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ああ、赤ずきんちゃん。  作者: 極大級マイソン
第2章【白雪姫(仮)編】
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最終話「赤ずきんちゃんと祝福の鐘」

 白雪姫「う、う〜〜ん……」


 暖かい布団の中で、白雪姫は目を覚ましました。


 白雪姫「、、、あら? 私、確かお后様に毒の矢で……」

 赤ずきん「あ! 白雪姫が起きた!」

 白雪姫「赤ずきんさん?」


 白雪姫が隣を見ると、赤い頭巾がチャームポイントの少女、赤ずきんがベッドに付き添っているのに気がつきました。


 白雪姫「赤ずきんさん、私……わっぷ!」

 赤ずきん「あー良かった! 本当に良かったよぉ白雪姫〜!!」

 白雪姫「あか、赤ずきんさん! 苦しい、首が絞まってます。一度離れて……」

 赤ずきん「やっ!」

 白雪姫「あと、顔がすごく近い……! あの、離れて、顔が近いですから!」

 赤ずきん「やっ!」

 白雪姫「赤ずきんさん〜!」


 赤ずきんは離れません。白雪姫の体を強く強く抱き締めてピッタリとくっ付いています。

 結果的に10分くらいで離れてくれました。あと1分長く締められてたら白雪姫は再び死んでしまうところだったでしょう。


 白雪姫「あ、そうだ! 赤ずきんさん、私お后様に毒の矢で殺されたはずなのですが、どうしてまだ生きてるのでしょうか?」

 赤ずきん「ああそれね」


 白雪姫の問いに答えるために、赤ずきんはテーブルに置かれたリンゴを白雪姫に見せました。

 それは黄金のリンゴでした。その黄金のリンゴは、きらきらと金色に光り輝き、端っこが少し齧られていました。


 赤ずきん「このリンゴを白雪姫に食べさせたの! 永遠の命を与える黄金のリンゴなら、死んだ白雪姫も生き返ると思ったのよ!」

 白雪姫「そ、そうなんですか……」

 赤ずきん「だけど白雪姫、なかなかリンゴを食べてくれなかったのよ? まあ死んでしまったから口を開かなくて当然なんだけど、あの時は本当に困ったわ。しかもリンゴが固くて上手く齧ってくれないし、もう仕方ないから強硬手段をするしかなかったわ」

