ち上がる。


「あ~~……

 痛かった……」


 そんな事を言いつつ立ち上がり、左腕をブンブン回す。


魔力注入(インジェクト)か…………

 どうする(げん)くん、まだやるか?」


「正直(にい)やんには敵わんわ。

 ワイの出来る事でどう考えても兄さんに勝てる気がせぇへん」


「そうか……

 フフ」


 兄さんが勝ち誇った笑みを浮かべる。


「でもな…………

 (にい)やんのそのスキル……

 ワイの仮説が正しいのか実証してみたいって言うのがあってなあ……

 っちゅうわけで続行やっ!」


「タフだな……

 (げん)くんは……

 でもいいのか?

 見た所まだ右手の痺れは取れていない様だが……?」


「ご忠告ありがとうございますっでもいらん心配。

 ワイのなかでもう作戦は組上がっとんのや」


「ほう……

 それが上手く行くと良いな……

 さぁっ来いっ」


 兄さんが(げん)を誘っている。


「ベノムッ!

 こっちこいっ!」


 のしのしベノムが寄って来る。


(にい)やん、ちょお待っとってや」


「魔力補給か……

 わかった」


 少し小休止。

 物凄い量の魔力が流れているのが判る。

 あれだけの量を保持(レテンション)出来るのだろうか?


 そして注入されている魔力の量は兄さんにも丸見えだ。

 これだけの量の魔力を消費すると言う事はかなり大がかりの事を仕掛ける気だろう。

 魔力補給完了。


「あぁ~~……

 (にい)やん、待たせたのう……

 さあやらしてもらおう…………

 かいっっっ!!」


 ヒュッッ!


 (げん)の姿が消えた。

 最初に見せた移動法。

 僕は左を向く。


 既に至近距離まで近づいている(げん)

 さすがにあの移動法をやられると地面を隆起させて妨害という訳にはいかないみたいだ。

 間合い一メートル弱まで近づいた(げん)は左フックを放つ。


「オラァッッ!」


 ガァンッッッ!


 分厚い金属にぶちあったような音が響く。

 文字通り兄さんと(げん)の拳の間には鉄板が現出していた。

 兄さんの恐ろしい所の一つがこれ。


 スキルの発動スピードだ。

 ただこれは(げん)も想定内だった模様。

 すぐに次の行動に移る。


 ヒュッッ


 (げん)が素早く後ろに回り込む。


「ッラァッッ!」


 後ろから右前蹴りを叩きこむ(げん)


 ガァンッッッッ!


 再び響く金属音。

 また鉄板に阻まれた模様。


「フン……

 なるほどのう」


 また素早く自位置をズラし、立っている鉄板の間から左回し蹴りを兄さんに放つ。


 ガァァァァンッッッ!


 三度響く金属音。


「そろそろか……」


 また次の行動に移る(げん)

 瞬時に鉄板と鉄板の間、空白ゾーンへ回り込む。


「喰らえやぁぁぁっっ!

 貫通(ペネトレート)ッッッ!」


 貫通(ペネトレート)を使用した渾身の左ストレートが兄さんを襲う。


「むっっ!」


 兄さんもまさかここで貫通(ペネトレート)を使用するとは思って無かったらしく焦りが見える。


 ガァァァァァァァッッッン!


 激しい衝突音が響く。

 拳はどうなったっ!?

 届いたのかっ!?


 届いて…………………………


 いないっ!?


「フフフ……

 作戦としては悪くなかったがなあ。

 防御で不等価交換(コンバーション)を連発させて俺の動きを封じた後に貫通(ペネトレート)で一撃と考えたんだろうが…………

 これは複合装甲コンポジット・アーマーと言ってな……

 戦車の装甲とか…………」


「ウラァァッッ!!」


 兄さんがペラペラ話している内にもう(げん)は次の行動。

 大地を蹴り高くジャンプ。

 鉄板より高く跳ぶ。


 が、両腕はもう使えない。

 どうするんだろう。


「オラァァッァァァァァッッッ!」


 ゴンッッッ!


 先程の金属音とか違う音が聞こえる。

 鈍い音。

 (げん)が兄さんの頭に思い切り頭突きを喰らわせたのだ。


「ウオ…………」


 バターーンッッ!


 ガンガラガラーーンッッ!


