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どうやら世界は残酷らしい  作者: Anisakis
第一章 地獄に咲く一輪の花
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幕間 『いまだ残酷でない世界』

ーーーここはどこだろうか。


 水中にいるかのような、体を包み込む感覚は、温かく気持ち良い。一方、その感覚を伝えてくる身体は、存在感を薄め、半透明に感じられる。


 昔、習った胎児の暮らす子宮内の様子はこんなものなのかな、と考えながら、彼は心地よく、ひどく安心するこの空間にしばらく体を浮かべていた。


 いくらかの穏やかな時間が過ぎた。

 ふいに彼は呟いた、


「そうか…俺は死んだのか…」


 刹那的に死ぬ間際の痛みが蘇り、彼は眉をひそめた。


ーー痛かったな…

ーー苦しかったな…

ーー疲れたな…


「まあ、でも、そんなこともう良いか…」


 彼はもう安らかに眠りたかった。もう、苦しみたくない。そう、心から願っていた。


 彼は瞼をゆっくりと閉じた。

 ゆっくり、ゆっくりと瞼を閉じた。


 最後の光の筋が視界から消えようとしたそのとき、彼は忘れていたことを思い出した。


ーー彼女のことを

ーー最後の一瞬に聞こえた声を


 彼女は透けるような白い肌と、対照的な黒い髪と瞳が印象的な少女だった。


 彼女を失った、そのことを忘れ、彼は一人楽になろうとしていた。


 まず、そんな自分が許せなかった。


 次に彼女を残忍に、冷酷に殺したあの男に深い憎しみを感じた。


 最後に彼女を思い出し強い愛しさを感じた。


「しおり?しおり…君はどこかで僕のことを待っていてくれているのか?」


 その瞬間、彼の瞳からは涙が溢れた。流れ落ちる雫は彼の不透明な身体に柔らかな光となってぶつかり、不透明だった身体にしっかりとした色彩を与えた。



ーー世界に光が満ちた。





















 世界はまだ残酷ではなかった。



遅くなって申し訳ありませんでした!


まだ、忙しい日が続くので更新速度が遅い日々が続くと思われますが、どうぞ読み進めていただけると幸いです。


感想等もどしどし募集してます‼︎

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