闘技大会編2-1
~闘技大会編~
プロローグ
「さあ、お時間です」
そんな声で君はふと目を覚ました。どうやらまたこの真っ暗なステージにつれてこられたらしい。
すると唯一ライトが当てられているステージの中央にはあのタキシード男がいた。
「もう時間なのか」
君はそう言って男の方に注目した。
「えぇ、そうでございます 今回は前フリ無しで最初から物語に入りたいと思います」
「どうして?」
君がそう言うと男はすんなり答えた。
「ただたんに、お話しすることがないからでございます」
「あ、そうなんだ」
そう答えるのとほぼ同時に男が指をパチン と鳴らして上からスクリーンを下ろしてきた。
そのスクリーンも前回とまったく同じだった。
そして物語が始まる。
2ー1
俺、中条 焔仕事で傭兵やっています。そしてただいま護衛任務遂行中。護衛対象 アリス・ローゼ 性格 生意気。
「ねぇ、このぬいぐるみどう思う?」
仕事内容 買い物に付き合うこと。
「もう十分だろ、これだけ買えば 三日はもつって」
俺はそう答えて両手いっぱいの食材を持ち帰って、一刻も早く、修行に戻りたったかった。しかしそんな要求もこのお姫様には聞いてもらえなかった。
「だめ!ここの人形がどうしても今受けている依頼の達成に必要なのよ」
そして彼女はアリス・ローゼ。仕事は同じく傭兵。育ちの良い?お嬢様気質で、俺はこの前の一軒で彼女の長期護衛に付いている。
「じゃあ、俺だけ先に帰らせろよ! 俺はやりたいことがあるんだよ」
俺が譲歩案(または打開策)を提出するも
「だめ、私が選ぶまでここにいなさい!」
受理されなかった。しかたがなく俺はそのまま付き合い、(あのあと1時間もそのまま持たされっぱなしだった)昼をまわったあたりくらいに俺達は知り合いの宿である、「マジック・リーフ」にたどり着いた。
外見はいたって普通の三階建てのハウスで一階ががエントランスで二階が部屋。三階が自宅と言うような形をしている。そして俺達は三階直通の階段で真っ直ぐ彼女の自宅へ向かった。
ちなみにここの宿の前はただの二階建ての家だったのだが、俺を助けてくれたお礼として150万(生活費すべて)を差し出した。その金を使い彼女は夢だったコノ宿をオープンしたのだ。
◇◆◇◆◇
「ただいま~」
「今戻ったわ」
二人続けて帰宅のセリフを言って三階のドアを開けた。
三階の自宅は玄関を抜けるとまだ新しい新品のフローリングが敷かれており中央には木でできたテーブルがある。そして向かい合うように大きな長ソファと二つの一人用ソファがあった。
その奥には、このおつかいを頼んだ張本人、身長一六八センチほどで金髪碧眼の少女リーナ・アルベルトがエプロンをしてキッチンに立っていた。キッチンからは鍋がグツグツと音を鳴らしている。
「あ、ありがとうございます~ それじゃあ、二人ともそこで座って待っててください」
リーナに言われたとおり二人はそろって一人用のソファに腰を下ろした。
―――それから十五分ほど、おいしそうな匂いのシチュウが出てきた。
『いただきま~す』
全員でそろってこの国の儀式(この掛け声)をしてシチュウを食べ始めた。
「そういえば、ほしいぬいぐるみは見つかったんですか?」
リーナがそう聞くとアリスはあわてて否定した。
「別に私がほしいからじゃないのよ!仕事よ仕事!」
焔はアリスがそんなに否定したので
「うそばっかし」
と言うと、それを聞かれていたらしくアリスがこっちを向いて講義をしてきた。
「ねぇ、そこの君?次そのセリフ言ったら、体すべて灰にするわよ?」
焔はそんなのは勘弁なのですぐに訂正することにした。
「じょうだんだよ、じょうだん」
そう言うとすぐにアリスは鋭い目で睨みつけてきたがそれ以上は何も言ってこなかった。
それからシチュウを食べ終わり、食後のティータイムを三人でしているとリーナが焔に話しかけてきた。
「ところで、焔さんはちょうど一週間後にある、四国一斉闘技大会に出るんですか?」
「あぁ、出るよ 去年はなんせ仕事の都合で参加できなかったからな」
そんな二人の会話に無知な少女、アリスが入ってきた。
「ねぇ、リーナその四国闘技大会って何なの?」
リーナはそんな質問にもいやな顔一つしないで答えてくれた。
「四国闘技大会とは、四つの国、
龍と青が目印の東の国――――大東連合、
虎と白が目印の西の国――――新・白柱国、
鳥と赤が目印の南の国――――朱門国、
亀と緑が目印の北の国――――緑神城、
の四国が同じ日に開催する闘技大会で、その国に国籍を置いている強い剣士やら騎士やら魔導士たちがつどって上位十名を目指し四日間戦い続けるの そしてさらに各国の上位三名、つまり十二名が中心の中立地域 グラン・マザー島 でコノ世界の最強を目指すの ちなみにこのエレフラワー・タウンは朱門国の土地だから出れるのはコノ国のだけ
わかりましたか?