 兄さんが後ろにぶっ倒れる。

 立っていた鉄板も巻き込み、大きな音を立てる。

 天を仰いで倒れた兄さんと対照的に前のめり倒れている(げん)


「どうじゃぁいっっ!

 ワイの渾身のパチキ(頭突き)ッッ!

 一泡吹かせたったぞぉぉぉっっ!」


 (げん)が地面に突っ伏して騒いでいる。

 多分両腕が痺れて動かせない為だろう。


【豪輝ー。

 大丈夫ー?

 ボク、豪輝が倒れる所なんて久しぶりに見たよー】


「んお……

 ボギーか……

 大丈夫だ……」


 兄さんがゆっくり半身を起こす。

 右手で頭を押さえながら軽く左右に振る。


「オイッッ!

 竜司っっ!

 竜司っっ!」


 突っ伏した(げん)が僕を呼んでいる。

 僕と暮葉(くれは)と蓮は(げん)の元へ。


(げん)、どうしたの?」


「おっ!

 そこにいんのは竜司かいっ!?

 ワイを起こしてくれやッッ!

 両腕がアホになっとって上手い事起きれへんねやッッ!」


「わかった……

 よいしょっと」


 僕は(げん)の両脇に手を差し込み身体を起こす。

 起こすとよく判る。

 (げん)の両腕がブルブル震えている。


(げん)……

 これって……」


「おう貫通(ペネトレート)の後遺症や。

 まだ撃てて二発が限度やわ。

 まー撃つ方法はない事も無いねんけどな。

 ワイもまだまだ修行が足りんっちゅうこっちゃ」


(げん)ちゃん(げん)ちゃん。

 どうしたの?

 この両腕、プルプルフルプルしてるよ?」


 暮葉(くれは)がキョトン顔で見つめる。


暮葉(くれは)……

 ワレさっきのワイの雄姿見てへんかったん……」


「アハハハハッ!

 何コレッ?

 おもしろいっ!

 指で摘まんだらプルプル止まるのっ!

 ねっ!?

 蓮っ!」


 ニコニコ顔で(げん)の手を摘みながら、蓮に同意を求める暮葉(くれは)


「えっ……

 ええ、そうね」


 若干引き気味に応対する(れん)

 そりゃそうだ。


 暮葉(くれは)の興味は若干ズレてる。

 そんな話をしていると兄さんが歩いてきた。


「あーー……

 効いたぞ(げん)くん。

 まだ頭がフラフラする……」


「そらワイの渾身のパチキ(頭突き)やから当然やろ?

 ヘヘッ」


 (げん)が物凄く嬉しそうだ。

 どっかと僕たちの側に座る兄さん。


「それで……

 仮説はどうだったんだ?

 (げん)くん」


「ああ、多分八割は正解っちゅう所やな」


「ほほう、じゃあ聞かせてくれないか?」


「こんな所でゆうてええんか?」


「構わん」


「ほいじゃあまあ……

 (にい)やん、アンタのスキル……不等価交換(コンバーション)ゆうたか。

 確かにそのスキル凄いわ。

 何も無い所から岩やら鉄やら出すんやもんなあ」


「まあな」


 兄さんが誇らし気だ。


「んでこっからがワイの仮説や。

 そのスキル同時に出せる数に制限あるやろ?

 多分二つか三つ……

 四つって所とちゃうか?」


「え?

 でもさっき地面を隆起させたりとか岩を出したりとか人工ダイヤを出したりしてたじゃない?

 あれは四つ以上あったと思うけど」


「あぁ……

 言い方が正確やなかったな。

 正確には種類や。

 同時に出せる種類は三種類か四種類やと思うんやけどどないや?

 (にい)やん」


 チラリと兄さんの方を見る。


 ギクリ


 そんな音が聞こえてきそうな明らかに動揺している兄さん。


「へっ。

 どうやら図星の様やのう」


「でっ……

 でもおかしいよっ。

 最後のやり取りで鉄板いっぱい出してたしっ。

 それにそれじゃあ最後の頭突き喰らった理由に説明がつかないっ」


 何故か僕は兄さんの擁護側に回っていた。

 多分僕も気づかなかった所まで(げん)に解ってしまったのがそこはかとなく悔しかったのだ。


「ああ、それに関しても説明つくで。

 最後に(にい)やんが出した奴複合装甲コンポジット・アーマーゆうとった。

 多分二つ以上の複数素材で構成されとんのやろ?

