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異世界ニートはブラック  作者: さむらい
7/10

ハンターハードワーク

ーーさて。

なんやかんやで街役場に就職してしまった俺、木嶋トウジ。

上司は言葉遣いだけやたら丁寧な、だが芯から腐りきった性格のドラゴン。

同僚は謎の巨大生物。一応俺の恩人?でもある。

そして先輩職員のーーー、



?「あのさぁ」


俺「はい?」



キマシタ。この人が俺の先輩である。



?「資料まとめといてって言ったじゃ〜ん? もちろんやってくれたんだよね?」


俺「やってません」(キリッ)



ド ゴ ォ !!


腹部に痛烈な蹴り。ジャストミートです、先輩。


俺「ゔぉえっ!?」


あかん。これはあかん。どう考えても致命傷です、内臓イッたんじゃない?


?「先輩がやれっつったんだからちゃんとやっとけよなぁ〜?」


俺「す、すみばせん…アーデルさん」


アーデル「アァん!?」


俺「ヒッ! ア、アーデルせんぱい…」



このキレッぷりである。どうやら『先輩』という事実に並々ならぬ執着があるようで、このように、呼び方ひとつで激昂する。とんでもねぇわ、この先輩。


俺「はぁ…」


なぜこんなことに…

最初は良かった。夢の異世界。最高だった。

一瞬だったけど。もうなんか、すぐ現実に戻されたようだったね、うん。


アーデル「まったく。だらしないなぁ、人間」


おい。それは下手したら種族差別だぞ。分かってんのか、パワハラ野郎。


アーデル「ん? なんか言いたいことでもあんの?」


ないです。なんでもナイです。ごめんなさい。



ーーこの世界には色々な種族がいる。

といっても、大別すれば3,4種ほどなのだが。


ガルドス「彼女は新人に厳しいんで、注意してくださいね」


おせえよ。そういうことは先に言うんだよ。


竜族。

このガルドスがそうだ。まあこの街に限って言えば、コイツしかいないんだけど。たまに卵パクってくるから、街の外には割といるみたい。


ガルドス「あくまで保護のためですよ。彼らは子育てを放棄することが多いですから、こちらで管理することも必要なのです」


ホントなのか怪しいトコだ。ていうか他のドラゴンはこいつみたいに理性的(いや、理性的か?)ではないってことか? 竜族の中にも色々種類があるのかもしれない。


俺「はぁ〜。ちょっと外行ってくる」


この時点で、面倒な種族がいっぱいってことはお分かりいただけただろう。


デカルス「ウ?」


俺「おう、デカルス」


こいつとは森で出会ったんだよな。魔獣から助けてもらったし。今の所唯一の癒しだ。

だが、種族ははっきりしていない。ガルドスは、『今まで見たことがない』と言っていた。

あいつ何でも知ってそうだったけど、そうでもないな。まだまだ謎の種族が存在してるってことかもしれんけど。怖っ。

…今まで通り俺の癒しであってくれ。



アーデル「おいゴラァ! 誰が休憩していいっつったよ!」


俺「ヒィッ」



そして先輩は鬼ーー

じゃなくて、獣人族。ここらでは最も人数の多い種族で、人間もここに含まれるらしい。人型って区別なのかな?


アーデル「ホラ、サッサと戻りな! 仕事だ仕事」


猫耳。長い尻尾。フワフワな毛並み。

ここだけ見ればカワイイのだが、肝心の性格がね。姐さんキャラっていうには見た目が子供っぽいし。


俺「はい…分かりました。戻ればいいんでしょ」


アーデル「あ?」


俺「」


どんなキャラなんだよ。怖いわぁ〜。



そんな種族に囲まれて、俺は働いている。

役場のメンバーはもう一人いるらしいのだが、今はこの4人。俺、ガルドス、デカルス、アーデルだ。深刻な人手不足である。(デカルスに至っては事務仕事不可能だし)



街の役人がこんだけしかいないってやばいだろ。

前も思ったけど、どんだけ人気ないのよ。というか街の人たちも便利屋かなんかと思ってるよね。

大抵お願いすればやってくれるみたいな。

お願いされる側に回って欲しいんですけど?

正直、俺なんて部外者なのに。まあ、そんなこと言ったら街から追い出されちまうしな〜。



民A「すみません。少しよろしいですか」


はい、キタコレ。便利屋案件ですね、分かります。


俺「なんでしょう?」


民A「最近気になってはいたのですが、このあたりって魔獣多すぎません?」


おっと…?


民A「それで、役人の皆様に討伐していただけないかな〜と」


俺「ハンターにお願いしてください」


便利屋どころじゃないね。役人づかい荒いわぁ〜、どう考えてもハンター案件なんですけど。俺それで死にかけてるんですけど。


俺「それは私らの仕事じゃないんで、別でお願いしてもらっt」


メ リ ィ ッ


アーデル「はい! 承りました。早急に対処させていただきます」


俺「うごごッ!がっ!?」


突然のアイアンクロー、爪刺さってます、先輩。


俺「ちょっ!? 痛い痛い痛い!離してェ!」


アーデル「おいお前、街の皆様に向かってナメた態度とってんじゃねェぞ」


もう辞めたい。


アーデル「よし。行ってこい」


俺「えっ」


アーデル「魔獣討伐だよ。話聞いてただろ」


俺「いや、アーデルさん…先輩は?」


アーデル「? あたしは行かないよ。そういう仕事じゃないし」


いや俺もそういう仕事じゃないんですけど。


アーデル「い い か ら 行 っ て こ い」


俺「…ひゃい」


どうやらまたこのパターンのようだ。いつか死ぬね。魔獣に殺されるか、先輩に殺されるか。

バッドエンドしかないぜ☆


ガルドス「私も同行しましょう」


!?


アーデル「ガルドスさん!? 別にコイツに行かせるからわざわざ」


ガルドス「いやいや、いいんですよ。気まぐれですから」


気まぐれかよ。一瞬やさしさに包まれそうだったのに。


ガルドス「…」


まあでも一緒に来てくれるんなら心強いのは確かだな。ドラゴンだし。


アーデル「じゃあ、あたしも行きます」


ガルドス「そうですか。では外にいる彼も連れて行きましょう。皆でかかったほうが効率的ですから」


先輩の豹変ぶりが怖い。ガルドスには弱いんだよな。


俺「デカルスも? そこまですんのか?」


ガルドス「まあ、たまにはいいんじゃないですか? 全員揃って仕事というのも」


アーデル「正確にはもう一人いますけどね。いつになったら帰ってくるのやら」


なんにせよ、これはイイ。俺一人で行かされたら死あるのみだからね。


ただーー

なぜ急にそんなことを言いだしたのだろう?


そんなことを思いながら、ハンター紛いの魔獣討伐作戦に向かうのだった。

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