そんなリーナのくわしいお話しをアリスは へー、というわかったような、わかっていないような顔をしていた。
「で、何位を目指すのですか?やっぱり三位以内ですか?」
唐突にリーナが顔を近づけて聞いてきた。それに焔はのけぞりながら
「そうだけど、応援してくれるの?」
と答えた。するとリーナは
「もちろんです!」
と力強く答えた。そしてそれと同時に自分の持っていたカップの紅茶が切れたので運んできたおぼんの上に置いた。
「特訓ですか?」
リーナがそう聞くと焔は首を縦に振って答えた。それを聞くとリーナが唐突に
「それじゃあ、組み手の相手をしてもらってもいいですか?」
と聞いてきた。焔は一人で剣を振りたかったが断る理由もないので一回だけとゆう約束ですることになった。
◇◆◇◆◇
丘。と言うより山の上に作られたこの宿は裏には雑木林が広がり、少し進むと木がなくて短い雑草が広がる草原がある。まさしく特訓するのにはふさわしい広々とした場所である。そこについた三人は早速、各々の準備体操を始めた。
―――――それから十分ほど体をほぐしたリーナと焔は自分の武器、焔は木剣をかまえ、リーナはワンド(片手杖)をかまえて向かい合った。
「それじゃあ、模擬戦…開始!!」
アリスの掛け声で模擬戦は始まった。
まず先手を仕掛けたのはリーナだった。
「水の精霊よ、私に力を貸して!ウォータースクリュー!!」
リーナがそう言うと突如リーナの周りに大量の水が出現して一本のロープみたいになり焔に向かってきた。
「よっと」
しかし焔はそれを軽くかわしてリーナとの距離を詰めて木剣を水平に斬りつけた。
しかしリーナはさっき飛ばした水のロープを操って焔の水平斬りを相殺する。
「だいぶ上達したなリーナ」
「えぇ、私だってアリスと毎日特訓してるんですから 上達して当は然です」
一週間ほど前は、さっきの剣の攻撃を怖がり、逃げてばっかだったのだ。
焔が素直にほめるとリーナは笑いながら答えた。
「それなら…これはどうだ!」
焔は勢い良くダッシュしてリーナとの距離を詰める。
「同じ手は食いませんよ!」
そう言って今度はさっきの水のロープを薄く幅の広い刃にして飛ばしてきた。
しかし、焔はそれをジャンプでかわしそのままリーナの頭上を越えて後ろに回って斬りつけようとした。
「そんなの、おみとうしです!!」
それを見切っていたリーナはわざわざそう言って前にダッシュした。
だが後ろにいたはずの焔がなぜか正面にいてそのまま木剣の攻撃をくらって倒れた。
◇◆◇◆◇
―――「ここは?…そうだ私焔さんと模擬戦をして……」
そこでリーナの意識が覚醒した。あたりを見回すとそこは木陰で木にもたれかかっていた。
ついでに太陽はあれから大分西に傾いていて空はもう赤色に染まろうとしているところで、そばでは重たそうな大剣で素振りをしていた焔がいた。同時に今の状況を理解する。
「す、すみません。私どれくらい寝てました?」
リーナがそう聞くと焔は笑って答えた。
「ほんの数時間だよ。たぶん、魔力が枯渇して倒れたんだ」
「あれ?でも私、焔さんの攻撃を受けたはずじゃ…」
そう言うと焔は大笑いして腹を押さえた。
「ど、どこがおかしいんですか?!」
リーナがそう言うと笑うのをやめて話し始めた。
