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ああ、赤ずきんちゃん。  作者: 極大級マイソン
第3章【ヘンゼルとグレーテル(仮)編】
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第2話「赤ずきんちゃんとお菓子の家」

ヘンゼル「はぁ〜まともな食事かぁ〜楽しみだなぁ〜♪」

赤ずきん「ついさっきまで焼いときゃ食えるって言っていた奴の台詞とは思えないわね」

グレーテル「ヘンゼル、口元からヨダレが垂れてるぞ」


グレーテルはヘンゼルに忠告します。しかしそのグレーテル自身も、いつもより幾分か楽しそうな表情をしているな、と赤ずきんは思いました。


赤ずきん「2人とも、嬉しそうで何より。誘った甲斐があったわね!」

ヘンゼル「それにしても赤ずきんが料理出来るとは意外だったな。そんな感じ全然しないのに」

赤ずきん「失礼ねヘンゼル。これでも森に長〜く住んでるから、暇潰しにある程度の料理をママやお婆ちゃんから教わっているわ」

グレーテル「因みに、今回は何を作るつもりなんだ?」

赤ずきん「アップルパイ」

ヘンゼル「おい、どこにリンゴがあるんだよ!? 小麦粉は!? 砂糖は!?」

赤ずきん「材料は全て家に準備してあるから問題ないわ」

ヘンゼル「何のための狩りだったんだよ!?」


ヘンゼル「……あと聞きたいんだけどさ。オオカミって、料理するのか?」

オオカミ「うん、ぼくも赤ずきん達の料理には参加するつもりだけど。只味付けが人間の君達とは異なる部分もあるから、皆んなとは別々に作ることになるけど」

ヘンゼル「なるほど。ドッグフードって訳か」

オオカミ「……その発言は、狼に対して侮辱として捉えられることもあるから注意した方が良いよ」

ヘンゼル「そうなのか?」

オオカミ「ぼくは良いけど、他の狼達が『狼の料理はドッグフード』って聞いたら、まあ間違いなく襲われて喰い殺されるだろうね。大概の狼は気性が荒いから」

ヘンゼル「ウゲッ!? ……気をつけよう」


グレーテル「あと私からも一つ。白雪姫はどうしてこの森に住むことになったんだ? 」

グレーテル(……まあ、大体の予想はつくがな)

白雪姫「……私は、義理の母であるお后様に捨てられたんです。お父様や国民の方達は、私は行方不明になっている、という事になっているそうですが」

グレーテル(やっぱりこの人、良いとこのお嬢様なんだな)

グレーテル「まあそんなところだと思ったよ。かくいう私達も捨てられた口だしな」

白雪姫「そうなのですか?」

グレーテル「ああ、ウチは貧乏だったからな。子供2人を養う金なんて無かったんだろうさ。まっ、幸いこの森は食べ物も豊富で、狩りをしてれば食いぶちに困ることは無いから助かってはいるがな」

ヘンゼル「でも偶には町の食事がしたい。コーンスープが飲みたい」

グレーテル「……その、こんな事を聞くのは野暮だと分かってはいるが。元の家に戻りたいとかって、考えたことはあるのか?」

ヘンゼル「本当に野暮だなグレーテル」

グレーテル「うっさい」

白雪姫「えっと、時々家族のことを思い出したりします。お父様やお兄様、亡くなってしまったお母様のこと。……また会いたいと、考えたことは何度もありますね」

グレーテル「…………」

白雪姫「でも、今は赤ずきんさんも居ますし、他の方達も皆すごく優しいので寂しくありません」

グレーテル「…………そうか」


それを聞いて、グレーテルは儚げに苦笑します。

一方で、赤ずきんはまたいつものように白雪姫に抱きつきました。


赤ずきん「そうそう、寂しくなんてないわよ! 白雪姫には私がついてるんだから!」

白雪姫「は、はい……。赤ずきんさんが居てくれれば、……私は、他に何もいりませんから……(ポッ)」

グレーテル「……………………そ、そうか」


グレーテルは、『苦笑』とは別の『苦笑い』を浮かべました。

……何故でしょう。グレーテルは、先程まで赤ずきんと白雪姫が親しい友人関係に見えましたが、どこかソレとは違う感情が渦巻いているような気がしました。


ヘンゼル「おぉ、仲が良いんだな。俺達も同じ捨てられっ子として頑張んねえとな、グレーテル!」

グレーテル「おい! あの2人と私達を同じカテゴリーに入れるなよ!?」

ヘンゼル「え!? ……な、何でだ?」

グレーテル「……ああ、いや別に」


グレーテルは何だか居た堪れなくなり、プイッとそっぽを向きます。

さて、5人がそうやって帰り道をひらすら歩いていると、道中に見慣れないものがある事に気がつきます。


赤ずきん「おや、あれは……」


皆は気付きます。

それは、カラフルな家でした。鬱蒼と木々が生い茂る森の中では違和感しか覚えない、まるで『童話』に出て来そうなメルヘン感あふれるお家。

よく見るとその家は、全てお菓子で出来ていました。壁はクッキー、扉はチョコレート、窓は砂糖、屋根は瓦煎餅(かわらせんべい)

