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セブンスソード―七つの聖剣―  作者: 音無 桐谷
第一章 出会い編
3/32

出会い編1-3

 1ー3

 

 リュックサックを背負った焔は、砂漠で唯一舗装された道を歩き、「エルフラワー・タウン」を目指していた。が、

 

「やっぱ暑いわこの地方」

 焔はそんなことを呟いていた。すると

「おい中条、この中も暑いから僕をここから出せ」

 

 急にリュックサックの中から声が聞こえてきた。しかし焔はそれに足を止めることなく、歩き続けながら答える。

 

「いや、お前の食費が浮くから動くな、そしてしゃべるな」

「な、お前……じゃあ、百歩ゆずってやるからリュックのチャックを開けてくれ」

 

 その声のぬしはすぐさま譲歩をしてきたが

「自分で開けれるだろワンダー」

 と声の主の名前を読んで答えた。

 

「……わかったよ」

 

 そう言ってワンダーは自力でリュックのチャックを開けた。そのリュックの中からは赤目の白兎しろうさぎが顔をのぞかせていた。大きさは猫より一回り小さく、頭には日差しをカットするためか、麦わら帽子をかぶっていた。

 

 無論、普通の白兎ではない。この世界でも動物が人の言葉を喋るのはごくまれなケースである。

 ワンダーはリュックから顔を出して、リュックの中にあったうちわであおいで涼みだした。

 

 そんなこんなで道中は何もなく三日が過ぎた。

 そしてついに、エルフラワータウンの明かりが遠くに見えてきたのだった。

 

 ◇◆◇◆◇

 

 エルフラワータウンの周りには生命力にあふれた木々であふれ、所々から蛍が飛び回り幻想的な雰囲気を作り出している。そのため生物もたくさんいる。だから……

 

 森から出てきた五メートルくらいの熊が出ることもたまにある。


そんなこと、たまにあっても困るのだが。

 

「おいおい、ここまで来て死にたくはないぞ」

 焔が愚痴のようにつぶやくが、熊にはまったく聞こえてもいなかった。

 さらにエレフラワー・タウンに行くにはこの一本道しかないため、森の中を突っ切るという選択肢もあるにはあるが、初見の森の中で熊から逃げられるはずもないため断念。

 よって、結論は「相手を倒す」

 

 そして覚悟を決めた焔は腰から短剣を抜いて切りかかった。狙った場所は足。そこ切り裂いて行動不能にしようとした。しかし、

 

 カッキーン 

 

 と言う金属音しかしなかった。そして焔の手をしびれる感覚が襲う。

 どうやら体に硬化魔法こうかまほうが掛けられているようだ。ちなみに、そこら辺の熊が魔法なんか使えない。つまり、何者かが仕組んだものと見て間違いはない。と焔は判断した。

 

 その後の行動は、すばやくバックステップで間合いを取って、「全力」でこの熊の相手をする決心した。

「ワンダー!」

「おう!」

 

 呼んだのに合わせてワンダーもダッシュからのジャンプで空中に跳んで、光った。

 

 とても眩しく月のような輝きで剣へと変化して焔の右手にその剣は握られた。

 

 その剣は至って普通の片手用直剣かたてようちょくけんで色は淡い紫だが、どちかっと言うと白に近い。そして唯一の装飾であるのが柄と刃の中間くらいにあるちゅうくらいの赤い石とその周りの羽の模様である。

 これは魔石アウラ、この剣の力のみなもととも言えるものである。

 

 ツクヨミ

 

 それがこの剣の名である。この名の由来は一切不明。

 だが剣のワンダーがちゃんとした名前で呼べ。と言い張るためツクヨミと焔は呼んでいる。

 そして焔は剣に、魔石に魔力を流し込む。すると剣がそれに反応するように白く輝き熊を威圧した。

 

 熊は一、二歩下がったが、すぐにうなり声をあげて突撃してきた。焔はそれにひるむことなく掛け声とともにその輝く剣で熊を斬り付けた。

「ウオォォォォォォォ!!」

 

