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V・W・G ~† リアルへの生還 †~   作者: 聖那
第二章 ~† 北の玄武洞 †~
9/19

ドラゴンの狙い

挿絵(By みてみん)


刹那達せつなたちがドラゴンと対峙たいじしている岸壁がんぺきよりも更に奥の方で、それほど強くはないがあかい光のようなものが立ち上るのを刹那せつなは見た。


〈・・何だろう・・〉


『どうやらこいつと戦ってた奴等は奥にいるようだな』


暗黒騎士にもあかい光のようなものが見えたのか、不思議に思っていた刹那せつなの思いにこたえるように、剣を正面に高く構え直しながらそうつぶやいた。


その時だった。刹那達せつなたちへ敵意をき出しにしていたドラゴンが振り返り、どす黒い憎悪ぞうおのような負の感情をあらわにするようにあかい光のした方を向かってにらみ叫んだ。


《あんなところに逃げ込んでやがったかクズ共め!次は逃がさんぞ!》


岸壁がんぺきの上で攻撃を繰り出していたドラゴンが、今にも飛び出しそうに両翼りょうよくを大きく広げ体勢たいせいを低く身構えた。


『こいつはまずいな。ドラゴンの奴、俺達から奥の奴等に標的を変えやがった』


ドラゴンの狙いが自分達から他へと移ったのを刹那せつなも感じた。それと同時に、今まで落ち着き払っていた暗黒騎士の言葉に焦りのようなものが含まれていたのを感じとれた。

ドラゴンが今にも飛び立とうとしているのを見て、刹那せつなは何も考えずに岸壁がんぺきへと走り始めた。


『行かせない!』

『待て!無理に突っ込むな!』


無策むさくでドラゴンに向かって走り出す刹那せつなを止めようと暗黒騎士は叫んだが、その声はむなしくあたりに響き渡った。

闇雲やみくもに自分に向かって走り寄る刹那せつなに、ドラゴンは右翼うよくを大きく振り下ろした。再びへびのようなうねった豪風ごうふう刹那せつなおそいかかり、その衝撃しょうげきをまともに喰らってしまった。


『くっ・・』


身体中の関節がバラバラになるようなきしむ音、露出ろしゅつした肌から血が吹き出す感覚、今まで経験したことのない激痛げきつう刹那せつなおそい、あっという間に数十メートル近く吹き飛ばされた。


『・・・!』

刹那せつなさん!』


ユナは痛む体を持ち上げ刹那せつなに走り寄った。刹那せつな露出ろしゅつした肌からはな血が止めどなく溢れだし、傷を回復させなければ命に関わる事は目に見えていた。教会のルールが怪しい今、事態じたい一刻いっこくを争う。


『い、今回復させるね』


〈ヒール〉


ユナはふるえの止まらない手を必死におさえ、刹那せつなの胸の上にロッドをかざした。

その状況を黙って見つめていた暗黒騎士は、キッとした激しい瞳でドラゴンをにらみ付け、固く握った剣のからはギシギシときしむ音が聞こえた。


刹那達せつなたちが中央広場で不気味な声を聞く45分前である。

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