 ワイがさっきゆうた三つか四つゆうんはあくまでも単純構成の物質。

 岩とか鉄とかや」


 筋は通っている。

 兄さんをちらりと見る。

 先程の焦りから少し凹んだ顔になっている。


「に……

 兄さん?」


 少し溜息をして頭を掻く兄さん。


「ふうっ……

 まあいいか君達なら……

 概ね(げん)君の言う通りだ……

 俺のスキルは同時にだせる数は四種類が限度だ。

 それは脳への負担の問題でな。

 そしてそれは鉱石や金属とか単純なものの話だ。

 さっきの頭突きを喰らったのも(げん)君の指摘の通り。

 複合装甲コンポジット・アーマーは劣化ウラン、セラミック、チタン、ゴムと複数物質を組み合わせて現出させる。

 それだけで単一の時の三倍の脳リソースを喰う……」


「だから鉄板と複合装甲コンポジット・アーマーを出してもた(にい)やんはタネ切れって事でワイのパチキ(頭突き)が当たったっちゅうこっちゃ」


「でも兄さんには受動技能(パッシブ)の蓄積魔力があるんじゃないの?」


「竜司、あんな頭のてっぺんに攻撃来るなんて予想つかねえよ。

 集中させないと防御力上がらねえからなあ」


「でも(にい)やん、手加減してくれてはりましたやろ?」


(げん)、どういう事?」


(にい)やんの不等価交換(コンバーション)てモノ出すだけや無いやろ?」


「あ……

 そうか」


 兄さんのスキルには構成変化(コンステテューション)だけじゃない。


「あの形状変化(コンフィグレーション)も組み合わされたらワイなんかもうやられとるわ……

 んで(にい)やん、どないでっか?

 ワイは」


「あぁ、合格だ」


「よっしゃあっ!」


 ポーズを取りたい所だが両腕が動かない為大声だけ張り上げる(げん)


「まあ喜ぶのはまだ先だ。

 どうせなら二人一緒に合格したいだろ?

 次は蓮ちゃんだ。

 さあやろうか」


「お兄さん、(げん)との戦いで疲れているんじゃ……?」


「ん?」


 兄さんがまた屈伸を始める。


「まあ頭突き一発ぐらいでへこたれてたら特殊交通警ら隊の長なんかやってられないってな」


 兄さんが白い歯を見せてにっこり笑う。

 蓮は無言で立ち上がる。

 兄さんは右。

 蓮とルンルは左へ。

 この戦いも興味ある。

 正直蓮のスキル。

 電流機敏(エレクトリッパー)にしても電通銀鎖エレクトロ・シルバー・ウェブにしても攻撃力だけで考えれば少々心許無い。

 だが蓮には大技超電磁誘導砲(レールガン)がある。

 多分このカードはいつ超電磁誘導砲(レールガン)を撃つか。

 ここにかかって来るかと思う。


「さあっ

 こっちの準備は良いぞっ!

 いつでもかかってこいっ!」


 兄さんの準備は出来たらしい。


「じゃあ……

 行きます……」


 蓮はそっとルンルに手を合わせる。


 え?

 まさか。


 そう思ってる内にルンルが眩しい光に包まれる。


【ハァァァァァァァッァッッッ…………!

 らめっ!

 らめぇぇぇぇぇぇっっ!

 イィ……

 イイイイイッ……

 イマラチオォォォッッッ!】


 イマラ……

 何だって?


 良く解らないが多分エロい言葉だろう。

 って言うかルンルがエロい言葉を叫んだと言う事は……


 ジャキィィィッッ


 バリッ!

 バリリッ!


 出た。

 重々しく蓮の手にある黄金色に輝く巨大なルンル銃。


 所々放電している。

 初っ端から撃つつもりだ蓮は。


「行けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!」


 掛け声と共に勢いよく引き金を引く蓮。


 ドッキュゥゥゥゥゥゥゥゥンッッッ!!


 巨大な発射音と共に眩しい白色光に光る弾丸射出。


「やべっっ!」


 射出された弾丸の威力を瞬時に感じ取った兄さんは即座に行動。

 地面に手を合わせる。


 ボコォッッ!