「まぁ、たしかにたたいたよ頭 だけどものすごく軽くで気絶するほどじゃないよ それにほとんどリーナから突っ込んで倒れてきたくらいだ」
それを聞いたリーナは、はっとして立ち上がった。
「そうだ、宿!今日は一名お客さんが来ているんだった、急いで戻らないと」
そう言って立ち上がるもまたふらついて倒れそうになった。しかし焔が両手で受け止めてリーナをまた座らせた。
「危ないだろ、まだフラフラなんだから おとなしくしてないと……お客さんならアリスにまかせているから安心しろ」
「そうですか……」
その後リーナはそのままそこでまた深い眠りについてしまった。
◇◆◇◆◇
再び目が覚めたリーナは自分の部屋にいた。窓から空を見上げるともうすでに月が上空に昇っている。
リーナがあたりを見回すと小さなテーブルの上にパンとスープと紙が置いてあった。その紙には、
夕食だからしっかり食べるように 焔&アリス
と書かれていた。リーナは綺麗に食べ終わるとまた睡魔が襲ってきたためそのまま寝ることにしたのだった。
―――そのころ焔はさっきの草原で暗闇の森でであった黒ウサギと向かい合っていた。
「おい、黒ウサギ お前の力がどうしても必要なんだ だから俺に力を貸してくれ」
そう言うと黒ウサギは耳を上下に動かしてから聞いてきた。
「お前にあるのか?わかってると思うが聖剣を使うにはその力と見合うだけの対価が必要なんだぞ 」
そう言うと焔はポケットからある小瓶を取り出して黒ウサギの前に置いた。
「蘇生アイテム、月の雫 この世で二本とない代物だ、」
「ほぉ、蘇生アイテムか 確かにそれなら十分だな 」
ちなみにコノ世界には回復アイテムはない。しかし大型モンスターの血の中には時々そういった力があるのが存在する。効果はそれぞれだが、自然治癒だったり、鋼の体を手に出来たりするものだ。だがそれらは一時的なものであり永久的ではない。しかし今目の前にはその常識を覆すことが起きていた。
そして黒ウサギは一つも疑うことなくその薬を丸い光の球に変換して飲み込んだ。
「契約完了だ 俺の名前は焔 黒ウサギお前の名前は?」
焔がそう聞くと黒ウサギも自己紹介をし始めた。
「俺の名前はスペードだ よろしくたのむぞ焔 」
そんなやりとりがあって焔は二本目の聖剣、「アマテラス」を手に入れたのだった。
それから一人と一匹は宿へ普通に戻ったのだった。
――――闘技大会まで残り七日……
◇◆◇◆◇
(今回の話は長くなりそうだな)
君がそう考えていると舞台の男の仮面がかすかに笑ったように見えた。しかし男はいつもの声のトーンで話す。
「あ、それと今回は少々長くなることが予想されますので、
こちらのお話しと向こうの時間を並列して進めたいと思います。
「それって今まで向こうの時間を止めてた と受け取っていいのかい?」
君がそう聞くと男は、はい と一言いった。
「それでは今回はこの辺にしたいと思います それではまた今度お会いしましょう」
「え?返してくれるの?」
君がそう聞くが男は首を横に振って返事を返した。
「あ、あなたは返しませんよ」
「じゃあ、誰に言ったんだよ」
「どうやらもうあっちの世界は三日たったようなので続きをどうぞ…」
「おい、そこ無視するな」
続く