 白雪姫「強硬手段?」

 赤ずきん「うん」


 白雪姫は、赤ずきんの言っていることが分からず首を傾げています。

 赤ずきんもそんな白雪姫の様子に気づいたようです。そして何を思ったのか、赤ずきんは白雪姫の顔を両手で添えて、白雪姫をじっと見つめ出しました。


 白雪姫「え、赤ずきん--


 白雪姫が動揺を浮かべます。そして、赤ずきんはそんな彼女にスッと自分の顔を近づけて。




 そのまま唇にキスをしました。




 白雪姫「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ッッッッ!!?!?!」

 赤ずきん「ぷはぁっ! ほら、こんな風に口でおわっとぉ!?」


 赤ずきんが唇を離すと、白雪姫は何かよく分からない言語を発しながらザザザッ!! とその場を後退り、ベッドから転げ落ちてもそのまま構わず後退りました。


 白雪姫「なななななななななななななななっっ!!!!」

 赤ずきん「な?」

 白雪姫「な…………………………………………な?」

 赤ずきん「あーだから、白雪姫死んじゃったから『口移し』で黄金のリンゴを食べさせたのよ」

 白雪姫「口移し……」

 赤ずきん「そう、つまりキス」

 白雪姫「キスゥ!?」

 赤ずきん「あわわ、白雪姫落ち着いてっ!」


 赤ずきんの『キス』という単語を聞いて、白雪姫は最早"茹で蛸"と相違ないくらい真っ赤に湯立ちまくってしまいました。彼女の顔からは冗談抜きで蒸気が発せられています。

 赤ずきんはそんな白雪姫を見て苦笑します。


 赤ずきん「うーんやっぱり、ちょっと無理やり過ぎたかなぁ。白雪姫に無断でしたのは悪いことしたと思うけど、私も他の方法が思いつかなかったっていうか……」

 白雪姫「あ、赤ずきんさん……」

 赤ずきん「その、ゴメンね。私とのキス……嫌だった?」

 白雪姫「…………!? わ、私は! 赤ずきんさんとの、キス………………」

 白雪姫「………………………………」


 白雪姫の心臓が強く高鳴っています。白雪姫は、赤ずきんの顔を見ることが出来ません。

 ……そして、白雪姫は俯いた状態で小さく、誰にも聞こえないくらい本当に小さな声で、赤ずきんに答えました。



 白雪姫「……嫌じゃ……なかった、です」



 その瞬間、赤ずきんの家の中で、

 何処からか『鐘』の音が鳴り響いた気がしました。


  ***


 そして次の日、白雪姫が森に来てから一週間が経ちました。

 赤ずきんの家で、2人の少女が体験したこれまでの経緯を聞きながら、オオカミは口笛を鳴らします。


 オオカミ「なるほどねぇ〜。ぼくが『森の小人と行こう! -7泊8日の鉱山採掘ツアー-』に参加している間にそんな事があったとは……」

 赤ずきん「うん! あれから私達、すっごく仲良くなったんだよ。ねー白雪姫?」

 白雪姫「は、はい!」


 赤ずきんがにこりと微笑むと、白雪姫は恥ずかしそうに頬を赤くしました。白雪姫は赤ずきんのすぐ隣に座っていて、赤ずきんの腕に絡みついてます。


 オオカミ「でもゴメンよ。君達が危ない時に側に居てあげられなくて」

 赤ずきん「気にしないでオオカミさん。それより、鉱山採掘ツアーは楽しかったかしら?」

 オオカミ「あれは違法で取引されるレアメタルの裏採掘作業だったよ。小人達はこの採掘作業の人員を増やすために、ツアーだと嘘を言って無報酬で参加者を手伝わせていたんだ。そう、ぼく達は小人達の犯罪行為にまんまと利用されていたってわけさ」

 赤ずきん「ほぉ」

 オオカミ「……ツアーの途中で小人達の企みにいち早く気付いたぼくは、ツアー中に親交を深めて来た仲間達と共に、小人達の悪事を止めようと結託したんだ。しかし、その裏にもっと大きな悪が潜んでいて……」

 赤ずきん「あーオオカミさん? その話の続きは今度にして。続きがすごく気になるけど私達これから用事があって……」

 オオカミ「ん? 赤ずきんちゃんがこういう体験談を聞かないなんて珍しいね。赤ずきんちゃん、冒険話大好きなのに」

 赤ずきん「まあね。でもあいにく、私達これから町に出るの。白雪姫の家具を揃えるためにね」

 オオカミ「ヘェ〜結局こっちに住むことになったんだ」

 白雪姫「……はい。他に行くあてもありませんから」

 オオカミ「……こんな事言うのも何だけど、この森本当に何も無いよ? お姫様としては、ちょっと退屈な場所なんじゃないかな」

 白雪姫「大丈夫です。ここの暮らしはお城より落ち着いてて、私は好きです。それに…………」

 オオカミ「それに?」


 その時、白雪姫は隣の赤ずきんをじっと見つめて、意を決して口を開きます。


 白雪姫「私……赤ずきんさんとなら、何処へだって一緒に居られますから!!」

 赤ずきん「うん! だって私達、とっても仲良しだもんね!」

 白雪姫「はいっ!!」


 赤ずきんと白雪姫は、共に顔を見合わせます。2人は満面の笑顔でした。

 オオカミはそんな少女達を見て、しみじみと感傷に浸っています。


 オオカミ|(……ようやく、赤ずきんちゃんにも仲の良い友達が出来たんだなぁ。良かった良かった)


 すると、家の外から赤ずきんのママの声がしてきます。


 ママ「赤ずきん、白雪姫、そろそろ町へ出かけるわよ〜!」

 赤ずきん「あ、はーい!」

 白雪姫「今行きますね」

 赤ずきん「それじゃあオオカミさん、また今度ね」

 オオカミ「うん、またね」


 そして赤ずきんと白雪姫はオオカミと別れ、ママと一緒に森の外へ出掛けます。

 2人の少女はお互いピッタリと手を繋ぎます。

 その様子は友達のような、姉妹のような、……恋人のような光景でした。


 赤ずきん「ねえ白雪姫? 私ね、貴女と出会えて本当に良かった!」

 白雪姫「わ、私も! 赤ずきんさんに出会えて……本当に良かったです!!」


 白雪姫は赤ずきんを見つめます。彼女はリンゴみたいに真っ赤な頭巾を被った、それはそれは可愛らしい少女でした。金色の髪と碧い瞳、ちょっとあざといけど小さくて可憐。それが、白雪姫のたった1人の、1番の友達でした。

 そして白雪姫は、口を開きます。




 白雪姫「大好きですよ、赤ずきんさん。貴女に出会えたこと、私は……一生忘れません!」




 その時、森を歩く少女達の頭上で、天使達がラッパを吹いたような気がしました。

 そして、その天使達に続いて鳴り響く鐘の音。

 その音は、まさに『祝福の鐘』。天使達が2人に贈った、幸福のセレモニーです。



 こうして白雪姫は、

 赤ずきんの家に住むこととなり、

 いつまでもいつまでも、

 幸せに暮らしましたとさ。



 めでたしめでたし。

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