表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

教師だけど相談とかマジ勘弁。

作者: 宜野座

 俺はそれなりに教師という仕事を全うしてきたつもりだが、未だにどうしても苦手なことがある。

 生徒達からの様々な相談に乗ることだ。

 正直なところ、俺は生徒の相談に対して明確な道筋を示す自信がないし、方法も分からない。

 だから普段、相談を受けたときには、なんかそれっぽいことを言って苦し紛れに誤魔化している。

 

「失礼します。先生、ちょっと相談したいことがあるんですけど……」

 

 ほら、言ったそばから男子生徒が相談に来た。

 はあ~もうマジ勘弁。でもこれも仕事だ、やるしかない。


「おお、桜木さくらぎくんか。どうした」

 

 進路や人間関係の悩みなら、似たようなパターンが多いので幾分やりやすいのだが……さて、今回はどんな悩みだろう。

  

「実は俺、最近ストーカーに狙われてるような気がするんです……」

 

 ふむ、なかなかスパイスの効いた相談だな。まさかゴリゴリマッチョ系の桜木くんからストーカー被害の相談をされるとは。

 

「ストーカーって、あのストーカーか?」

「はい……。ハァハァ言いながら帰宅途中の俺の後ろをつけ回すあのストーカーです」

「そうか、それは大変だな」

「昨日は普段と違う道で帰ったんですけど、やっぱり誰かに見られてる気がして……」

「そうか、それは怖いな」

「このままだといつか襲われるんじゃないかと不安で、夜も眠れないんです……」

「そうか、疲れるな」

 

 どうしよう。「君はマッチョなんだから返り討ちにしちゃえよ」と言いたいところだが、桜木くんは暴力を嫌うハートフルゴリマッチョであることを忘れていた。

 

「先生、俺はどうすれば……」


 桜木くん、チワワみたいな潤んだ眼差しをこちらに向けるのはやめてくれ。なんか絵面がすごいことになってるから。

 

「うーん、そうだなあ。……あ、もしかしたら、そいつはストーカーじゃないのかもしれないぞ」

「ストーカーじゃないって、つまりどういうことですか?」

「ほら、あれだよ。なんていうか、そう、君はいい筋肉を持ってるだろう? きっと筋肉マニアな人間が君の筋肉に注目していて、遠くから観察してるんだよ」

「そ、そうか! なるほど。確かにこれほど美しい筋肉であれば、憧れを抱く人の一人や二人はいてもおかしくないですもんね」

 

 うん、自分で言っちゃうんだそれ。しかもこんなにあっさり俺の意見を信用しちゃうなんて、君は本当に純粋なマッチョだな桜木くん。

 

「そうだよ、だから桜木くんはもっと堂々として、筋肉を見せびらかすようにしながら帰ればいいんだよ」

「分かりました! やっぱり先生に相談して良かったです! ありがとうございましたっ」

 

 桜木くんはそのまま勢いよく職員室から退室していった。

 ……余計なことを吹き込んでしまった気がするが、これで良かったのだろうか。

 まあ、苦し紛れの答えではあったけど生徒は納得してくれたし、今回は結果オーライってやつだ。

 だけどやっぱり、相談とかマジ勘弁。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして、和島と申します。拝読いたしました。 短いながらも笑わせる一コマ。読了後プッ、と力が抜ける感じ。こういうの書けて羨ましく思います(^^)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