出会い編1-4
1-4
「何で私がウサギの飼い主の男と一緒に森のダンジョンを進んでるのかしら?もうやめたいわ」
アリスの不真面目発言+疑問に焔はムッとして反論する。
「しかたがないだろ……『リーナ』に頼まれたんだから」
そして焔は止めと言わんばかりにニヤニヤしながら理由を付け加えた。アリスはイラついた目を向ける
「それに、お前だけだと危険だからだろ」
「私をバカにするな!この不審者~!!」
すると、アリスはうなじまで真っ赤に染めて叫び、杖の持っていない左手で焔の頬にパンチをした。
なぜ、二人+一兎はエルフラワー・タウンのはずれにある森に来ていたかと言うと、話しは、二時間前にさかのぼる。
ー二時間前ー
焔がリーナの家に着てから三日が経った。焔の怪我の具合はいたって良好、と言うよりリーナに、
「なんでそんなに早く傷がふさぐの?もしかして治癒魔法でもかけた?」と聞かれたぐらいだ。
この世界で治癒魔法は普通、杖を通して使わなければならず、それも女性しか治癒魔法は使えない。さらにそのごく一部の上級魔導士しか使えないのだ。(おそらくこの世界の人口の十分の一にも満たない。)無論焔は、上級魔導士でもなければ、女性でもない。
これは焔の体質なのであって、理由は五年前にあった実験のせいである。
……しかし、そんなことを言っては、化け物扱いされかねないので、「ちょっと昔にな」とごまかした。
リーナはそれ以上追及することもなく、笑ってその場を後にした。
それから二時間ほどで三日前の傷は完全にふさがったのだった。
焔がゆっくり一階に降りると、アリスが買出しから帰ってきたところだった。アリスの持っていた袋の中からは、朝食に使う、野菜や肉などが入っており、そしてなぜにか非常食もいくつかあった。
焔はアリスに、「おはよう」と言いながら、さりげなく非常食について質問した。アリスは朝だったからなのか棘のない返答をしてくれた。
「あ、その非常食は今日のための物よ」
「今日どこかに仕事しに行くのか?」
焔は質問を続ける。それにもアリスはウサギの刺繍がつけられたフリフリ付きのエプロンを着ながら答える。
「リーナに依頼された事でね、暗闇の森でとれるベリーアップルをいくつか」
その後、三人はアリスの作った美味しい美味しい、シチューを味わった。
それからアリスは二階の自分の部屋に準備をしに行ってダイニングには焔とリーナの二人っきりになったとき突然リーナが静かに話し出した。
「あの黒の森には伝説があるんですよ」
「どんな伝説?」
なぜそんな話しを俺にと焔は不思議に思ったが面白そうだったので話しの続きを促した。
「昔、その森には一人の女性が住んでいました その女性はある一冊の本を大事に持って暮らしていました その本には世界を壊す災いの力があり、同時に世界を救う光の力もありました しかし……」
「しかし?」
そしてリーナは大きく深呼吸をしてから話しを続けた。
「しかし、闇の魔導士が目の前に現れ彼女を殺し、本の力を光の力と闇の力に分けてしまったのです。
そして闇の力の本はその魔導士が持って行き、光の力の本はバランスを崩して闇を集め、その一帯の森を黒く塗りつぶした」
焔は神妙な顔つきになって一つ聞き返した。
「もしかしてその話しって、この街の郊外にある暗闇の森の伝説だよな それがどうかしたのか?」
「えぇ、実はこれのお話しの元になった伝説はこの家に代々伝わるものなのです」
と普通に答えたが唐突にリーナは首をかしげた。
「でも、それは代々家に継がれる口伝のはずなのですが、どうして知ってるんですか?私はこれを人に話したのはアリスだけのはずなんですけど?」
すると焔はあわてて言い訳をした。