 そうして熊の一撃は焔の左わき腹を切り裂き流血させたが熊は腹から真っ二つまっぷたつにされて切り口からは大量の血しぶきを上げてその道の一部を赤黒く塗りつぶした。

 そうして死体となった熊の下半身の部分は最後の切り裂いた形で残っており上半身はうつ伏せで道に転がっていた。

「終わったか」

 

 焔はそうつぶやいて剣を白ウサギに戻し出血を止めるため布をあててリュックを背負い何事もなかったように歩き出した。

 しかし熊の最後の一撃は効いたらしく、あと少しというところで目の前が真っ暗になり意識が遠のいていった。

 

 ◇◆◇◆◇

 

 焔が次に目をましたのはベットの上だった。

 

 焔が首だけであたりを見渡すが誰もいない。部屋の様子はベットの横に小さなテーブルがあってその上にガラスのコップと水の入ったビンがあった。

 

 焔はこの様子をて自分は助けられたのだとわかった。そこまでわかったとき、ベットから見て足の方にあるとびらから女性が入ってきた。

 

 その彼女の容姿ようしはエルフ族の特徴である、とがっていて長い耳が有り、綺麗な碧眼へきがんでスリムなその体は膨らむ所は膨らんでいてあって長い金髪きんぱつを持つ「美少女」だった。

 

 焔はしばらく彼女を眺めていたが、お礼を言っていないことに気づき、体を起こそうとした。だが、思ったより傷がいえていなかったようで「イテッ!」と言い、わき腹を両手で押さえた。

 

 それを見て彼女はあわててそばによってきた。

「大丈夫ですか?!」

「あぁ、大丈夫だ」 

 焔はそれを手で止めるも彼女に支えられゆっくり起き上がった。

「助けていただきありがとうございます」

 

 それを彼女は両手を顔の前で手を振るように否定した。

「いいえ、元とはいえ、魔法の練習をしていたらはずしてしまい、うろついている子熊に魔法あたってしまったのがいけないんですよ。」

 

 それを聞いていた焔は勝手に一人で納得していた。あの熊は魔法による暴走だった。と言うことに関してだが。

 

(て言うかあれ子供じゃないだろ。絶対)


 そんな事を考えていると彼女はまた、

「本当に申し訳ありませんでした」

 と頭を深く下げたため、「顔を上げてください」と言う。

 

 そんなやり取りをしていると下の方で、「戻ったわよ」と言う声が聞こえてきた。

 

「お姉さんですか?」

 その質問に彼女は首を横に振って答えた

「いいえ、今のは魔法の指導をしてもらっている方です。さっき買出しにいってもらってたんですが、戻ってきたのでしょう。……恥ずかしながら、あなたに作る予定だったシチューに使うお肉を買うのを忘れていたもので」

ここで焔は彼女に敬意を払うことをやめる。……食べ物の恨みほど怖いものはない。

「そうなんだ。」

 

 そして焔は今さらのように、あることを思い出して質問した。

 

「君の名前は?」

 すると彼女はとても元気のいい、にこやかな笑顔で答えた。

 

「リーナ・アルベルト十八歳です。リーナと呼んでください」

「わかりました、リーナさん」

 再び焔は敬語に切り替えた。そして焔は続けて質問する。

「それと、つれの白ウサギはいますか?」

 その質問にもリーナは普通に答えてくれた。

「それなら、アリ、じゃなくてその指導している人が「カワイイ」と連呼しながら手厚てあつく看護していますから安心してください」

 そうですか。と返事を返して焔は一安心ひとあんしんした。

 

 すると今度はリーナの方から質問してきた。

「それでは、あなたのお名前は?」

「俺の名前は、中条焔と言います。」

 すると、リーナはまた笑顔で聞いてきた。

「では、中条さん、良ければ下で一緒にシチュー食べますか?」

 

 お腹が減っていた焔は、うなずき、リーナに支えられながら立ち上がった後、一列で小さな階段を降りた。

 

 その途中、

「リーナさん、一ついいですか?」

「はい?いいですよ」

「俺のことも焔と呼んでください」

「わかりました、焔さん」

 

