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ああ、赤ずきんちゃん。  作者: 極大級マイソン
第3章【ヘンゼルとグレーテル(仮)編】
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最終話「赤ずきんちゃんの手料理」

 こうして、若干予定外の人も集まる形にはなりましたが、たくさんの人達と共に赤ずきんの家でパーティを開く事になりました。普段もの寂しい森の中でこれだけ大勢の人が集まることは滅多に無かったので、赤ずきんは大喜びです。

 そして、無事家に戻ることが出来た赤ずきんは、キッチンで料理を作っている真っ最中でした。


 赤ずきん「うーん………………よしっ!」

 白雪姫「赤ずきんさん、料理は出来ましたか?」

 赤ずきん「ええ、ばっちり出来上がったわ! これが私の……アップルパイ!」

 ヘンゼル「結局アップルパイかよ!? 他に食材が山ほどあるんだからそれを使えよ!」


 ヘンゼルはテーブルに置かれた山盛りの食材を指差しながら言います。そこには赤ずきんと白雪姫が見つけた木ノ実やきのこに、オオカミが捕まえた熊の肉、それから双子が採った木ノ実やウサギの肉に、狩人が持っていた青い木ノ実、さらには魔女のおばさんが大量に用意した"お菓子の素"が積まれています。

 そして双子の妹、グレーテルは自分が捕まえたウサギの肉をじっと見つめています。


 グレーテル「……肉はすぐ腐るから、作るなら早くした方がいいぞ」

 赤ずきん「よし、焼こう。そして焼肉のたれをかける」

 ヘンゼル「結局それなのかよ!? 俺達が作るときと変わんねえ!!」

 赤ずきん「焼肉のたれは、持参済みよ」


 そう言って、赤ずきんがフライパンにウサギの肉を乗っけてジュウジュウ焼いている一方で、白雪姫は包丁を使って食材をトントンと小気味良く切り分けていました。


 オオカミ「へぇー白雪姫はなかなか手際が良いね」

 白雪姫「お城の料理人に、料理を教わったことがあるので……」

 オオカミ「なるほど。……ぼくの方も大体は終えたかな。熊肉を使ったステーキだ!」

 赤ずきん「おぉ〜!」

 ヘンゼル「……なんか、そっちの方が旨そうだな」

 オオカミ「まあ、味付けや調理法は狼基準だから、人間の君らには合わないかもしれないけどね」

 ヘンゼル「どれどれ…………! うっ、なんだこの肉、固え!!」

 グレーテル「ヘンゼル、つまみ食いは厳禁だぞ」


 一方その頃、狩人と魔女の熟年グループはというと……。


 狩人「……おい婆さん。アンタが鍋に入れているその紫色の液体はなんだ?」

 魔女「ひっひっひ、なぁに怪しい物じゃないよ。ただのきのこシチューさぁ」

 狩人「そんな色合いのきのこシチューは初めて見たよ。何か変な色のきのこも入ってるし……」

 魔女「そう言うアンタこそ、目盛りも盛り付けも雑だねえ。皿を見ただけで食欲が失せるよ」

 狩人「料理なんて胃袋に入ればおんなじさ。こんなの適当で良いんだよ適当で」

 魔女「そうかい。……しかし、アンタが使っているそのきのこは見たことが無い代物だねえ。一体なんて言うきのこなんだい?」

 狩人「いや、俺も名前は知らん。ただこのきのこを食べると、妙に精力が湧いてくるんだよ」


 --怪しい人達が怪しい物を作っている様子でした。


 オオカミ「……しかし、今日は赤ずきんちゃんのご両親は出掛けてるんだね」

 赤ずきん「うん。2人とも町に行ってて、明後日まで帰らないの。まあいつものことね。……だけど白雪姫が来てから退屈しなくなったし、ママやパパが居なくても毎日が楽しいわ! お話しする相手も見つかったから、もう独りで木目と話すことも、小石と話すことも無くなったのよね」

