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ああ、赤ずきんちゃん。  作者: 極大級マイソン
第4章【三匹の子ブタ(仮)編】
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第6話「赤ずきんちゃんと巨大な悪」

 赤ずきんは今、窮地に立たされていました。このままでは狩人のおじさんに酷い目に合わされることは目に見えています。

 しかしこの場を離れようにも、赤ずきんはジュウガミを拘束している格好で身動きがとれませんでした。


 赤ずきん「ジュウガミさん! 絶対に動かないって約束してね! さもないと私は貴方の脚を折る!!」

 ジュウガミ「物騒なガキだなお前! これだからあの家系は油断ならねえんだ」

 ヘンゼル「何を甘いこと言ってるんだ赤ずきん! 殺れ!! もしくは首を折れ!!」

 ジュウガミ「あっちはもっと物騒だしな! ああ、わかったよ! 逃げねえ、逃げねえから!!」


 ジュウガミがそう叫ぶと、赤ずきんは組み敷いていた格好から立ち上がり、若い狼を解放した。すると、ジュウガミは高速が解かれるや否や、バッと勢いよくその場を離れます。


 赤ずきん「あ、このっ!」

 ジュウガミ「ギャッハハハハ!! 逃げないなんて嘘に決まってるだろうが!! このまま逃げ切って----

 狩人「逃すか」

 ジュウガミ「プギャアッ!!」


 いつの間に近づいたのか。狩人は油断しているジュウガミの脇腹を思い切り蹴飛ばしました。ジュウガミは、軽々と吹き飛びます。

 そしてその後、狩人はジュウガミを一瞥してからすぐ近くの赤ずきんを羽交い締めします。

 赤ずきんは捕まりました。


 赤ずきん「は、離せぇ!!」

 狩人「アッハハハハ!! 遂に捕まえたぞ!!」

 ヘンゼル「うぉ!? あの異常に体重が重い赤ずきんを軽々とっ! 流石は師匠だぜ!!」

 赤ずきん「誰が重い女だコラァッッ!!」

 グレーテル「しかしマズイぞヘンゼル。このままだと先生が名状し難い犯罪者となり、赤ずきんはその被害者となってしまう」

 ヘンゼル「インタビューされた際の台詞。『いつかやるとは思っていました。ええ、根は優しい人なのですが……』」

 グレーテル「洒落になってないな。2人の人生が大きく狂ってしまうぞ」

 ヘンゼル「せめて俺達まで被害が及ばないように、今から手を回しておこうか」

 赤ずきん「貴方達……」


 何てドライな。一体、何を経験したらこんな少年少女が、非情とも言える冷酷な判断が咄嗟にできるのだろうか。

 赤ずきんは、自分の現状よりも双子の今後が心配になりました。


 狩人「……さてと。赤ずきんちゃんも捕まえたことだし、後はそこの狼をぶっ殺して終いだな」

 ジュウガミ「なにぃ!?」

 狩人「こいつ、さっきから赤ずきんちゃんに組み敷かれるなんていう羨まけしからん目に合っていたし、ムカついたからぶっ殺す」

 赤ずきん「割と狩人のおじさんにもやってると思うけど……」


 しかし、そんな事は関係ないとばかりに、狩人はジュウガミに近づいていきます。


 ジュウガミ「くっ、仕方ない! 予定よりもだいぶ早いが、問題ない。今こそ、封印されし伝説の【ロード】を解き放つ時!!」

 赤ずきん「ロード?」

 ジュウガミ「くくくっ。赤ずきん、俺達がお前の家を破壊した時点で、俺たちの目的は達成されていたんだよ。ギャッハハハハハハハ!!」


 そう言うと、ジュウガミは一目散に逃げ出していきます。


 ヘンゼル「おい、逃げたぞ!」

 狩人「俺から逃げ切れるとでも……うん?」


 その途端、突如として複数の狼が狩人の前に現れました。例のケルベロスがやられたのを知って戻ってきた狼達が、ジュウガミを逃がそうと集まったのです。


 狩人「何故そこまであの狼を……いや、それ以外の目的があるのか? 何にしてもこんな奴ら、10秒あれば蹴散らせるぜ!」


 宣言通りでした。狩人は獰猛な狼の集団を物ともせず、両腕が塞がった状態でも構わず、足を使って狼達を文字通り蹴散らしました。


 グレーテル「もう、ただの狼相手じゃあ剣を使う必要もないんだな」

 狩人「……しかし、10秒足止めされたな」

 ヘンゼル「ジュウガミは、どっか行っちゃいましたね」

 狩人「まあ、あんな狼のことなんぞどうでもいい。それよりも俺は、赤ずきんちゃんと甘い蜜月を…………って、あああァッ!!」

 ヘンゼル「どうしたんです師匠? そんなに慌てて」

 グレーテル「あっ、ヘンゼル! 赤ずきんを見てみろ」

 ヘンゼル「こ、これは!」


 3人は、狩人の腕に羽交い締めされた、赤ずきんの様子を確認します。しかし、そこに居たのは、赤ずきんではありませんでした。


 狩人「しまった! これは、『赤ずきんちゃん人形』だ!」

 ヘンゼル「なんすかそれ?」

 狩人「赤ずきんちゃんが、敵から身を守る時に使う回避道具だ。この人形を盾に身代わりをして、相手が人形に集中している間に逃亡する。俺も、この人形には何度も煮え湯を飲まされたぜ」

 グレーテル「何度も引っかかっているなら対策とかしとけよ」

 狩人「くっ、まだそう遠くまでは行っていないはずだ。ヘンゼル、グレーテル、俺は赤ずきんちゃんを探しに行くぞ!」

 ヘンゼル&グレーテル『行ってらっしゃ〜い』


 狩人はその場を去ります。ビューっと風のように走り出したかと思うと、あっという間に姿が見えなくなりました。

 残ったのは双子だけです。


 ヘンゼル「……さて、俺達はどうしようか?」

 グレーテル「赤ずきんを裏切っちゃったしな。あのお菓子の家は貰えなくなってしまったな」

 ヘンゼル「ああ、そうだった。……勿体無いことをした」

 グレーテル「でも取り敢えず、脅威は無くなったし、私達も家へ戻るか?」

 ヘンゼル「…………いや、待てグレーテル。今この場には、誰も居ないんだよな? ということは、この辺の住宅は空き家になっているというわけだ」

 グレーテル「ヘンゼル、お前………………最高なことを思いつくな!」


 そうと決まれば、双子は早速行動に移ります。

 双子は取り敢えず、近くにあるジュウガミの家を覗こうとします。ジュウガミの家は、洞穴のようになっていて扉は無く、洞穴の奥は薄暗くてよく見えません。詳しく調べるには中へ入らならないでしょう。


 ヘンゼル「先頭は任せろ」

 グレーテル「大丈夫か?」

 ヘンゼル「いざとなったら逃げればいいさ。グレーテルは、後ろの方を注意してくれ」

 グレーテル「わかった」


 それでは、双子はジュウガミの家の奥を探索します。若き狼の住処には何があるのか?

 次回、最終話「赤ずきんちゃんの空は赤い」。ご期待ください。

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