 そんなやり取りをしているうちにリビングのドアの前に立っていた。そしてリーナは何の抵抗もなく右手でドアを押して入った。

 そこは麻布あさぬのでできたソファーが二つあり向かい合うようにそこにあった。

 そしてソファーの間にはガラスのテーブルがありドアから見て向かい側に会いたくない人物が優雅ゆうがに紅茶のカップを左手、それを置く皿を右手に持って向かい合うように座って焔の目の前に赤髪の彼女は現れた。

 

「お前は、アリス・ローゼ!?」

「あんたは、中条 焔!なんでこの家に!?」

 アリスはあくまで静かに立ち上がり、二人は家のあるじをほっといてさっそくにらみあった。

 

「あれれ?お二人はお知り合いですか?」

 そんなこととは露知らず、リーナは、にらみあう二人をダイニングへ案内し二人はうながされるまま席についた。

 

 

 焔とアリスは一旦、互いの矛先をしまい、仕事の話をした。

「まず始めに、どうしてあなたがここにいるか教えてくれるかしら?」

 アリスがかなり上から目線な言葉に焔はむっとしたがこらえて質問に答えた。

 

「この街に来る途中、うっかり熊に出くわしてな。襲われて怪我けがをしたんだよ。そこに彼女、リーナさんに助けられたんだよ。そして看護してもらってた」

 

「もらってた。…………じゃないわよ!!怪我をした客人がいると連絡もらっていそいで帰って来たらあんただったなんて………………出てって」

 アリスは最後のセリフを小さく震えた声で答えた。

 

「はぁ?何だって?」

 焔はもう一度聞き返した。アリスは今度こそ聞こえる大きな声で言った。

 

「この家から出て行けーーーー!!」

 しかし、それはシチューの準備をしていたリーナにも聞こえた。リーナはおたまを置き、アリスの目の前に立ち両頬りょうほほをひぱった。

 

「ぬぁーにおーしゅる!」

 アリスは引っ張られながら反論するが何を言っているのかわからなかった。

 そしてリーナの手を振り払い引っ張られてた頬をさすってもう一度リーナに聞いた。

「な、何をするの!いきなり、」

「追い出すのはダメです!!」

 

 しかしなおもアリスは反論する。

「どうして、こんな生命力ゴキブリ以上の短剣ヤロウを泊めるの?」

「うちの家訓だからです!アリスも知ってるでしょ!」

 それを言うとアリスは、うっ、と言いつつも、「でもでも」と歯切れの悪い言葉を続ける。その様子を見るや否やリーナは腹の黒そうな笑みを浮かべ、うろたえるアリスにとどめを刺した。

 

「あのウサギさん彼の連れですよ?焔を追い出すと言う事はウサギさんも追い出すことになる……あーあ、なんてかわいそうなんでしょうねー。この時間じゃあ、一つしかないあのボロ宿で彼は中で眠り、ウサギさんはきっと外で寝かされるんだろうなー……………」

 

 時間を確認すると、お昼をまわっておりそんな宿では、昼食もないだろう。

 それと、焔は家訓の方も気になったが、あえてスルーすることにした。それくらいではあきらめないだろうと踏んでいたが、駄々っ子アリスの態度が一変した。

 

「わかりました。リーナの自由に」

(頭を下げた!あっさり頭を下げたぞコイツ!!)

 それから、焔はそのままココに泊まることになった。

 

 ……ちなみにシチューはおいしくいただきました。

 

 ◇◆◇◆◇

 

「何なんだ?てか、お決まりのストーリー展開だな。この物語」

 君が半分目をつぶりながら、またまた突如、

出現した男性に言葉を投げかける。

 

「しかたがないじゃないですか。この作者凡人以下の人だから」

 そんな作者が聞いたら泣かずとも、三日はヘコむような内容を二人は平気で話題の種にしていた。すると男性はステッキをとつぜん一回まわして君に話しかけた。

 

「それでは休憩はココまでです。ここからは、ちゃんと主人公&ヒロインが活躍します」

「そんなこといいから、早く続き見せて帰らせてくれ」

 

 男性は小さくため息をしてなだめる。

「こら、それ以上言わない。作者本当に泣いてしまいますぞ」

 

 そして咳払いを一つコホン、として話しを続けた。

「えー、それでは長らくお待たせしました。続きの始まりでございます」

 

 そう男性が言うと上からスクリーンが降りてきて物語の続きを写し始めた。

 


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