「あ、そ、そのことは父から聞いてたんですよ 俺の父はトレジャーハンターだったもんだから土産話で、よくきかされてたんですよ ははは……」
リーナは、「な、なるほど」というような顔をして、その話しを終わらした。
話しをしているうちに二階からアリスが白のゴシックロリータ系の服に肩からピンクの紐のウサギ刺繍入りポーチを下げて現れた
「……」
「……」
二人はそんな姿のアリスをただ呆然と見ていた。
逆にそんな二人を見たアリスは言い訳じみた反論をしながらさっきの非常食をポーチにつめていった。
「べ、別に今日はたまたまこの服が一番魔力を高めれるから着ただけなんだからね!!」
しかし、リーナはとまどった様子でアリスに話しかけた。
「ねぇ、アリス、やっぱりお願いしましょ」
しかし、アリスは顔色一つ変えずにリーナに言った。
「だ・か・ら、私一人でも大丈夫だって 必ずちゃんと戻って来るから。ね?」
しかし、リーナは首を横に振って焔の前に立ち、両手を胸の所で組んだ。
「お願い……いいえ依頼します。焔さんアリスの護衛を頼んでもよろしいでしょうか?」
「…………え?俺が?」
焔はあっけにとられ、アリスは、あ~あ、といいそうなポーズをとってため息をついた。
それからリーナと焔は向かい合わせで客間の椅子に腰掛けて詳しい事情を聞いた。
「つまり、今暗闇の森とその付近には俺が倒したような熊がゴロゴロいると」
リーナはうなづく。
「理由は空気中の魔力が以上に上昇して、森の動物がそれを体内に吸収、凶暴化している」
リーナは二度うなづいた。
「そこで、アリス一人では不安なので護衛をつけてくれと」
リーナがニコニコしながら、三回うなづいた。途中、一人でもいけるわよ! と意地をはったお子様がいたが無視した。
焔は多少考えたあげく断ろうとしたが、
「だめ……ですか?」
と今にも泣き出しそうなリーナの顔と上目使いを見てあきらめた。
「わかったよ、リーナ その依頼、無償で引き受けた」
するとみるみるリーナの顔がいつものニコニコに戻って元気良く
「あ、ありがとうございます!!」
と勢い良くお辞儀をした。だが、
「きゅう!」
勢いあまってテーブルにおでこをぶつけて押さえ込んだ。 そんな様子を見て、焔は笑をこらえながら二階に上って準備をすることにした。
「じゃあ、外に出る門の前で待ってるから」
アリスは、あきらかにふてくされたような態度とセリフでリーナの家を後にした。
そして焔は部屋からワンダーを出して頭の上に乗せた後、赤シャツに小さなポケットがいっぱいついている黒コートと同じボトムスに全身を包みアリスがでた五分ほど後にリーナの家を出発した。
◇◆◇◆◇
三日ぶりに外に出るとそこは薄暗くもどこか落ち着いた雰囲気のある光景が広がっていた。
目の前には長い下り坂が真っ直ぐに続いておりその先には木の根で編まれた小さな門がある。
上を見上げると高さ四十メートルはある木がいくつもそびえており、木漏れ日がちらつきとても美しかった。
小さな門までに五分ほどかけて下りその先を見るとたくさんのお店が並んでおり人でにぎわっている商店街に出た。
そして一キロメートルほど先には目的の、一つしかない巨大な門がそびえていた。
門の形状はよくあるドームの形で押したら開くタイプの門である。間違ってでも上で誰かが鎖で持ち上げたりはしていない。しかし、焔は困ったように頭の後ろを右手で掻いて疑問をひとり言のように言った。
「すごい人の数だなこれは普通に行ったら十五分はかかるぞ。」
そう、眼前の光景は軽く二千人はいるだろう人で埋め尽くされていた。しかも列とかはなく、それぞれが自由に歩いている。
