第一章 1 『呼んでる』
ーーー青年の意識を奪った膨大で無機質な白い光は少しずつ輝きを失い、最後の一筋の光を残すのみとなった。淡いオレンジに輝くその一筋の光は、青年を無意識の淵から引き上げ、その身を飛散させた。
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瞼を開ければ目に飛び込んでくるのは雲ひとつない真っ青な空だ。その空を囲むように茂る木々の葉が円形のフレームを作っている。
周囲に目を向ければ、「木」、「草」、「花」と自然の類いばかりだ。
とりあえず、上体を起こして、ポケ〜と2度目の周囲探査を行うこと10秒。
ようやく目覚め始めた脳が、組み立てた文章はこうだった。
「ここはどこだ⁉︎」
単純明確、ただミナトの思いが詰まったこの叫びは、虚しく鬱蒼と茂る森の奥に消えた。
「俺が突然こんな森の中にいるなんて夢に違いない」
と、今日日流行りそうにない、小説のタイトルのような謎の独り言と共に、とりあえず頰をつねってみる。もちろん、めっちゃ痛い。
「うん、知ってた。俺がこんなリアルな夢を見るほど、発想力豊かでないことぐらい自覚してた」
と痛む頰をさする。
「ということは、やっぱりマジで俺は死んだのか。でも足はちゃんと生え….てるし、頭の上にわっかも….ないよな」
手で足をトントン、手を頭上でヒラヒラさせ、マンガでありがちな変化が自らに起こって無いことを確認する。
「あー良かった。わっかは別に良いんだけど、足が無いのは困るよね。トイレってどうするんだろう」
と、くだらないことを思案しそうになるところを、どうにか食い止める。
「こんなときって動かない方が良いんだろうか。でも、救助隊は来ないだろうしな。なら、とりあえず動いてみるか」
ミナトはおもむろに立ち上がろうとして、腰の痛みに顔をしかめた。
うっすらと草が生えているとはいえ、固い地面の上で横になっていたのが原因のようだ。
「俺はどんだけここで寝てたんだよ、あー、いってーな」
と、つぶやきながら、腰をさする。
そのときだった。
不思議なほど静かだった森の中に、耳を塞ぎたくなるほど、大きく不快な鳥の羽音が響き渡たった。
しばらくして、たくさんの鳥が先を急ぐように、ミナトの上を飛び去っていった。
ーーー呼んでる。
そう思った。
根拠がない、確信があった。
不安があった。
でも、彼女にもう一度会えるという、期待が彼の背を押した。
「行こう」
ミナトは、鳥たちが逃げてきた方向に足を向けた。
遅くなってすみませんでした‼︎
用事もひと段落しましたので、今後は今まで遅くなっていた分、スピードアップして書き進めていきたいと思っています。
今後とも応援よろしくお願いいたします。