とある日の4時限目にて
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『よーい、ドン!』
聞けばすぐに幼い子供のものだとわかる可愛らしい声が辺りに響く。
その声を合図に、地面を思い切り蹴ってその場から駆け出す。
この走り出す瞬間が一番好き。後ろから追いかけてくる足音を振り払うように、どんどん前へと走る。
ゴールはもう、目の前に―――……。
「――ラ。ユラ、起きろ。マズいって。オイ!」
「ん~~~……」
右隣から聞こえてくる焦ったような囁き声に、無意識のうちにくぐもった声が口から漏れる。頭がぼやーっとして、瞼が重くて目が開かない。
「オイ、ちょ、マジでヤバいって。起きろ――……」
再び聞こえてきた囁き声は、さらに焦りを増しているようだった。
そして。
「……ミス里中、スタンドアップ」
その囁き声を遮るようにして聞こえてきた声に、一気に目が覚める。『里中』。今の声の主は、間違いなくそう呼んだ。私の名前は、里中 結良。マイネームイズユラサトナカ。
うちのクラスに里中という苗字の人は私しかいない。……イコール今呼ばれたのは紛うことなく私ということ。そして今は四時限目、英語の授業の真っ最中。
今自分が置かれている状況を理解した途端、一気に全身から冷や汗がふき出すのを感じた。
「ミス里中?」
「っはいぃ!」
重たい瞼を強引に持ち上げて、がばっと立ち上がる私。急激に明るくなった視界に映ったのは、『あーあ』と言わんばかりの表情を浮かべる右隣の席の男子……さっきの囁き声の主、四月一日 輝の姿と、『またか』と半ば呆れたような視線を投げかけてくるクラスメイトたちの顔。
そして、教卓から冷ややかな目で私を見据える、否、見下してくる英語教師のクソ岡……じゃなくて岡本先生。冷ややかな目をしながらも唇は弧を描いているという、なんとも黒々しい笑みをその顔に貼り付けている。
「グッドモーニング?ミス里中」
「グ、グッドモーニング、ミスター岡本」
全然グッドじゃないけどね。何にも良くないけどね。
ぎこちない発音で返した私から視線を外して、クラスの名簿に何やら書き込んだク……岡本先生は、再びその絶対零度の視線を私に向ける。
「……ミス里中、放課後に職員室に来るように」
「……はい。もう座っていいですか?」
「OK」
英語の授業恒例になりつつある岡本先生からの呼び出しを受けて、早々に着席する。もうすでに授業を再開させたクソ……じゃない、岡本先生が黒板にツラツラと書いていく英文を目で追いながら、小さく『ふぅ』と息を吐いた。
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