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ああ、赤ずきんちゃん。  作者: 極大級マイソン
最終章【シンデレラ(仮)編】
33/52

第9話「狩人と四騎士」

 これはある日の出来事。

 おとぎの国を守護する最強の騎士団、『おとぎ騎士団』は稽古に励んでいました。

 いつかくるやもしれない戦いに備えて、国民の皆様の安全を護るため切磋琢磨するその姿は、まさに国の希望そのもののようです。皆一様に身体を鍛え、剣を振り、汗を流します。

 おとぎ騎士団のエリートである四騎士もまた、日々の鍛錬を怠らず過ごしていました。


 女騎士「……ふぅ、もう昼時か。みんな、少し休憩にしよう」

 聖騎士「そうですね。お腹もすいてきましたし、昼食に致しましょう」

 重騎士「おう!」

 弓騎士「あっ! 僕、今日はサンドイッチ作ってきたんですよ。一緒に食べませんか?」

 女騎士「弓騎士、お前はそういうところは豆だな」


 四騎士と呼ばれるこの4人は、天才騎士に代わる正義の象徴として、国中から讃えられる存在でした。

 しかし四騎士は、天才騎士のような粗暴な人間ではありません。真面目で清廉潔白、国民の命を第一に考える騎士達です。


 重騎士「オイオイオイ弓騎士! サンドイッチなんて腹の足しにもならないぜ!! もっとガッツリした物食えよ!! 肉を食え肉ッ!!」

 弓騎士「ええ〜っ、これからまた鍛錬したり、パトロールしたりするのに昼間から肉って……」

 女騎士「弓騎士、騎士にとって身体は資本。お前は普段、何を食べてるのだ?」

 弓騎士「サプリメント?」

 重騎士「嘘だろッ!?」


 重騎士が信じられないものを見る目で弓騎士を見ます。


 女騎士「弓騎士それは……」

 弓騎士「イヤイヤイヤ! 御二方は誤解している! このサプリメントの素晴らしさをッ! おとぎの国が誇る最先端の科学技術で作られたサプリメントは、身体に必要とするあらゆる栄養素を手軽に取り込める、まさに神秘の食品なのですよ!!」

 重騎士「それを『食品』と言えるのか!? ほぼ薬みたいなもんだろッ!!」

 弓騎士「薬じゃありませんよ! あくまで栄養補助食品ですッ!!」

 女騎士「とは言っても、弓騎士。そんな食事で本当に身体を動かせるのか? 国の平和を護れるのか?」

 弓騎士「勿論です女騎士! 何なら、試しに手合わせをしてみましょうか? この絶対的サプリメントの力を得た僕にッ!」

 重騎士「なら俺とやろうか」

 聖騎士「では私が審判を務めます」


 そうして、弓騎士VS重騎士。

 二人の男の熱き戦いが今、始まります!


 弓騎士「先攻はどうぞ重騎士。何処からでもかかってきn

 重騎士「オラッ」


 ドバァァァァァァァァァァァァァンンッッッッ!!!!

 と、弓騎士は壁に叩きつけられて、そのままズルズルと崩れ落ちていきました。

 聖騎士が判決を言い渡します。


 聖騎士「勝者、重騎士っ!!」

 重騎士「シャアアアオラアアアアアアアアッッ!!!!!!」

 女騎士「って、普通に勝利者宣告しない! 重騎士も勝鬨を上げるな!! ていうかお前、その手に持ってるのは何なのだ!?」

 重騎士「鉄鎚」

 女騎士「手合わせでそんな危険な物を振り回すな! 下手したら死人が出てたぞ!! 弓騎士も、何でこんなあからさまに無謀な手合わせを申し込んだ!? そもそも装備からして重騎士が重装、弓騎士が軽装備なのにッ!」

