パーティーハードワーク
森の奥深く。
俺はアホみたいにデカイ毛だらけの生物と共にいた。ちょっとゴリラに似ている。
先程魔獣の群れを追い払って?くれたのだが、やはり危険だ。デカさがやべえ。
一歩間違えれば死、あるのみ。
どうやら今のところはトモダチ認定されてるみたい。
だが、そうだとしてもマズイ。
こんなサイズ差で友達。
身長差カップルとか、猛獣と暮らす老人とか、そういうレベルじゃない。
じゃれつかれたら死ぬんですけど?
俺「どうしよ…こんな深くまで来ちまったらウカツに動けないぞ」
魔獣の群れは一旦は退いたようだが、また襲ってくるかもしれない。
それに、こんな奥深くの未知の領域では、また何かとんでもない怪物が出てくるに違いない。
俺「今はアイツにあわせるしかないか。隙を見て逃げないと」
俺は今後のプランを固めた。
この場から逃げ出すのは危険だが、留まるほうがもっと危険だ。
何とかヤツの気をそらし、早急にオイトマせねばならない。
そして、肝心のでっかいのは何をしているかというと、
俺「…」
なんだろう。鍋?
グツグツと何かを煮込む音が聞こえる。
どうやら料理をしているようだ。なんかこの辺の奴ら、見た目は怪物じみてるのに変に人間っぽいな。
デカブツ「ウア♪」
完成したようだ。
それをこちらへ運んでくる。
俺「あ、あぁ俺に作ってくれたのか!サ、サンキュー」
なかなか良い香りだ。
ただ煮込んでいたように見えたが、割とうまそう。
俺「…コレ魔獣じゃん」
さっきの魔獣だった。
何を煮込んでるのか気になったが考えないようにしていた。
そういえば具材なんて魔獣くらいしかなかった。
魔獣の姿煮である。
こんなん食いたくないんだが。
でもせっかく作ってくれた料理を拒否なんてしたらどうなるか分からない。
俺「クッ…ぅう」
覚悟を決めて食らう。
そのままだから毛とかついてる。ついてるけど気にしちゃいけない。食わないと死ぬ。食うしかない。
柔らかな肉から肉汁が溢れ出す。
味付けとかしてあるのかよく分からないが、ジューシーなその肉は、
俺「うっま!」
メチャクチャうまかった。
ただ煮込んだだけ、しかも魔獣の肉である。
最悪な印象からは想像もできないくらいうまかった。
俺は夢中で魔獣を食った。思えばここに来てからまともに飯を食ってない。
いや、食ったかもしれんが、それを忘れるくらい衝撃的な食事だった。
デカブツ「ウハッウハッ♪」
でっかいのも俺の食べっぷりを見て喜んでいるようだ。
ていうか意外と友好的?
危険ではあるが、心優しい生物なのかもな。
俺「いやぁ〜うまかった!ありがとう、さっきといい、この料理といい助かったよ」
デカブツ「♪」
そういえば、デカブツなんて呼んでるけど、ちゃんとした名前はあるんだろうか?
一応しゃべれるみたいだし、名前もあるかもしれない。
俺「そういえばあんたの名前書いてなかった。なんて言うんだ?」
デカブツ「ナ、マエ?」
ん?
しゃべれはするが、名前は無いということなのだろうか。
一体どんな生物なんだ。この生物はどんな生態をもっているのだろう?
見たところ家族もいないようだ。
…こんなデカイのが群れで暮らしてたらハンパないな。
俺「そうか、名前は無いのか。じゃあ、そうだな」
デカブツ「?」
俺「あんたの名前はデカルス!これでどうだ?」
というか俺が勝手に名前つけちゃっていいのか?
なんて疑問がよぎったが、
デカルス「ウオオオ〜♪」
気に入ってくれたみたい。
奇妙な関係だな。
偶然に遭遇した、巨大な生物の名付け親とは。
俺「ハハッ!気に入ってくれたみたいで良かった!それじゃ、俺はこれで」
いい感じになったところで、帰ろう。
思ったより危険じゃないと分かったけど、早いとここの森から出ないと。
デカルス「ウオ」
ガ シ
俺「え」
背中を掴まれた。
アレ?ミスった?
死んじゃう?
デカルス「♪」
いや、違う。
森の外へと向かってる。
俺「送ってくれるのか?」
デカルス「オ〜ウ♪」
街まで送ってくれるご様子。
まぁ、一人で帰るより安全でいいか。
しかし、ホントにいいやつだな。デカくて怖いけど。あのドラゴンとは大違いだ。
クソドラゴンからの課題は帰りのついでに、デカルスが片付けてくれた。
強過ぎるんだよね、怖い。
足もとにはスプラッタが広がってるけど気にしない。
俺は初めての冒険?で初めての仲間?を得た。
この先、どんな生活が待っているんだろうか。
またアイツに無茶な要求をされるんだろうか。
だが、俺は何だかとっても明るい気分だった。
この世界も悪くないな。思ってた異世界とは違ったけど。
デッカイ仲間と共に、俺は今日を生き抜いた。
これからもなんとかなるだろう。
そう思える一日だった。