焔は仕方がなく跳躍魔法の初級「ロンカド」を唱えて五十メートル付近にある木の枝まで跳んでそのまま忍者みたいに木の枝をつたって門の近くまで行った。……そして四分ほどで門の前にたどり着いた。
門の近くにたどりついた焔はアリスに指示された店「クララ」に入った。ドアを開けるとドアの上についた鈴がチリンチリンと音をたてて客を出迎える。
「おかえりなさいませ、ご主人様♪」
唐突にメイドの服を着た女性がこちらに向かってそう言ってお辞儀をして来た。
店の中はメイドの服を着た女性が五名ほどいて、中には数えられるほどしかいない客に接客している物もいる。
そして、店の装飾はいかにもカワイさをアピールしたピンクと白をベースにしたつくりだった。
「ここ、メイド喫茶じゃん」
それからしばらく迷った後、中へ突入し、入り口から一番奥の席に腰掛け、ストローでメロンソーダーを飲むアリスを見つけた。
焔はその席に向かって歩きアリスの正面に座った。
「おい、アリスそれ飲んだら行くからな」
焔がさりげなく急がすように促した。しかし、
「わかったわ あと二十分待って」
急ぐ気はさらさらない。と解釈しても良い返事が来た。
それからなんとかアリスを急がして「メロメロ!メロンソーダZ」を十分で飲ませて店を後にした。(メロンソーダーのネーミングはいったん置いておく)
「ちなみに、なんであの店だったんだ?」
ほむらが店を出てすぐにローブを深く着たアリスに聞いた。
「このゴスロリでほかのバーとか喫茶店に入ったら目立つでしょ バカじゃないの?」
確かなのは焔の目には店の中でメイドよりも目立っていた、ということだ。
しばらく歩いて門番から門の通行許可を取ってエルフラワー・タウンを出た。
「暗闇の森はここから東に十キロほど行ったところにあるな」
地図を確認して歩いていた焔が平然と口にする。
「えー!十キロ!!ちょっと空飛べないの?空!」
アリスは子供のように駄々をこねる。しかし焔はそんな駄々を耳を塞いで聞こえないそぶりをした。
だが、アリスの言うこともわかってはいた。十キロなど普通に歩いたら二時間は掛かる。そこで
「ちょっと!何すんのよこの変態下ろしなさい!殴るわよ!」
アリスをお姫様抱っこして高速移動魔法アサルアを唱えた。アリスは「きゃ!」と言う小さな悲鳴を上げた。
――――――それから十分。二人+一兎は目的の「暗闇の森」の入り口に着いた。
この暗闇の森は、この地域では珍しい場所である。理由は木がすべて真っ黒なのである。まるで闇の中をのぞいてるかの用に。そして昼間から背の高い木が日の光をさえぎり薄暗い。そのことから暗闇の森と呼ばれている。
なぜそうなったのかは今でもわかっておらず、いくつか説があるが、もっとも有力なのが、エドガー・エメルス教授の魔力集中実験による突然変異という理論である。
──────これがここまでの出来事と森についてわかっている事である。道に沿ってしばらく歩いていると森の中間付近まで来た。
そこで急に森が開けてとんでもない光景が広がっていた。
地面に生えているはずの草木は存在せず、その範囲には木が一本も立っていない
さらにそこには、岩もあり、地面は砂地で、そこが森の一部なのか疑いたくなる場所だった。
アリスは蛇ににらまれたような顔をしてつぶやいた。
「数年前までは『エデン』って呼ばれていて唯一日光があたる場所だったらしいわよ……」
しかしここはうわさに聞いていた暗闇の森で唯一日光が差し込む『エデン』だったらしい。そんな明るいイメージをもてるような場所ではないのは確かだった。
その中央には焔の目的である木造の家が建っていた。焔は気を引き締め前に進んだ。アリスも、「待ちなさいよ!」と言って焔の後に続く。
そうして小屋の近くまで行き壊れた扉を蹴りで破って中に入った。小屋の中はものすごく荒されていた。