 弓騎士「さ、サプリメントの力ならイケると思ったんです……」


 渾身の一撃を喰らいながらも、ヨロヨロと立ちあがる弓騎士。細身とはいえ、弓騎士は日頃から鍛錬を繰り返してきた騎士団のエリート。その肉体は貧弱ではないようです。


 女騎士「ふぅ。その回復力なら、いざという時に病気になったりする心配は無さそうだな」

 弓騎士「勿論です!」

 女騎士「さてと、とにかく今はお昼にしよう。弓騎士、折角だからそのサンドイッチも頂こうか」

 弓騎士「どうぞどうぞ」

 聖騎士「あ、弓騎士殿。念のため、私が癒しの魔法で治療をしましょう」


 そうして、四騎士が昼食を摂りながら世間話をしていた時、おとぎ騎士団の長、団長がやってきました。


 団長「やあ君達。……おっと、昼食中に邪魔をしたかな?」

 女騎士「団長。いえいえ邪魔等と、とんでもありません!」

 重騎士「団長! 団長からも言ってやってくださいよ! こいつ全然肉を摂ろうとしないんっすよ!」

 弓騎士「ですから、栄養バランスはキチンと考えていますって。逆に重騎士こそ、そんなに肉ばかり食べて、食物繊維ビタミン等足りてるんですか!?」

 重騎士「男が肉を食わなくてどうするッ!! だろう、聖騎士!?」

 聖騎士「確かに、我らが神の教えでは肉食の禁止はございませんね。ただ、私はどちらかと言うと魚派です」

 女騎士「おい、3人とも! 団長が話されているのだぞ、静粛にしろ!」


 そんな騎士達の様子を見て、団長はハッハッハ! と笑います。


 団長「まあまあ女騎士。国の安全を護る騎士とはいえ、毎日そう気構えていては、神経がすり減ってしまうぞ?」

 重騎士「そうだぜ女騎士。そもそもお前は日頃から硬過ぎるんだよ。もうちょっと力を抜いたらどうだ?」

 女騎士「お前達がゆる過ぎるんだ……。まったく、騎士ともあろう者が何たる事だ……」

 弓騎士「そんなに僕らって、腑抜けて見えますかね? ねえ、聖騎士」

 聖騎士「そうですね。……しかし私は、女騎士殿の真摯さには、深い尊敬の念を抱きますね。彼女の迷いなき真っ直ぐな心は、きっと多くの人々を導いてくれるでしょうから」

 弓騎士「まあ……気心は大事だよね」


 弓騎士はうんうんと頷きます。


 重騎士「だけど腕前なら俺だって負けてねえぞ!! 現に俺はこの鉄鎚で敵をなぎ払ってきたんだ!! 熊だろうと鬼だろうと、俺にかかれば皆イチコロダァ!!」

 弓騎士「僕だって、弓の扱いなら負けません! 後方支援ならどんな状況だろうと即座にサポート出来ます!」

 聖騎士「私は、神への祈りを決して忘れません。聖なる神より得た力で、迷える子羊を導くのです」

 女騎士「国民を護るのが騎士の務め! 毎日の鍛錬は怠らず、剣を磨く! そうして培った力が、必ず己の糧となると信じています!」


 四騎士は、皆が国を、国民を護ろうと日々を生きてきました。4人の心に一切の驕りはなく、まさに正義の騎士という姿です。

 団長は、我が子のような騎士達が立派に育ってくれた、と4人の成長を心の底から嬉しく思いました。


 団長「ああ、良い心がけだ。お前達は本当に立派に育ってくれた」

 女騎士「恐縮です」

 団長「…………しかし、四騎士よ。これだけは忘れないでくれ。"腕っ節の強さが騎士の本質ではない"と。平和を誰よりも愛し、正義を重んじ、誰の子供でも自分の子供のように愛する気持ちを持つ事。そう騎士とは、"愛と平和を抱く心こそが最も大事なのだ"よ」


