紅蓮の女戦士
~同時刻
凪達数名が身を隠す洞穴内にも轟音が鳴り響き、激しい振動でパラパラと天井部分の岩肌が崩れ落ちた。
「チクショー!何で俺達がこんな目に遭わなきゃいけねぇんだよ!」
「もう終わりだ・・」
「ドラゴンになんて勝てっこないよ・・」
殆どのプレイヤー達は恐怖に混乱し、諦めの言葉を口々に吐き出す。
強気な凪でさえ少しずつ絶望という暗闇に覆われ始めていた。
そんな時である。軽装ではあるが凪と同色の紅蓮の鎧に、背中にはその細身の体には似つかわしくない真っ赤な両刃の大きい戦斧を持った女戦士が、洞穴の奥から入り口に向かってきた。
『へぇ~、あのドラゴンとまともにやりあえる奴がおるんじゃねぇ』
凪は驚いたように後ろから歩み寄る女性の声に振り返った。
その装備に驚いたのも事実だが、一番はこの状況を楽しんでいるかのように不敵な笑みを浮かべ、余裕すら伺える態度だった。
『君は・・?』
『ウチ?ウチが誰かなんて今はどうでもエエじゃろ。それよりも今はこの状況をどがーずするか考えんと』
可愛い顔してドギツイ訛り。
『・・・ぷっ』
凪は思わず吹き出してしまった。
『なんねぇ!?』
自分が何故笑われたのか疑問に感じた紅蓮の女戦士は少しムッとした表情を浮かべた。
『ごめんごめん』
彼女の持つ穏やかな空気感のお陰で、深く心を覆っていた絶望という暗闇が、少しずつ晴れていくのを凪は感じた。
『君の言う通り、今はこの状況をどう打破するか考えないとな!』
『うん!』
凪と女戦士は暫し見つめ合った。
頼もしくも思えるそんな二人の様子を、壁にもたれ掛かった黒装束の老婆は、目を細め微笑み見つめていた。