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ああ、赤ずきんちゃん。  作者: 極大級マイソン
最終章【シンデレラ(仮)編】
42/52

第18話「赤ずきんちゃんと白雪姫とシンデレラと王子様」

 赤ずきんと白雪姫の前に現れたローブ姿の女性、シンデレラ。

 彼女は、昨晩赤ずきんを連れ去った張本人であり、今夜行われる天下一舞踏会の主催者でもあります。

 無類の強さを誇る狩人を退けた実力といい、只者ではないことは確か。赤ずきん達がおとぎの城で最も警戒すべき人物でしょう。


 シンデレラ「ふふふ。それにしても王子様ったら、まさか女性が寝ている部屋で居眠りしてしまうなんて、意外にお茶目なんですね」

 王子「はははっ。いやはや、私としたことがいつの間にか眠ってしまったようでな。全く、とんだ粗相をしてしまったものだ」


 ……そんな怪しいシンデレラですが、現在彼女とは一緒にお茶を嗜んでいました。ついでに先ほど蘇らせた王子様も加えて、4人で楽しいティータイムです。


 赤ずきん「いやービックリー。まさか部屋の中で人が倒れているなんて、人殺しが出たのかと思ったわー(棒)」

 白雪姫「私も、倒れているお兄様の姿を見かけて真っ先に駆けつけちゃいましたー(棒)」


 寝惚けて危うく少年を殺しかけた赤ずきんと、死んだ王子様を無視して真っ先に赤ずきんに駆けつけた白雪姫がそんな台詞を言いつつ、2人はそっと耳打ちをします。


 赤ずきん(……ねえ、白雪姫。本当に王子様の死のことを内緒にした方が良いと思う?)

 白雪姫(お兄様は仮にも一国の王子。下手に騒ぎを広めるより、黙っていた方が賢明です。幸い無事に生き返りましたし)

 赤ずきん(そっかー。それにしてもシンデレラさん、一緒に客室に入ったのに王子様が死んでいたことに全然気づいてなかったよねー)

 白雪姫(お兄様も、さっきまで自分が死んでいたことに全く気づいていない様子です。まあ、お兄様は昔からそういう方なんですが)

 赤ずきん(あ、私知ってる。そういう男の人は『鈍感系男子』っていうの。色んなことに無頓着なんだよ)

 白雪姫(自分の死にまで無頓着なのは流石に困りますね。お兄様は昔から……)

 王子「ふむ、どうした2人とも。内緒話か?」

 赤ずきん・白雪姫「「何でもないです」」


 王子様に水を差され、2人は何事もない顔でお茶を啜ります。


 シンデレラ「王子様。あれはガールズ・トークというもの。古来より女子は、殿方には話せない秘密の会話をして盛り上がるのです。話の内容は恋愛、美容、恋バナ、ダイエット、愚痴、体の事情等があります。……因みに『それ実質内容2つじゃね?』、という質問はノーコメントとさせていただきます」

 王子「はははっ、そうかそうか! 白雪姫にもようやく、親密に話し合える友人ができたか!」

 赤ずきん「はい! 白雪姫は私の1番の友達です!」


 王子様は、愉快そうに笑い声をあげます。妹の成長が余程嬉しかったのでしょう。

 そして白雪姫は、赤面して顔を俯いています。赤ずきんに肯定されたのが余程嬉しかったのでしょう。


 王子「赤ずきんよ、これからも白雪姫とは仲良くしてやってくれるか?」

 白雪姫「もちろんです! 一緒友達でいます!」

 王子「お、お? …………私は赤ずきんに尋ねたのだが、まあ良い。友達は掛け替えのない宝だ! どうやら白雪姫がおとぎの森に住むようになったのは、良い兆候を生んでくれたようだな」

 赤ずきん「あれ? 王子様、白雪姫がおとぎの森に住んでるってこと知ってたの?」


 白雪姫は、おとぎの城を離れ外では死亡・行方不明扱いにされているはずでした。ならば何故、王子様は白雪姫の所在を知っていたのでしょう。


 王子「ふむ、詳しい事情は忘れたが」

 白雪姫「忘れたって……」

 王子「諸事情あって白雪姫が城を離れたことは覚えている。そして白雪姫は親切な人の家に住まわせてもらい、本人もその暮らしに満足していると。私も白雪姫が良いならと思い了承した」

 赤ずきん「子供を自由に過ごさせてあげる良識がある家なんですね! 素敵だと思います!」

 白雪姫「放任主義過ぎる気もしますが…………いえ、それを言うのは野暮ですか」


 ずっと森の暮らしを強いられている、赤ずきんの境遇を知っている白雪姫は敢えて口を閉ざしました。

 それにしても、白雪姫がおとぎの森にいたことを知っていたのなら、彼らはその経緯までも知っているのでしょうか?

 何故、白雪姫がお城を出ることになったのか。

 彼女を暗殺を仕掛け、危うく命まで奪わんとした、今もこの城で暮らしているはずのお后のことを、城の皆は知っているのでしょうか?