そう、それはまさに『お菓子の家』。全てがお菓子で作られた家が、帰り道のど真ん中に建っていることに、5人が気がつきました。


白雪姫「……朝、この道を通ったときは、このようなお家は無かったはずですが。……うん?」


白雪姫が訝しげにお菓子の家を眺めていると、突然その家の扉が開かれました。

そこから現れたのは魔女でした。彼女はゆっくりとした動作で扉を押して、外へと出て来ます。


魔女「やあやあこれはこれは君達。こんな場所で会うなんて奇遇じゃないかい……」

ヘンゼル「……どう考えても意図的としか思えない場所に建ってるけどな」

魔女「ひゃっはっはっは!!」


魔女は気味悪く笑い出します。

この見るからに怪しい人物の登場に、ヘンゼルはげんなりとした表情を浮かべました。

そうして、魔女はひとしきり大笑いした後、不意に5人をじっと凝視し始めます。


魔女「それじゃあ、早速君達には私のなぞなぞを解いてもらおうかねえ」

赤ずきん「わーい、なぞなぞ大好き〜!」


赤ずきんは両手を挙げて大喜びです。

しかし他の4人は「いやいやいやいやっ!」と慌てた様子で魔女に突っかかります。


オオカミ「ちょっと待って脈絡が無さ過ぎるでしょう! どうしてそんな話になったのさ!?」

ヘンゼル「そうだ! 何で俺達がおばさんのなぞなぞを解かなくちゃならないんだ!」

グレーテル「そうそう! アンタは大釜で『ねるね○ねる○』でも作ってろおばさん!」


双子達はそれぞれ叫びます。双子にとって魔女はどうやらあまり印象は良くない様子です。


魔女「ひひひ、まあまあそう怖い顔しなさんな。私は只、君達と一緒に遊びたいだけなんだからさぁ〜」

赤ずきん「そうだよ皆んな。魔女のおばさんは良い人だよ」

オオカミ「いや、赤ずきんちゃん。よく言うだろう、"人は見た目が9割"って。こんな見るからに怪しい人とは迂闊に話さない方が身のためさ。特に、君みたいな小さな女の子はね」


白雪姫(……まあ、オオカミさんも見た目は怪しいですけどね)

ヘンゼル(オオカミも十分怪しいだろう)

グレーテル(オオカミはヤバい)

心の中で、3人がそのようなことを思っていました。


赤ずきん「もう、オオカミさんだって見た目は怖いじゃない! でも本当は良い人だし、私はすっごく信頼してる! だから魔女のおばさんも良い人だって信頼してるのに、どうしてオオカミさんは魔女さんに酷いこと言うの!? 」


赤ずきんは正直でした。至極正論を言われたオオカミは少したじろいでしまいます。

そして魔女はその様子を眺めながら、にやぁぁっと笑い出しました。


魔女「まあまあ喧嘩は止しなさいな御二方。赤ずきんちゃん、私は怖がられるのに慣れている。だから君が気にするような事じゃあないんだよ?」

赤ずきん「でも……」

魔女「そうだねぇ。……只一つだけ、君が私の望みを叶えてくれるって言うのなら、私がこれからお題する『3つのなぞなぞ』に挑戦して欲しいんだけど。……どうだい、やってはくれるかい?」

赤ずきん「お安い御用よ! ねえ、白雪姫も一緒にやるでしょう!?」

白雪姫「わ、私は、赤ずきんさんがやるのなら……」

ヘンゼル「……まあ、それくらいなら特に害は無いか」

グレーテル「サッサと済ませよう」

オオカミ「皆んながやるのなら、ぼくも協力するよ」


結局、赤ずきんの主導の元、5人は魔女のなぞなぞに挑戦することになりました。

魔女は「ひゃっはっはっは!!」と嬉しそうに笑い出します。


魔女「よぉし。それでは皆の了承も得たところだし、早速"魔女のなぞなぞ試練"を始めようかぁ〜!」

ヘンゼル「何の試練なんだよ……」

魔女「もし、全問正解が出来たのなら、特別にこの『お菓子の家』を君らに譲ってやろうじゃないか」

赤ずきん「おぉ〜! じゃあ私、頑張るね!」

白雪姫「ファイトです、赤ずきんさん」

グレーテル「……何か嫌な予感するな」

オオカミ「まあ、ここまできたらやるしか無いか」


そして赤ずきんを除く4人は、幾ばくかの不安を抱えながらも、魔女の試練を受けるのでした。


次回、第3話「赤ずきんちゃんと魔女の試練(前編)」。ご期待ください。

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