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狂気の瞳
ゴブリンの大きく裂けたような口元から涎が滴り落ちる。それを手の甲で拭いながらゆっくりとユナに近付いてくる。
《今日はついてるなぁ、こんな旨そうな獲物にありつけるなんてよぉ》
ユナは血生臭い嫌な匂いをゴブリンから感じた。
〈もしかして、もう何人かのプレイヤーが襲われたのかもしれない・・〉
そんなユナの気持ちを察したかのように、不気味な笑みを浮かべながら更にユナとの距離を縮める。
《全くだなぁ!さっきの逃げた爺さん達よりは断然こっちの若い方が旨いに決まってる!》
〈・・やっぱり・・〉
ゴブリンのユナを見つめる瞳は狂気で溢れていた。
近付くゴブリンを見つめながら、ユナの心にやるせない気持ちと仲間を助けてあげられなかった想いが込み上げ、何よりも自分に迫る危機感と恐怖で震えを止めることが出来なかった。
《ヘッヘッヘ、安心しろお嬢ちゃん。痛みなんか感じる余裕もないくらいすぐにあの世に送ってやるよ》
そんな狂気の視線にユナの背筋は凍りつき、まるで金縛りにあったかのようにその場を一歩も動くことが出来なかった。
ユナの心に諦めという深い暗闇が覆い始めていた。