 地面より現出する乳白色の分厚い壁。


 バリィッ!


 だが弾丸は止まらず貫く。


 ボコォッッ!

 ボコォッッ!

 ボコォッッ!


 負けじと次々乳白色の分厚い壁を現出させる兄さん。


 バリィッ!

 バリィッ!

 バリィッ!


 だが弾丸は止まらない。


 ドッカァッァァァァッァァンッッッ!


 地面に着弾。

 巨大な着弾音が響き、砂塵が舞い上がる。


 パラパラ……


 静寂が辺りを包む。

 聞こえるのは飛礫が地面に落ちる音のみ。


「あっちゃあ~~…………

 やりすぎちゃったかな?」


 蓮がこんな事を呟いている。


 はっ?

 兄さんはっ?

 兄さんはどうなったっ!?


 やがで砂塵は霧散し、電磁誘導砲(レールガン)の途轍もない威力と被害が露になる。

 その凄惨たる光景に僕と(げん)は絶句。


 まず未だ残っている兄さんが出した乳白色の壁。

 真ん中にぽっかり穴が開いていて穴の縁は赤く融解している。


 そして驚くべきは着弾点。

 クレーターが出来ている。

 その大きさが途轍もない。


 直径約十五メートル。

 最深役二メートルぐらいの巨大なクレーター。

 

 はっ!?


 余りの威力に兄さんの事を忘れていた。


「兄さーんっ」


 大声で呼びかける。


「ううむ……」


 広場の奥の生い茂った茂みの中から兄さんの声がする。

 茂みの方へ歩いていく僕と(げん)暮葉(くれは)


「兄さん……

 大丈夫?」


 仰向けで倒れている兄さんの顔を覗き込む。

 無言で天を見つめる(いぶか)しげな顔の兄さん。


「竜司……

 何があった……」


【今日は珍しいなー。

 豪輝が倒れるの二回も見れるなんてなー。

 いつもボクを小突いてばっかりなんだからいい気味だよー】


 寄って来たボギーがそんな事を言っている。


「に……

 兄さん……

 多分だけど……

 超電磁誘導砲(レールガン)で吹っ飛んだんだと思う……」


「お兄さん……

 大丈夫ですか?」


「あ……

 あぁ……

 大丈夫だ……」


 ゆっくり半身を起こす兄さん。


「ど……

 どうします……?

 まだやりますか?」


「いいいいやっ!

 いいっ!

 もうわかったっ!」


 ほのかにトラウマを抱えた様子の兄さん。


「それじゃあ……」


「あぁ……

 二人とも合格だっ!」


 兄さんは勢い良く立ち上がる。


「やったっ!」


「よっしゃぁぁぁぁっっ!」


 二人とも喜んでいる。


(げん)くんは戦闘における機転の速さと思い切りの良さを。

 蓮ちゃんは超絶無比の超電磁誘導砲(レールガン)を買おう。

 ただ注意して欲しい。

 相手は陸上自衛隊。

 怪我する可能性も充分覚悟しておいてくれ。

 ただもし万が一の事があったら手厚い補償は約束しよう」


「ハッ(にい)やん、何をゆうとりますのや。

 んなモンいらんいらん。

 ワイは戦闘のプロとガチでケンカが出来る。

 それだけで充分や」


「わっ……

 私もっ……

 ただっ……

 竜司の力になれたらなって……」


「まあそう言うな二人とも。

 一般人に警察が協力を要請するんだから。

 国家権力のポーズとでも思ってくれ。

 まあ、とにかく二人とも……」


「おう」


「ハイ」


「俺達と一緒に戦ってくれるか?」


 兄さんが微笑を携えながら語りかける。


「任せとけや」


 ニヤリと不敵に笑う(げん)


