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ああ、赤ずきんちゃん。  作者: 極大級マイソン
真・最終章【シンデレラ(真)編】
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第1話「シンデレラ・is・プロローグ」

昔々、お金持ちが住んでいる家に【シンデレラ】という少女がいました。

継母とその連れ子の姉たちに虐められていたシンデレラは、ある日姉たちに言われて、森へ出かけました。

何でも、その森ではトリュフが採れるらしく、収穫できれば間違いなく大金が手に入るという噂を聞いて、姉たちはシンデレラにトリュフ狩りを命じたのです。

シンデレラは、姉たちに逆らうことが出来ず、嫌々ながら森へ向かったのでした。




*****




シンデレラ「うぅ……、私もパーティー行きたかった……」


シンデレラは、めそめそ泣きながら森の中を歩いています。

トリュフを探せと言われても、そんな能力も技術も持っていないシンデレラではどうすることも出来ず、少女はただただ森を進むばかり。すっかり陽も暮れてしまい、辺りに闇が差し込んできます。

そんな時、ピカンとした小さな光が蛍のようにふらふらと揺れながら、シンデレラの元へ近寄ってきました。

その光の正体は、羽の生えた小さな少女【妖精】。


シンデレラ「……あ、貴女、誰ですか……?」


シンデレラは、ビクビクと怯えた表情で、その小さな少女に尋ねます。

そして、妖精は優しげな笑みをシンデレラに向けて答えました。


妖精「……ねえ、そこの貴女。お名前は? 貴女は、なんで泣いているのかしら?」

シンデレラ「うぅ、わ、私はシンデレラ。姉さんたちに言われてトリュフを探しに来たんです。で、でも、なかなか見つからなくて……。本当は、私も姉さんたちとパーティーに行きたかったんだけれど。うぅ……」


シンデレラは、泣きそうな顔で俯いてしまいました。


妖精「……そう、お城の舞踏会へ行きたかったのね」

シンデレラ「いえ、今夜開催される『バカラパーティー』に行きたかったんです」

妖精「バカラパーティー!?」


素っ頓狂な声を出す妖精。

そして説明しよう、"バカラ"とは!

トランプを使ったカジノゲームの一種。多くは高額な賭金をかける、カジノゲームの中でも特に大金が動くことで有名なゲームである!


シンデレラ「世界中のあらゆる『バカリスト』たちが集まる大きなパーティーで、今年国が最も注目しているイベントなんです」

妖精「そんな大規模なの!? ていうか、バカリストって……。おそらく『バカラ』と『デュエリスト』を合わせた造語でしょうけど、それじゃあただの『バカ』の『リスト』よ」

シンデレラ「今年は、『かぼちゃの種』と『ガラスの靴』を賭けて一攫千金を狙うつもりだったのに。うぅ……」

妖精「お、思っていたよりお金にがめつい子ね……。なんでそんなにお金が欲しいの?」

シンデレラ「いえ、私は暇だから行こうと思っただけで、お金には興味ないです」

妖精「興味無いんかい!!」


妖精は、ツッコミを入れました。彼女は一気に疲れたようで、肩の力を抜きます。


妖精「ああもう! 何だか一気に力が抜けちゃったわ。貴女、トリュフ狩りかなんか知らないけれど早く帰った方が良いわよ。この森には怖い狼が住みついてるから、何かあっても知らないからね」


そう言って、妖精は森の奥へ飛んで行きました。

シンデレラは、またひとりぼっち。めそめそと泣きながらまた森の中を歩いていきます。


シンデレラ「うぅ……」


そんな様子を、妖精は遠くから眺めていました。


妖精(……まあ、あの様子じゃあすぐに諦めて家に帰るでしょう。今のところ襲ってくる動物たちもいないようだし、寒くなる前に帰ってくれたら良いけど)


妖精は、そうやってしばらくシンデレラを観察していましたが、やがて森の奥へ帰っていきました。

シンデレラは、森の中を歩きます。




*****




それから5年後。

シンデレラは、まだ森を歩いていました。


妖精「嘘でしょッ!?」

シンデレラ「あ、よ、妖精さん。お久しぶりです……」


シンデレラは、まるでお隣さんに挨拶をするかのように軽くお辞儀をします。

そんなシンデレラの格好は、灰まみれのフードを被った実に見すぼらしい姿。おそらく着替えの服もなかったのでしょう。ボロボロでヨレヨレ、少なくとも若い女子が好んで着る服ではありません。

しかしシンデレラは事も無げに、カゴに詰まった木の実をシャリシャリと囓りながら妖精を見つめています。

どうやら彼女は、完全に森で生き抜くスタイルを身につけているようです。森ガールです。


妖精「いやいやいやっ!! 『お久しぶりです』じゃなくて。貴女ここで何をしてるのよッ!?」


そして妖精は、5年ぶりにツッコミを入れました。

彼女の当然の問いに、シンデレラは困った様子で答えます。


シンデレラ「えっ、えっと……。結局、トリュフは見つからなくて、それで家に帰れなかったから仕方なくここへ住み込んでいたん……です」

妖精「5年間も!?」

シンデレラ「はい。あっ、もう5年も過ぎたんですね。時が経つのは早いなぁ〜」

妖精「マイペースにも程がある!! 人間の5年って、もっと大事なものじゃなかったっけ!?」


妖精は、驚いているような呆れているような顔で、シンデレラを眺めていました。

すると、妖精はふと、おかしなことに気がつきました。


妖精「あら? でも貴女って、人間よね?」

シンデレラ「そ、そうですけど……」

妖精「……あれから5年も経ったのに、見た目がちっとも変わっていないのはどういう事かしら? 所詮100年しか生きられない人間なら、多少なりとも肉体的変化があるはずなのに」


妖精はシンデレラをしげしげと観察します。

シンデレラは、見られる事に慣れていないのか、恥ずかしそうに目を逸らしました。


シンデレラ「さ、さあ、何ででしょう?」

妖精「………………」

シンデレラ「……えっと。あ、そうだ! 妖精さんもコレ、食べませんか? 森で見つけた珍しい果実です」

妖精「って、それ『黄金のリンゴ』じゃない! ……なるほど、見た目が変わっていないのはこれの所為か」

シンデレラ「どういう事ですか?」

妖精「良い? よく聞いてシンデレラ。貴女は不老不死の果実を食べて、歳をとることも死ぬこともなく、世界が滅びるまで永遠を生きる身体になってしまったのよ!」

シンデレラ「ど、道理で私、森の獣たちに食べられても平気なんですね」


突然、恐ろしい経験談を喋り出すシンデレラ。

もうツッコミが面倒くさくなったのか、妖精はスルーして腕組みをします。


妖精「しかし困ったことになったわね。これで貴女は、この世の理から外れた異端者となってしまった。……シンデレラ。不老不死となった今、これから何かしたいことはあるのかしら?」

シンデレラ「じゃ、じゃあ……、あの時できなかったバカラパーティーに行きたい……です」

妖精「………………」


そんなこんなで、不老不死となったシンデレラは森を離れ町へと向かいました。

こうして、シンデレラの物語は幕を開けたのでした。

この先、彼女がどのような運命をたどる事になるのか。それは、まだ誰にもわからない事でした。

次回、第2話「赤ずきんちゃん……かな?」。ご期待ください。

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