 白雪姫(やっぱり告発するべきですよね。お后様は、人を殺すことも躊躇しない方ですし、もしかしたらお城で取り返しのつかない事件を起こすかも知れない)

 白雪姫「あの、お兄様! 実はご相談が……」

 王子「おおそうだ! 思い出した。確か白雪姫は、暗殺されかけたのだったな! それで、安全のために城を離れ、森で暮らすことになった。そうだろう?」

 白雪姫「え……。あ、はい……」


 正確には、暗殺が未遂に終わった後、仕事を受け持った猟師がその事実を隠蔽するためにおとぎの森に放った、というのが真実ですが、王子様が言ったことは大体は当たっていました。

 何だ、事情は知っているんじゃないか。けれど、お后が犯人だとは知らないようだ。

 そう思う白雪姫でしたが、その後、王子様がとんでもないことを言い放ちました。


 王子「いや、最初聞いた時は驚いたぞ。まさか妹が何者かに殺されかけるとは。しかも調査によると犯人は王族の関係者である可能性が高いときた。殺人者がいるかもしれない場所に、愛娘を居させるわけにはいかないと、父上が城に連れ戻さず森に留まらせると提案したのだったな!」

 白雪姫「そうなんですか?」

 赤ずきん「なるほど、安全のために森に居させた……。じゃあ犯人が捕まったら、白雪姫はどうなるの?」

 王子「さあな。安全が確保されれば、わざわざ娘を森で暮らさせる理由は無くなる。……普通に城へ連れ戻すのではないか?」

 白雪姫「え゛?」


 絶句。

 白雪姫は膠着しました。自分殺しの犯人を城に伝えれば、白雪姫はおとぎの森を出なければならないようです。

 それはつまり、赤ずきんと離れ離れになることを意味します。

 絶対に避けなければならないことでした。


 王子「ああ、そういえば白雪姫。先ほど私に何か言いかけ……

 白雪姫「何も言っていません(ニコッ)」

 王子「んっ? いや、しかし……

 白雪姫「何も言っていません。何も言いかけていませんし、一言も喋ってはいませんし、口を開いてすらいません。お兄様の勘違いではないでしょうか?(ニコニコッ)」


 微笑みの表情を浮かべ、白雪姫は実の兄に『無言の圧』を放ちます。


 王子「お、あ、うん。……そうだな、確かに勘違いだったかもしれんな」


 実の妹に気圧される王子様。彼の本能が、話を続けるべきではないと訴えています。

 王子様は話題を変えることにしました。


 王子「し、しかしこうしてまた無事に出会えた事、私は本当に嬉しく思ってるぞ、白雪姫。森での暮らしは順調か?」

 白雪姫「これまでの人生にないくらい最高に幸せです。お城では巡り会えなかった人、物、生活をたくさん体験出来ました」

 赤ずきん「白雪姫にそう言ってもらえて、私は嬉しい。でも正直言って良い所ではないわね。電気は通ってないし、娯楽は少ないし、危険はいっぱいだし。いくら暗殺者が潜んでいるかもしれないからといっても、白雪姫が森の動物たちに襲われたらひとたまりもないわよ」

 王子「その辺りは問題ないと聞いたぞ。おとぎの森には信頼できる人物がいるから、白雪姫の身は保証できると、父上が申していた」

 赤ずきん・白雪姫「「信頼できる人物?」」


 聞き慣れない人物の存在に、2人は首を傾げます。


 赤ずきん(ねえ、誰のことかな?)

 白雪姫(さあ……。森で暮らしていてお城の方々に関係している人物といえば、私を除けば狩人さんしかいませんが)

 赤ずきん(狩人さんは絶対違うでしょう。そもそも指名手配犯だし)

 白雪姫(では誰が……)

 王子「む、またガールズ・トークか? はははっ、2人は本当に仲が良いのだな!」


 いくら考えても拉致があかないので赤ずきんと白雪姫は一旦この話を打ち切りました。


 王子「そうだ赤ずきんよ。君とは一度話をしたいと思っていたのだ」

 赤ずきん「そういえば昨日、王子様からお呼ばれされていましたね。私に何のご用ですか?」

 王子「なに、畏まったことを話すわけではない。私は昔から、おとぎの森について関心があってな。長年そこで暮らしている君なら、詳しい事情がわかるのではないかと思った次第だ」

 赤ずきん「そんな事で良いなら、いくらでも話しますよ」

 王子「おお、助かるぞ! では最初に聞きたいのはな…………」


 王子様は実に楽しそうな表情で森について質問し、赤ずきんがそれに答えます。

 そんな中、白雪姫は少し思い詰めていました。


 白雪姫(さっきはどうしても話せない事情があり相談できませんでしたが、お后様の件はお城にいる間だけでも警戒するべきですよね。当分は戻るつもりはありませんが、家族やお城の人たちが危険な目に合わせるわけにはいきません。それに、もし私が伝えなかったばかりに赤ずきんさんが危険に巻き込まれたら…………)

 赤ずきん「あ、白雪姫がまた思い詰めた顔をしてる」


 白雪姫の異変に真っ先に気づく赤ずきん。続いて王子様も、そんな白雪姫の顔を伺います。


 王子「本当だ。白雪姫、悩み事なら相談に乗るぞ。私は兄なのだからな」

 白雪姫「お兄様、私なら大丈夫です。何も問題はありませんから」

 赤ずきん「無理しないで。困ったことがあったら、私が何度でも助けてあげるからね?」

 白雪姫「赤ずきんさん……………! ハイッ! 私は、いつだって赤ずきんさんの事を信頼しています♪」

 王子「む、むぅ? いま、実の妹からとてつもない理不尽さを受けたような気がするぞ??」


 白雪姫がハートマークを浮かべて、王子様が難しい顔をしています。

 さて、時刻は既にお昼前。例の舞踏会の開催まで、残り数時間です。


 次回、第19話「赤ずきんちゃんの側で暗躍する影」。ご期待ください。

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