「一生懸命頑張ります」


 やる気を見せる蓮。


「さて、恐らく今日は無いかと思うが……

 現状として向こうの情報は全く判らなくなっている。

 これはおそらく決起に向かっての準備段階に入っていると思われる。

 いつ呼び出しがかかるか解らん。

 それだけは覚悟しておいてくれ」


「わかっとるわ」


「ハイ……

 解りました」


 兄さんがニヤリと笑う


「まあそんな事を言ってるがせっかく静岡に来たんだっ

 今日は歓迎するぞっ」


 これは暗に今夜は宴会だと言っているんだろうか。


「兄さん、歓迎会は良いんだけど……

 四人の止まる場所、兄さんの家で良い?」


「おういいぞ。

 あの部屋広いからな。

 四人ぐらい何てこと無い。

 さあ、俺は明日の準備やらで一旦県警本部に戻る。

 竜司は四人を家まで案内してくれ」


「わかった」


 兄さんからカードキーを受け取る。

 僕らは兄さんと別れ、マンションを目指す事に。


 駅前タワーマンション


「確か……

 十三階……」


 入口コンソールにカードキーを差し込み部屋番号入力。


 シュッッ


 自動ドアが開く。

 僕ら七人は中に入る。


 そういえばドラペンを見かけないな。

 どうしたんだろ?


 十三階


 僕らはフロアの一番突き当り迄行く。


「ここだここだ」


 再びカードキーを玄関に差し込む。


 ガチャ


「さっ入って」


「邪魔するで」


「お邪魔します」


 ゾロゾロと中に入る。


「うお……

 デカい部屋やのう」


「そうなの?」


 僕は実家も大きいのでこういう感覚が良く解らない。

 (げん)はドタドタ探検しに行く。

 直に戻って来る。


「オイ竜司。

 このマンション凄いで。

 部屋数四つあって…………

 んでバカ広いリビングやろ?

 ほいでJR最寄り駅に徒歩五分やで?」


「う……うん」


 何となく住みやすそうだなぐらいしか解らない。


「多分億行くで……

 ごっついなあ。

 (にい)やんめっちゃ金持ちやん」


「とりあえず何しよっか……?」


 蓮が聞いてくる。


「兄さんは今日は無いと言ってたけど解らないから出歩かないで自宅に居た方が良いと思う」


「わかった。

 みんな座ってて。

 私お茶入れるから」


 そう言った蓮はキッチンへ消えていった。

 こういう女子力は蓮の方が上なんだよなあ。


【なあなあ竜司。

 今日はもう外へ行かないのか?】


 ガレアが無邪気に聞いてくる。


「うん、もう今日は家に居るよ」


【んじゃー、俺アステバン見ーよっと】


 亜空間からDVDを取り出し手早く再生。

 あんなゴツい手なのに器用だなあ。


「お待たせ。

 ダージリンティーがあったわ」


 ティーカップを並べる蓮。

 お茶を啜りながらしばし談笑。


「そう言えばテストの時出したあの壁。

 何であんなのだったんだろ?」


「ん?

 何の話や?」


「いや蓮の超電磁誘導砲(レールガン)の時だよ。

 兄さんが出した壁って変な白っぽい奴だったじゃない?

 何で鉄板とか岩とかじゃなかったんだろって」


「ああ、多分あれは化学樹脂やろ」


「化学樹脂?」


「おう。

 ポリエステルとかシリコンとかや」


「何でそんなものを?」


「そら蓮が電気放って来るってわかったからやろ」


 全然話が見えない。


「え?

 どういう事?」


「化学樹脂ってな絶縁体なんや。

 いくら竜司くんでも絶縁体ぐらいは知っとるやろ?」


 絶縁体って言えば電気を通さないってやつだ。


「んでも着弾した途端絶縁破壊起しとったけどな。

 ハハッ。

 どんだけすごい威力やねん。

 のう蓮?」


「わっ……

 私は別にそんなつもりじゃっ……」


 ちらり


 僕の方を見る蓮。


「あと(げん)のあの移動法なに?」


「あーあれか。

 最初にやったやつやろ?」


「うん、あの一瞬で見えなくなったやつ。

 あれって僕にも出来る?」


「あれは古武術の縮地走法っちゅうのに魔力注入(インジェクト)混ぜたやっちゃ。

 出来るかって言わ…………」


 縮地。

 このワードに敏感に反応する僕。

 好きな侍漫画に出て来る技と同名だったからだ。


 その漫画では“縮地は眼に映らねえ速さ”と評していた。

 確かに(げん)の身体は一瞬で消えた。


 っていうか実際にあったのか縮地って。

 俄然テンションが上がる僕。


「ねえっ!?

 (げん)っ!