ただ、唯一部屋の中心には縦十センチ。横二十センチほどの宝箱があった。
その箱には様々な装飾が施され宝石が付いており。宝箱の正面の蓋と入れ物間には鍵穴があった。
「これって、鍵穴よね。でも鍵が見当たらないわ」
そう言うアリスはやはりあたりを探し回ったがやはりどこにもなかった。
それを見た焔は
「ワンダー、たのむ」
唐突にワンダーを呼んだ。ワンダーは焔の足元からテーブルの上にジャンプしてその赤い目から赤い光を出した。アリスはワンダーを見て
「今のウサギはそんなこともできるようになったのね……」
と感嘆の声を上げた。
それからしばらくすると突然、宝箱に変化は起きた。
宝箱は金色の光を放ちその形を変形して黒い色のウサギになった。
そのウサギはすぐにあたりを見回して焔に話しかけた。
「おい!選ばれし者、今状況がどうなっているのかわかって俺を出したんだよな?」
どうみてもその黒ウサギは怒っていた。それにあせっているようにも見える。しかし、焔は相手にせず小声で自分の用件を的確に言った。
「そなたは、七聖剣の一兎とお見受けした。今この場で何が起こっているのですか?」
その質問に黒ウサギは答えることもなく言った。
「いそいでここから私をつれて逃げるのだ!しないとやつの手下」
その後は喋ったのだが聞こえなかった。理由はそとで何かが落ちたようなドシーンという音がしたからだ。二人+二兎は急いで外に出た。
するとそこには、耳は尖がっていて、なおかつ鋭い目に刃渡り十五センチはある槍を持ち黒色の翼を羽ばたかせている、悪魔がいた。
普通この手の悪魔は世界中におり、この付近ではエルフラワー・タウンの先の「最果ての山」の向こう側にいる。しかも七メートルはある巨体の悪魔もいた。
「……遅かったか」
黒ウサギがつぶやいた。
すると巨体の悪魔は律儀に自己紹介をしてきた。
「どうも 私の名はドレイク部隊隊長モルドレイク・バーサーラー中尉だ」
焔もそれに習って自己紹介をする。
「俺は中条焔。傭兵をしている」
するとモルドレイクは右手の人差し指を二人にむけて周りの兵士八名に指示を出した。
「こやつらを殺せ」
「サー・イエッサー!」
全員が槍をかかげて号令し、焔とアリスに向かってきた。
「アリス!」
焔が振り向いたときにはもうアリスは複数火炎弾式上級魔法「メニフレイヤー」を唱えて八発すべてを向かってきた悪魔に当てて灰にした。
これにはモルドレイクも驚き目を見開いた。
「ほー これはすばらしい。一度に八発も作り、なおかつ全部命中させるとは……中々の腕だ。しかし、」
その後はアリスの様子を見て答えた。
「魔力を急に練りすぎてしまったようだな」
アリスは力尽きたように息を上げて膝を内側に折って座りこんでいた。
モルドレイクは促すように焔に目をやり
「引き返すのならば今だぞ」
そう言って焔を見下ろしていた。しかし焔は臆することなくワンダーに呼びかけた。
「ワンダー、たのむ」
「了解っと」
そう言うとワンダーは、光を放ちながら剣に姿を変えた。それを握った焔は剣先をモルドレイクに向けて
「俺はお前を倒して自分の仕事を果たすまでだモルドレイク!!」
そしてモルドレイク中尉と中条焔の決戦の火蓋は切って落とされた。
◇◆◇◆◇
「何かすごいの出てきたな」
君は少しだけ感嘆の声を上げながら上空に消えていくスクリーンを見ていた。
「えぇ、そうでございますね。しかし、まだこんなの序の口ですよ」
「え、そうなの!?」
君は普通に驚いた。その後、男が何か言ったらつっこんでやると、構えて待っていると
「それでは、続きをごらんください」
男は何もせず普通に話しの先を促した。




