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V・W・G ~† リアルへの生還 †~   作者: 聖那
第二章 ~† 北の玄武洞 †~
15/19

ユナの決心

挿絵(By みてみん)


ゴブリンから伝わってくる明らかな敵意てきい・・忍び寄る死の恐怖・・これが本当に自分自身に起きている現実なのかとユナは混乱した。


ゴブリンは狂気に満ちた大きな目を一層いっそう見開き、ユナに狙いを定めるかのように右手に持った棍棒こんぼうを大きく振り上げた。


ユナは戦うことも・・逃げることさえもできず、ゴブリンの攻撃に頭をかかえキツく目を閉じた。


ゴブリンがユナに近付き、棍棒こんぼうを降り下ろそうとしたまさにその時だった。

ダンジョンの奥から、物凄い雷鳴らいめい大気たいきを震わすような地響きが鳴り渡り、辺り一帯の大地を激しく揺らした。


《・・!?》


ゴブリンは大きく体勢を崩し、転がるようにその場に倒れ込んだ。


ゆっくりと目を開くユナの眼前がんぜんには、倒れこみ、驚いて辺りの状況を必死にうかがうゴブリンの姿が映る。

ユナは一瞬何が起きたのかを理解出来なかったが、ぐにこの状況の推測がついた。


〈暗黒騎士さんと、刹那せつなさんが戦ってるんだ・・勝てるかどうかも分からないドラゴンとの戦いなのに・・逃げたりあきらめたりするどころか、真っ正面から立ち向かっていってる。それなのに・・それなのに私は・・〉


二人は最悪とも言えるこの状況を何とかしようと必死で戦っているのに、自分は恐怖であきらめかけていたこと、絶体絶命ぜったいぜつめいだと・・もう無理だと勝手に思い込んでじ気づいていたことをユナは心底悔しんそこくやんだ。


『私だって・・』


恐怖で震える心と体を必死に抑え込むように立ち上がり、再びゴブリンと対峙たいじした。

あわてふためき、キョロキョロとあたりを見回すゴブリンを見つめるユナの瞳は、先程とは代わり希望の光が戻り始めていた。自分の心をおおっていたあきらめめというきりが少しずつ晴れていくのを感じた。



《なんだったんだ?》


倒れ込んでいた二体のゴブリンは顔を見合わせながら立ち上がり、戸惑いながらも再びユナへ狙いを定めるように、棍棒こんぼうを持ち直した。


〈今の私にどれだけの事が出来るかは分からないけど、もう逃げない!あきらめない!〉


ユナは、敵意てきいき出しにするゴブリンをにらみ、再び心に訪れそうな恐怖を振り払おうと手に持ったロッドを構えゴブリンに向かって行った。

真っ正面から殴りかかってくるユナをゴブリンはヒラリと軽くかわし、嘲笑あざわらうようにみにくく顔をゆがませる。


《いいぞー、せいぜい頑張ってあらがえ小娘!》


ニヤニヤと不気味な笑みを浮かべ、ノソノソゆっくりとユナに近付いてくる。


〈このまま打撃戦でやりあっても、戦士職でもない私じゃ勝ち目なんて・・〉


ゴブリンがジワジワと距離を詰めてくる。

前向きな気持ちになりかけてはいたが、全く変わらない危機的状況から、ユナは自分でも気付かない内に少しずつ後退あとずさりりしていた。


しかし、意を決したように再びゴブリンをキッとにらみつけ、小刻みに震える腕を体の前で伸ばし、持っていたロッドをゆっくりと回し始めた。


ゴブリン二体はユナが何をしようとしているのか分からず、顔を見合わせ首をかしげた。



〈今の私に残されてる力じゃどうなるか分からないけど・・これにけてみるしかない・・〉


更にロッドの回転を早め、ユナは空を見上げ祈りを捧げるように心の中でさけんだ。


〈お願い!助けて!〉


『この世が闇におおわれし時、光と闇の狭間はざまより現れ、この世を光へとみちびききたまえ!』


ユナの呪文じゅもんこたえるように回転するロッドは七色に光り輝き、ユナのわずかか前方に六芒星ろくぼうせいの青色魔法陣が地面から浮き上がる。魔方陣は神々しい神秘的な光で辺りの闇を打ち払う。



眼前がんぜん魔方陣まほうじんの中央で、背中にき通った異形の羽根をパタパタさせながらんでいる小さい妖精ようせいの後ろ姿を、今にも意識を失いかけそうなユナの視線に朧気おぼろげながら映っていた。


刹那達せつなたちが中央広場で不気味な声を聞く30分前である。

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