 団長は、四騎士の目をしっかり見つめながら言います。

 四騎士も、団長の話を一言一句逃さず聞いています。

 そして女騎士は、自分達に話をする団長が、何処か思いつめているように感じました。


 女騎士「団長、どうかしましたか? どこか気分が優れないように見えますが……」

 団長「ん、ははっ。女騎士はよく気がつくな」

 女騎士「長い時間、貴方の元で訓練をしてきましたから。団長の変化に気付くくらい訳もありませんよ」

 団長「いや、大したことではないんだが……少し昔のことを思い出してな」

 女騎士「それは一体……」

 団長「『天才騎士』という名を、君達は知っているかね?」


 その名前を聞いて、四騎士は目を見開きます。


 重騎士「天才騎士! あの伝説の英雄騎士か!?」

 弓騎士「一騎当千で敵地を蹴散らし、空飛ぶ龍さえも斬り落としたという最強の騎士ですよね!? 数年前に実在したっていう……」


 重騎士と弓騎士の言葉を聞いて、団長は頷きます。


 団長「そう、天才騎士。かつて英雄とまで呼ばれた、圧倒的な力を持った騎士だ。…………私の元部下だよ」

 女騎士「団長の……」

 重騎士「ヘェ〜、やっぱり団長は天才騎士と会ってるんですね。どんな人なんですか?」

 団長「不真面目で、適当な男だよ。もし、君達が彼と出会ったなら、世間の噂話とのギャップに驚くだろう」

 弓騎士「ふんふん」

 聖騎士「それで、その天才騎士殿がどうされたのですか?」

 団長「時々、思い出すんだよ。奴の掲げる騎士道、"強さこそが騎士"という正義感をな」


 団長は一呼吸置いて、話を続けます。


 団長「…………だが、それはきっと間違っている。どれだけ力が強くて、民を思う気持ちがなければ騎士は務まらない。俺はそう思っている」

 女騎士「ええ、その通りです。強さのみでは騎士になる事は出来ません」

 重騎士「そうだなぁ。…………それで、天才騎士ってのは実際にどれくらい強かったんですか? 団長より強かったんですか?」

 団長「はははっ! 俺は奴が騎士団に入団した頃から知っているが、俺が奴との試合で勝てたことは一度もない!」

 重騎士「マジですか!? あの団長が一度もッ!?」

 団長「ああ。君達でも、奴に勝つことは出来ないだろう。他の騎士達でも。というより、おとぎ騎士団の全員で天才騎士に挑んだとしても、果たして勝つ見込みがあるのか検討もつかない」

 弓騎士「それは……流石に言い過ぎなのでは? 僕達は仮にも、王国最強の騎士団、おとぎ騎士団ですよ?」

 団長「弓騎士もさっき言っただろう。『一騎当千』何だよ奴は。読んで字の如く、な。少なくとも、俺は奴以上に強い人間を他に見たことがない」

 聖騎士「信じられません! しかし、団長殿がそこまで認める相手です。我々の想像を超えるお方なのでしょう」

 団長「ああ。本当に強い、強さだけが特別な奴だったよ」

 女騎士「……………………」


 四騎士は、団長の話を静かに聞き、そして語られる天才騎士のことを思い浮かべました。

 英雄。最強。伝説の男。

 国民から流される噂では、天才騎士は国民から認められる最高の騎士です。

 しかし、他の3人の騎士が想像を膨らませる中で、女騎士だけはそんな天才騎士を妄想から切り捨てました。


 女騎士(くだらない、何が最強の騎士だ。英雄? 伝説? そんなもの真実なものか。そもそも、奴は今や国際指名手配されている犯罪者なんだ。そうだ、悪党なんだ。噂ばかりが膨張して作られた架空の存在だ。実際に会えば真っ当な人間であるはずがない。…………そうだ。私の父親代りとも呼べる団長を、こんな顔にしてしまう奴などロクな男であるはずがないんだッ!)


 女騎士は、天才騎士をそう断じたのです。団長のため。自分のため。

 そして、そう感じていると、彼女の中に天才騎士に対する敵意がふつふつと湧いてきました。


 女騎士(天才騎士は私が捕らえる!! どんな相手だろうと必ずこの手で!! だから…………)

 女騎士「安心してください団長! 我々は騎士です! どんな時でも誰が相手でも、絶対に背を向けません! 負けはしません! 正義の心がある限り!!」

 団長「女騎士?」

 女騎士「さあ行くぞ3人とも!! 今から稽古を始める!! 各自剣を構えよッ!!」

 弓騎士「えぇ〜まだサプリメント飲んでないんですけど……」

 女騎士「丸腰で挑むとは良い度胸だ! ならば早速打ち込むとしよう。行くぞッ!!」

 弓騎士「ああッ! わかりましたよ! すぐ支度しますから!!」


 昼食も程々に終えた騎士達は、女騎士の号令の下稽古を始めます。その時間の女騎士の気迫は、真に迫っていた後に3人は語ります。

 そんな四騎士の様子を見て、団長は1人感傷に浸ります。


 団長(……本当に立派に育ってくれた、四騎士よ。もし、君達があの男に会う時が来たならその時はどうか俺の願いを叶えて欲しい。俺が奴に果たすことができなかった後悔の念を、奴に打ち込んで欲しいんだ)


 そう思いを巡らせて、団長は四騎士の稽古を尻目に、静かにその場を去るのでした。

 次回、第10話「狩人という男」。ご期待ください。

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