聖召喚士ユナ
単独でダンジョンへ向かう者
パーティーを組んで向かう者達
広場にいた半数以上のプレイヤー達は、それぞれのレベルに合わせるようにダンジョンへと入っていった。
刹那は迷っていた。いや、正確には自分が感じる不安を消さない限り、ダンジョンへ足を踏み入れるべきではないと考えていた。
少し離れた木陰から穢れのない女神のような女性が物思いに耽る刹那を見つめていたが、意を決したように話しかけてきた。
『あの、すみません。』
声をかけられた方を振り返ると、真っ白なローブに身を包み、光輝くロッドを手にした女性が刹那に向かって微笑み近付いてきた。
その表情は幼さを残しながらも凛としたもので、不思議な魅力と全てを包み込むような優しく温かいオーラを含んでいた。
『もしかして刹那さん・・ですか?』
その神秘的な美しさに目を奪われながらも刹那は答える。
『そうだけど・・君は?』
『やっぱり刹那さんですよね!覚えてますか?ネットゲームの時に何度か助けていただいたユナです!』
『ユ・・ナ?・・えっ、ユナ!?』
『はい!』
V・W・Gの前身であるネットゲーム時代に何度かパーティーを組んで、共にミッションをクリアしたことがある聖召喚士ユナであった。
ネットゲーム時代は、運営が予め製作したお互いの装備をディスプレイを通してしか見ることが出来なかったため、実際のお互いの姿は分からなかった。しかし、実体験型V・W・Gの世界はリアル世界の自らの思念(意識)を別次元に飛ばしているため、それぞれのプレイヤーの姿や声等を認識することができ、今までのゲームとは全く異なり、全ての感触や感覚を感じることも出来るのが大きな特徴となっていた。
『でも、どうして僕が刹那だって?』
『さっきの戦士様と話してるのが聞こえて。それにドラゴンナイトのジョブはこのゲームでは刹那さんと他に数人しかいないの知ってたから、もしかしてって思って』
『そっか。ネットゲーム時代の知ってる人に会えるかも知れないっていうのも、また違ったこのゲームの良さだったね。ユナも100人に選ばれたんだね。』
『はい!また一緒に冒険が出来るなんて嬉しいです!』
懐かしさと、知り合いに出会えたという安心感から、心が少し落ち着いていくのを刹那は感じた。