 縮地って実際にある技術だったのっ!?

 僕にも出来るかなっ!?

 ねえっ!?

 ねえねえっっ!?」


 ガクガク


 テンションが上がった僕は暮葉(くれは)じゃ無いが(げん)の肩を持って激しく揺らす。


「ちょおちょお……

 落ち着けや竜司……

 何かお前気持ち悪いぞ」


 はっと我に返る僕。


「ごっっ……

 ごめん……」


「まー、魔力注入(インジェクト)は出来るからええとしても縮地走法は練習いるで。

 それにわざわざ縮地使わんでも脚に集中(フォーカス)したらあれぐらいの速さ出るやろ?」


 違う。

 そうじゃない。

 出るか出ないかじゃないんだ。


 漫画で出て来る技が使えるか使えないかが肝心なんだ。

 そう思ったがまた気持ち悪いと言われそうなので黙っていた。


「でもそれじゃあ何で(げん)はどうして使ってるの?」


「魔力効率がええねん。

 いわゆる低燃費ってやつやな。

 ワイ燃費悪いからなあ」


 ここで言う燃費って言うのは魔力についての事だろう。


「そう言えば何で超電磁誘導砲(レールガン)の弾は地面に当たったんだろ?」


「ん?

 竜司、何の話や?」


「だって普通なら真横に撃つとそのままずっと飛びそうじゃない?」


「それは私が角度をつけたからよ。

 真横に撃っちゃったら多分街を壊しちゃうもの」


 あっけらかんと言う蓮。

 それを聞いた僕らは絶句してしまう。


「竜司……

 オンナは怖いのう……」


「そうだね……

 (げん)


「そっ……

 そんな事ないもんっ……」


 嫌な形で注目を浴びた蓮は憤った顔を見せる。

 僕らはしばらく他愛の無い話を続けていた。


 ガレアはずっとアステバンを見てる。

 名乗りシーンの度々暮葉(くれは)がトラウマモードになるのが大変だったけど。


 だけど三度目になると手慣れたものですぐに引き戻す事は出来た。

 二人と談笑し、時々暮葉(くれは)を引き戻す。

 そしてまた談笑に戻るというパターンを繰り返していた。


 ガチャ


「ただいま~~」


【今帰ったぞぉぉっっ!】


 兄さんが帰って来た。

 同時に野太い声。

 その声を聴いて嫌な予感がする。


 僕らと別れた後、何をしたんだ兄さん。

 足音が複数する。

 多分涼子さんだろう。


 ガチャ


 兄さんがリビングに入って来た。

 両手に山程ビニール袋を持っている。

 続いてシリドラも入ってくる。


「豪輝さん……

 私も持つって言ってるのに……」


「いえっ!

 自分は男ですからっ!

 力仕事は男の本分ですっ!」


 さすがに大ビニール袋片手に四つは持ち過ぎだろう。


 ドサァッ


 買ってきた大袋を床に置く。


【この小童(こわっぱ)ァァッッ!

 家に帰って寝転ぶとは何て惰弱なぁぁッッ!】


 疲れて寝ていた僕を見て騒ぎ出すシリドラ。

 僕は急いで立ち上がる。


「お……おかえり。

 兄さん、涼子さん……

 あと兄さんベビーカステラ早く貸して」


「フフ……

 竜司君…………」


 テーブルを前に座っている僕らを無言で見つめる涼子さん。


「……………………

 お爺ちゃんの件はどうなったの?」


 お爺ちゃんに会いに行くとは涼子さんには言って無いのに。

 多分兄さんが言ったのかな?


「ハイ…………

 仲直り出来ました……

 死にかけはしましたけど……」


「そう…………

 どうだった?

 お爺ちゃんは」


「プッ……

 それがですね……

 確かに仲直りするまではキツかったですけど。

 イザ仲直りしたら物凄く孫に甘い人でした。

 何でしょうか……

 長く重いツンデレとでも言いましょうか」


「そう……

 フフ……

 良かったわね。

 じゃあこの前話した成年後見人の話は取り下げとく?」


 そう言えばそうだった。

 僕は涼子さんに兄さんを保護者にする手続きをお願いしていたんだ。


 お爺ちゃんと仲直りしたって事はもう必要ないんだよな。

 お爺ちゃんに旅の事も了承もらってるし。


「はい……

 すいません……

 色々ややこしくて……」


「いいのよ。

 竜司くんが幸せになれば」


 やはり涼子さんは優しいな。


「ありがとうございます」


「ホラ竜司、ベビーカステラだぞ」


 僕は兄さんからベビーカステラ一袋受け取る。

 そして恐る恐るシリドラに持って行く。


「あの…………

 こんなものをご用意したのですが……」


 何で敬語なんだ。


【フンッッ!

