契約ハードワーク
ーーさて、役場に戻ってきたわけだが。
ガルドス「いや、なんですか、この方?」
森から一緒に来たこのでっかいののことである。
俺「こいつはデカルス。でっかいからデカルス」
ガルドス「いや、そうじゃなくてね」
まあ確かに、こんなのがいきなり役場に来たらビビる。
さすがのドラゴンでもビビる。
なんせガルドスよりでっけーからね、この人。
ガルドス「一体何があったんです?どんな経緯でこんなことに」
俺「ほぅ? それを聞こうというのかね?」
あんな無理難題押し付けといて。
そういえばこのドラゴンには一言いっとかないといけませんねぇ。
俺「お前が認めるだか認めないだか言って押し付けた依頼のせいなんですけど? そのせいで死にかけて、この人に助けてもらって今に至るんですけど!?」
ガルドス「あ、いや、それは、そう…でしたね」
俺「あんなに魔獣いるとか聞いてないからね、何とかなるかな?とか思ってたよ、最初はね?」
最初はよかったんだよ、ワクワクしたよ。
俺「違った。多すぎだから。どう考えても。」
そう、魔獣が多すぎるの。
ありえないでしょ、素人よ?
しかもこの周辺に慣れてないって知った上だからね?
確信犯ですよ、許せないよぉ?
俺「もっとさぁ、あるでしょうよ、初心者向けの、新人向けのやつがさぁ!」
ガルドス「いやぁでも試練みたいなものですし」
ふざけろ
俺「だからぁ! 試練が厳しすぎィ! もっとマイルドに行けよ!」
ガルドス「この街の者と認めるか否かなのですからマイルドもクソもないと思うのですが…」
こいつやばくね?
ドラゴンってみんなこうなの?
他のドラゴンに会ったらボク殺めちゃいそう。竜・即・斬よ?
俺「はぁ…もういいよ。とりあえず無事帰ってこれたし。これで認めてくれるんだろ?」
ガルドス「ええ、もちろんです。では、こちらにサインを」
俺「はいはい」
サインね。
これでやっとこの街の一員ってことか。
先が思いやられるね。
ガルドス「はい、確かにいただきました」
俺「しかし、街に入れてもらうにも試験が必要だったりサインしたりで大変だよなぁ」
ガルドス「? いいえ、そんな必要はありませんよ?」
俺「は?」
今なんて?
必要ない?
俺「お前が必要だって言ったんじゃないのか?」
ガルドス「あ〜まぁ、あなたはこの辺りの人間ではないようでしたので、少しはチェックが必要でしたけど」
嫌な予感がするんだが?
ガルドス「街に入るために魔獣を倒したり、サインをしてもらう必要はありませんね」
俺「テメエエエエエエ!!」
うおおおあお!
こいつマジでハンパねえな、心ってもんがないのか?
デカルスが現れたおかげで今までの何倍もクソになってる上にさらにクソだぞ。
思いやりって知ってる?
…ん?
俺「街に入るためのサインはないんだよな? じゃあアレなんのサインだ?」
ガルドス「契約書です。死ぬまで働きますよっていう」
俺「テメエエエエエ!!」
やられました〜
このドラゴンにやられた〜
俺、ドラゴンってかっこいいし強いしで好きだったんだけどな〜、嫌いになっちゃう。
俺「おい待て、役場で働くようなことは言ったが、そんな悪質な契りを結んだ覚えはないんですが」
ガルドス「今結びましたね」
違えよ!
俺「その契約が問題なんだよ! いいか、俺はそんな契約なんぞ無視するからな!」
ガルドス「契約破棄となると、この街の法律で出禁ですけど」
俺「」
オイオイ、死ぬわ、俺。
契約書って怖いね。
働くって怖いね。
軽々しくするもんじゃないね。
デカルス「ウオゥ」ポンポン
デカルスが最後の支えだよ、もう。
こんな優しく頭をポンポンしてくれる。
何この癒し。ギャップ萌えの極致かな?
はぁ。
働かなきゃなんないのかな、とは思ったけど、こんな暗黒の契約を結ぶことになろうとは。
そもそも、こんな街さっさと出るつもりだったのに。
希望に満ち溢れた前回を返して欲しい。
ガルドス「では、改めて」
なんかここに来てから、どんどん死に近づいてる気がするよ。
ガルドス「アルザスへようこそ」
ホントに始まってしまう。
この異世界での、まさかのブラックワークが。
俺「どうしよ」
異世界は現実より現実だったよ。
タスケテ。