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V・W・G ~† リアルへの生還 †~   作者: 聖那
~† プロローグ †~
1/19

終焉の始まり

それは静寂せいじゃくを切り裂き、終焉しゅうえんおとずれるのが必然と思わせるような不気味な声音こわねだった。



お前達を消去する・・

我々こそが唯一の神である・・

運命にあらがうことは出来ない・・

永遠はすぐ目の前まできている・・


その場にいた誰もが深い奈落ならくの底にちていくような絶望を感じた・・


『どうして、こんなことに』


中央広場にそびえ立つ[始まりの塔]

空をおおい尽くすようなからすの群れ。不気味な鳴き声と幾重いくえにも重なって聞こえる羽音はおと。備え付けられた巨大スクリーンを見上げながら、刹那せつなつぶやいた。




~2時間前~

《--- Game log in ---》

《--- 仮想現実戦闘世界空間ヴァーチャル・リアリティ、V・W・Gの世界へようこそ ---》


次々と様々な容姿ようしのゲーマー達が[始まりの塔]の前の広場に姿を現し始めた。

各地から選出された100人のプレイヤー達は、それぞれの思いを興奮気味こうふんぎみに話し始めた。


「やっと始まるんだな~」

「待ちわびたよ、本当に」

「V・W・Gはネトゲの時からファンだったんだ!」



《V・W・G》

仮想現実戦闘世界空間ヴァーチャル・リアリティ・バトルワールド

ネットワークをかいして意識(思念体しねんたい)を仮想現実世界に飛ばし、まるでそこに自分が存在しているかのように自分が決めたジョブで他のプレイヤーと協力し、ゲーム内での様々なミッションをクリアしていく実体験型アクションロールプレイングゲーム



前身ぜんしんのネトゲ時代、各クエストで素材を集めて武器や防具、アクセサリーなど自分でデザインしたものを製造し装備することが出来た。今作はそれを引き継いで使用することが出来るため、各々が自慢気じまんげに自分の装備品のことなどを話している。

真紅しんくよろいに、火の鳥の紋章もんしょうが入った長剣ちょうけんを持つ戦士に魔法使い風の男が話しかける。


「そのよろい、本当に格好いいよなぁ。なぎのジョブは戦士だったよね?ネットゲームの時からみんなあこがれてたもんなー」

『やめてくれよ恥ずかしい』


顔を赤らめ鼻をいじって照れ隠しのように笑って見せた。


『君のその装備は魔法使いかい?』


黒のローブに魔法使い特有の杖を持った男と談笑だんしょうしていたなぎは、少し離れた所でこちらを笑顔でながめている少年に気付いた。


黄金色おうごんしょくよろいにドラゴンの紋章もんしょうの入った異様に太い剣。

その素材がレアの物であることは一目で分かった。


『君の装備はあまり見ない物だね。見たところレア素材だろうけど。ジョブはなんだい?』

『えっと、ドラゴンナイトです。ネットゲームの時から使ってる装備なんですよ』

『ドラゴンナイト・・聞いたことあるような、ないようなジョブだなー』


なぎは首をかしげながらまじまじと刹那せつなの装備を見つめていたが、思い出すのをあきらめたかのように屈託くったくのない笑顔で手を差し出した。


『まぁ、お互い頑張ろうや。君、名前は?』

刹那せつなって言います』

『俺はなぎよろしくな』

よろしくです。お互い楽しみましょう!』


それにこたえるように刹那せつななぎの手を強く握り返した。


〈・・不思議な感触・・〉


その手は他人のものとは思えないような奇妙な一体感のようなものを感じた。


なぎは広場中央の仲間の元へ戻り、仲間達とどのミッションに挑戦するかを相談しているようだ。


ミッションは、始まりの塔を中心に

<東の青龍洞せいりゅうどう>  Aランク

<西の白虎洞びゃっこどう>  Bランク

<南の朱雀洞すざくどう>  Cランク

<北の玄武洞げんぶどう>  Dランク

A~Dランクの4つに分かれている。

どのミッションに挑戦するかは各自自由に選択可能だが、上位のランクほど強大な敵の出現率が高くコンプリートするのがきわめて困難になっている。しかし、その反面クリア時に手に入るアイテムはランクが高いほど特殊素材とくしゅそざいなどのレアな物が手に入る確率が高いため、個人のレベル上げや、より強いパーティーと協力して上位のミッションコンプリートを目指すのがこのゲームの醍醐味だいごみとなっている。



V・W・Gの世界にゲームオーバーはない。

もしもミッション中に全滅ぜんめつした場合、それまで手に入れていた経験値やアイテムを失う代わりに、中央広場の東南側にある[リザレクション・チャーチ](復活ふっかつ教会きょうかい)へ強制送還きょうせいそうかんされよみがえる事ができるゲームシステムとなっている。

誰もが安心してプレー出来るソーシャルネットワークゲーム、というのがこのゲームの売りである。



「とりあえずはDランクの北の玄武洞げんぶどう腕試うでだめしといこうじゃないか。人数も四人いることだし、パーティー組んで挑戦しようぜ!」


なぎはパーティーを組んでミッションに挑戦しようとしていた。

四人はDランクダンジョン北の玄武洞げんぶどうへと向かっていった。


凪達なぎたちのパーティーを見つめていた刹那せつなは、楽しみにしていたゲームの始まりを実感していた。

しかし、その気持ちとは裏腹うらはらに何とも言えない・・深い暗闇のような得体えたいの知れない恐怖のような感情を同時にいだいていた。


『何だろう・・この漠然ばくぜんとした嫌な感じは・・何かがおかしいような・・』


次々とダンジョンへ入っていくプレイヤー達を見つめていた刹那せつなは、何故なぜだか妙な不安を感じていた。


『・・・・』


同じ頃、[始まりの塔]から少し離れた大木に腕を組んでよしかかる黒いよろいで全身を包む異様いような騎士が立っていた。

彼もまたダンジョンへと向かうパーティーを見つめながら、刹那せつなと同じような漠然ばくぜんとした不安を感じていた。

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