 オオカミ「そうか、それは良かった」

 赤ずきん「……実は少し寂しくもあるのよね、私の長年の話し相手だったから……。あっ、でもリンゴと川のせせらぎとは今でも毎日お喋りしてるわ」

 オオカミ「……そうか」


 オオカミは、赤ずきんがリンゴと1人で会話している光景を思い写してみました。そしてその様子を横から眺めている白雪姫。

 ……オオカミは、2人の友情に亀裂が走らないことを、そっと祈りました。

 そんなこんなで、赤ずきん達はたくさんの食材を使って料理し、それらの品をテーブルに並べます。

 そして赤ずきん、オオカミ、白雪姫、ヘンデル、グレーテル、狩人、魔女はテーブルの席に着き、手を合わせて一緒に合図をします。


 赤ずきん「それでは皆さん、手を合わせて〜!」

 皆んな『いただきます!』


 赤ずきん家で、パーティが始まります。


 ヘンデル「って、甘ェェェェェェッッ!!?!」

 グレーテル「……ヘンデル、何故最初に魔女のきのこシチューを口にしたし」

 ヘンデル「いや、男は度胸だと思って……。ていうか、何だよこのシチュー甘過ぎるぞ?」

 魔女「ひひひ、それは牛乳の代わりに"お菓子の素"を入れた特製品だよぉ〜?」

 ヘンデル「道理で甘い訳だ……。しかし何でそんな物を……」

 魔女「私は甘党なんだ」

 グレーテル「……そう」

 魔女「因みに、あのお菓子の家もこの素を使って作ったのさ」

 ヘンデル「聴きそびれてたんだけどさ、おばさんはどうしてあんな場所にお菓子の家なんて建てたんだ?」

 魔女「ヒョッホッホ!! 最初に言ったはずだよ。……只、君達と一緒に遊びたかっただけなのさぁ〜」

 ヘンデル&グレーテル(本当かなぁ……)


 赤ずきん「はい、白雪姫。あ〜ん」

 白雪姫「あ、あ〜ん…………」

 赤ずきん「おいしい? おいしい?」

 白雪姫「……はい。とってもおいしいです」

 赤ずきん「ふふ〜ん、良かった♪」

 白雪姫「えへへ」

 赤ずきん「じゃあ次交代! 白雪姫が私に『あ〜ん』して?」

 白雪姫「え。は、はい! えーっと、アップルパイの生地をこうやって掴んで……!」

 赤ずきん「あははっ、白雪姫落ち着いて。手がすごく震えてるよ」

 白雪姫「あ、あ〜ん」

 赤ずきん「あ〜ん♪ うん、おいしい! リンゴの果肉とサックリとしたパイ生地が織り成す絶妙なハーモニー!」

 白雪姫「よ、良かったです。……このアップルパイを作ったの、赤ずきんさんですけどね」

 赤ずきん「白雪姫に食べさせたもらったから2倍おいしいのっ! もぐもぐ。……あっ、白雪姫。口元にリンゴが付いてるよ。取ってあげるね」

 白雪姫「あ、ありがとうございます」

 赤ずきん「あ〜ん♪」

 白雪姫「ちょ、赤ずきんさん!? 私の口に付いたアップルパイまで食べないでください、人前ですよ!?」

 グレーテル(……人前じゃなかったら良いのかな?)