 袖の下とは器が知れるなっっ!

 拙者がそんなモノで心動かされると思っているのかぁぁぁぁッッ!

 …………………………頂こう】


 結局受け取るのか。

 そしてシリドラって一人称、拙者なんだ。

 ベビーカステラを受け取ったシリドラはパクパク食べ出す。


【美味しっっ!

 甘しっっっ!

 美味しっっ!

 甘しっっ!

 …………でヤンス】


 ふうとりあえずこれでドラペンは大丈夫だ。


「さあとりあえず歓迎会の準備をしようっ!」


「じゃあ私は料理に取りかかるわ」


 それを聞いた蓮がすっくと立ちあがる。


「私も手伝います」


「あらそう。

 じゃあお願いしようかしら?

 貴方は……?」


「初めまして……

 新崎蓮(しんざきれん)と言います」


「…………貴方も大変ねえ…………

 ゆで卵作ってくれるかしら?」


「はい……

 わかりました……

 ええまあ……」


 何やらオトナな会話をしている二人。

 会話の内容が少し気になる。


 涼子さんと蓮は調理を始める。

 直に料理が出来る。

 テーブルに次々と並べられる料理。


「さあ、蓮ちゃんと(げん)くんっ

 長旅ご苦労だったっ!

 来る決戦に備えて英気を養ってくれっ……

 かんぱーいっ」


「かんぱーいっ」


 兄さんと涼子さん、ガレアと(げん)はビール。

 僕らはソフトドリンク。

 暮葉(くれは)にはまた飲酒厳禁令を出した。


 何故なら暮葉(くれは)が呑む。

 甘えてくる。


 蓮も呑む(ジェラシーから)。

 蓮も甘えようとする。


 確かにこの美人二人に甘えられるのは正直嬉しい。

 と言うかどんどんやって欲しい。


 でもまだ駄目だ。

 まだ呼炎灼(こえんしゃく)の問題が解決していない。


 全てを忘れて騒ぐのは全てが終わってからだ。

 って言うか(げん)、未成年だけど酒飲んで良いのか?


「まー何や……

 (にい)やんの前で酒呑むっちゅうのは気が引けるのう」


「構わんっ

 本庁勤務の警視正が許すっ!

 今日は呑んで問題無しっ!」


 オイ本当に良いのか(すめらぎ)警視正。

 そんな感じで歓迎会は終始和やかな感じで終了する。


 そして次の日。


 風雲急を告げる事になる。

 時間は昼。

 午後十四時付近に起きた。


 ガレアがアステバンのDVDを取り変えようとした時だ。

 異変を告げたのはTVからだった。


 ザザーーッ!


 画面が砂嵐だ。

 ここで違和感。


 あれ何で砂嵐?

 今はデジタル放送だ。

 電波不良で電波が途切れたとしても画面が真っ暗になるはずだ。


 周りを見ると蓮と(げん)もその砂嵐に集中していた。

 違和感を感じたのだろう。


 ザザーーッ!

 ザーーッ

 ブゥン……


 砂嵐が終わる。

 映像が映った。

 同時に声も聞こえる。


「…………えすっ

 我が名は呼炎灼(こえんしゃく)っ!」


 映像に映ったのは僕の知っている人物。

 堂々と椅子に座るその姿。


 画面越しでも圧を感じる。

 間違いない。


 呼炎灼(こえんしゃく)だ。


「繰り返すっ!

 我が名は呼炎灼(こえんしゃく)


 ###


「はい今日はここまで」


「パパー。

 (げん)ってもしかして頭良いの?」


「うんそうだよ。

 高校も偏差値高い所行ってたし」


「ヘンサチ?」


「あぁ(たつ)にはまだ早かったかな?

 さっ……

 今日も遅い……

 おやすみ」


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