 オオカミ「もぐもぐもぐ……」

 狩人「それにしてもオオカミ。アンタよく人間だらけの場所に溶け込めるよなぁ」

 オオカミ「これまで築いてきた信用のおかげさ。逆に貴方の方こそ、ここに誘われるなんてぼくはビックリ何だけど」

 狩人「ふっ……。女ってのはな、積極的な男に惹かれるもんなのさ」

 オオカミ「それはある意味真実だけど、今回の場合は適用されないと思うんだ」

 狩人「素直になれないあの子もまた可愛い……」

 オオカミ「お医者さんに診てもらうことをおすすめするよ。……おや、狩人さんの飲んでるスープに入ってるそのきのこは……」

 狩人「お、何だよオオカミこれ何なのか知ってるのか? 俺知らずに食ってるんだけどさ」

 オオカミ「……それ、食べられないきのこだよ? 木の幹みたいに堅いきのこのはずなんだけど、よく噛んで飲み込めるね」

 狩人「腹に入ればみんな同じだ」

 オオカミ「そういう問題? ……因みにこのきのこは『カコウタケ』って言って、食用ではなく道具として使われるきのこだよ」

 狩人「ふ〜ん。まあ俺以外にこのスープに手を出してる奴はいないから問題無いだろう」

 オオカミ「う〜〜ん……」


 ……さて、そうやってしばらくの間皆がご馳走に舌鼓を打っていると、

 赤ずきんは、家の窓の外に、チラリと人影が見えたことに気がつきました。


 赤ずきん「んっ?」

 オオカミ「どうしたの?」

 赤ずきん「いや、さっき外で人影が……」

 オオカミ「また狩人さんがストーキングしてるんじゃない?」

 狩人「ここに居るんだが」

 オオカミ「じゃあ魔女さんが怪しい実験を……」

 魔女「ここに居るよ。ヒィッヒッヒ〜!」

 ヘンデル「なら誰だよ?」

 グレーテル「この森に人がいること自体珍しいんだけどな。本当に人影だったのか?」

 赤ずきん「ん〜、分かんない。でも何かが居たと思う、私の視力は6.5あるから」

 グレーテル「新設定!?」

 ヘンデル「よし、そういう事なら俺が見に行ってやるよ」

 グレーテル「ナチュラルに死亡フラグを立てるな。私もついていく」

 ヘンデル「いや、グレーテルは家の中に居てくれ。代わりに師匠、一緒についてきてください」

 狩人「えっ、やだよ」

 赤ずきん「じゃあ私がついていく」

 狩人「赤ずきんちゃんが行くなら俺も行く」

 グレーテル「おい」

 オオカミ「子供2人と変質者1人は危ないから、ぼくもついて行くよ」

 赤ずきん「ありがとう。白雪姫は、家の中で待っていてね」

 白雪姫「は、はい。お気をつけて」


 そういう訳で、赤ずきん、オオカミ、ヘンデル、狩人の4人は出入り口の扉を開き、家を出ました。しかし、家の周囲やその近くを探してみても、怪しい人影と思しき人物は見当たりませんでした。


 赤ずきん「う〜ん、居ないね。気のせいだったのかな?」

 ヘンデル「まあ、居ないならそれに越したことはないだろう」

 オオカミ「そうだね。じゃあ念のため僕はもう少しこの辺りを探すから、二人は先に戻っていてもいいよ」


 そうして、オオカミに言われるまま2人が家の中へ戻ろうとしたその時、狩人がふと上を見上げて呟きました。


 狩人「おや、何だ赤ずきんちゃん。俺が知らないうちに自宅をリフォームしてたんだな」

 赤ずきん「リフォーム?」

 狩人「ほらあれ」


 狩人が指差した方向を、赤ずきんも見上げます。

 そこには赤ずきんの家の屋根に、大量の赤色のきのこが生えていました。いったいいつ生えていたのでしょうか? そんなきのこが自分家の屋根に生えていたことに、赤ずきんは今まで全く気づいていなかったのです。


 赤ずきん「ああ本当ね。きのこが生えてるわ、全然気がつかなかった。ねえねえ2人共、あそこ見てよ」


 そう言って、赤ずきんはオオカミとヘンデルにも屋根の様子を見せようと指差します。


 オオカミ「なっ!? あれは……!」

 ヘンデル「どうしたオオカミ、そんなあからさまに驚いた顔をして」

 オオカミ「ううん……。皆んな、あれは『カコウタケ』って言うんだ。さっき狩人さんには説明したよね?」

 狩人「ああ言ってたな。本来は食用じゃなくて道具として使われる物だとか何とか」

 オオカミ「そう。このきのこはね、ものを燃やす時に使われる"可燃性"のきのこなんだ。大昔はこのきのこを使って、文明をより築き上げてきたと言われている、当時の人達の必需品だったんだ」

 赤ずきん「ふんふん。それで?」

 オオカミ「このきのこは優れた機能だけでなく、危険な特徴も同時に備えているんだ。一定時間の間陽の光に当て続けると、自動的に発火、もしくは大爆発を起こすという特徴がね」

 ヘンデル「ふぅん……………………んんっ!?」


 そう、きのこがあるのは屋根の上。そして、今日の陽射しは鬱蒼とした森の中でも陽が届くサンサンの太陽。カコウタケにもたっぷりと陽の光が当たっていることでしょう。


 赤ずきん「た、大変!!」


 赤ずきんが駆け出します。少女は家の扉を開け、そのまま中へ入っていきました。

 その直後、




 ドカァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーンッッッッ!!!!!!! …………と。

 森全体を大きく揺らす、大爆発が起こりました。




 でめたしでめたし?

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