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セブンスソード―七つの聖剣―  作者: 音無 桐谷
第六章 魔王討伐編
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魔王討伐編6-3

ヴィルヘルム:ミイの出番は!?

音無:もう少しまってくれ(笑)


というわけで、魔王編三本場です。

「はぁぁぁぁぁ!!」

 ミネルバは焔が同時に二人の敵を撃破したのを見逃さずに、思いっきり突っ込んで行き、その体には似合わない大剣を水平に振るった。


 しかし、水平切りは紙一重だが余裕綽々の笑みを浮かべながらひらりとかわされてしまう。

 ミネルバは躍起になってランダムに剣を振るうがまるでリズムゲームをやるかのようにかわされ、かすり傷ひとつつけられなかった。


「ミネルバ!同時攻撃だ!」

「はい!!」


 二人は互いに自分の剣同士をぶつけないようにタイミングをずらしながら、ランダムに切り込む。

 だが、上を切ろうとしたら伏せて、下へ攻撃を仕掛けてきても、後退しながらジャンプし、相手からは確実に見えるはずがない、ミネルバの後ろというコンビネーションで作り出せる「死角」から、ジャンプで剣を振るうも、これまた攻撃が当たらない。


 それを見ていたアリスは一つの結論にたどり着いた

「もしかして、攻撃が読まれている?……いや、いくら凄腕だとしても、あの二人の攻撃をそう簡単にかわされるわけがない!……まさか!?「読む」じゃなくて、「見えている」!?」


 そのころ二人は息が荒くなったので一旦整えるために動きを止めようとしたが、

「させるかよ!!」

 そう言ってアロイスは杖から黒い炎の玉を飛ばした。


「「!!」」

 二人は瞬時に次の体勢などを無視して体を左右に振り攻撃を回避した。

 大きな爆音と共に攻撃の当たった場所は大きく地面が窪んで抉れていた。

「な、なんて威力なの……」

 アリスはこのままでは危ないと思い自分の杖を持ちいつでも戦闘に入れる準備をした。

「お前はくるな!!」

 しかし、焔のその一言で彼女の戦意は瞬く間に消失していった。

(どうして、どうして私には戦わさしてくれないの?そんなに足手まといなの?それなら、私なんでついてこいなんていわれたの?)

 アリスの心の中でそんな思いが目栄え始めていた。



(う~ん、さすが選ばれし者だな、攻撃がそん所そこらの兵士とは比べ物にならないほどするどい)

 アロイスはそう思いながら淡々と自分の赤く輝く左目に宿る「一巡先の攻撃を読み取る能力」を使いながら攻撃をかわしていた。

 当然ながら相手は「人間」 どこかで攻撃の手が緩むだろうと考えながらあえて攻撃態勢をとらず回避に専念した。

 そして、左目で「立ち止まる未来」が見えたため、すぐさまその攻撃が終わってから攻撃態勢に入って初級の暗黒魔法「ダークバイス」を放ち当てようとしたが、見事に回避されてしまった。アロイスはそこでもう一発当ててやろうと思ったが、視界の端にいた少女を見て、

(こっちの方が面白そうだな)

 と思い標的を変えた。


「え?」

 焔は気配でこっちから目線が逸れたのを感じ取った。そしてよくよくその目線を追うと、

 そこにはアリスがいた。


(まずい!!)


 直感的に焔の頭の中にいやな考えが過ぎった。焔は剣を放り投げ全力でアリスの下へと走る。

「逃げろアリス!!」

「え?」

 しかし、アリスが前を向いた時にはアロイスから、黒炎の玉が発射されていた。

(うそ……)


 そう、これはまさしくアリスの失態だ。この状況下で集中力をほんの一時でもきらすのではなかったのだ。そして、回避するのを諦め、アリスはただ、無防備に受けようとした。だが、


 ドーン

 聞きなれた爆発音がアリスの目の前から聞こえてきた。だが、爆発はアリスには当たらなかった、それよりもアリスをかわすように爆風も広がった。


「うっ!!」

 それと同時に、苦しむ声が聞こえたためアリスは目を開けて目の前に見えた光景に驚きを隠せなかった。

 目の前には、焔がアリスを抱くように庇っていたのだ。


「どうして?」

 アリスは涙目になりながら、焔に尋ねた。そんな顔を見た焔は、いつものやさしい目でアリスを見て

「……理由が、いるのかよ。……大事な仲間を守るためによ」

「でも、今のは私が……」

「…………大丈夫だ。お前には魔王戦の時に守ってもらうんだからな。こんなところで、くたばってもらったらこの後がしんどいんだよ」


 それを言ったのを最後に焔の目は閉ざされてしまった。

 アリスは体をゆすって見るが反応はまったくない。

「ねぇ?死んでないよね?……いやよ死なないで。お願いだから目を覚まして。起きてよ!!ねぇ!!!」

 さらにゆすってみるが本当に反応は無い。胸に耳を近づけてみるが、脈打つ音が聞こえず呼吸をする音も聞こえなかった。

 そしてその瞬間、アリスの何かが切れた


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 その光景を見ていたアロイスは

(ふーん。そういう行動とるんだ。……つまんねーの)

 と暇そうにあくびをしていた。しかし、背後から斬りかかって来たミネルバの攻撃を何の危なげなくかわす。まるで、子供とでも遊ぶように。


 ちらっとミネルバの顔を見てみるが、そこには先ほどまでの顔つきとは異なったミネルバがいた。

 その目はただひたすらに冷たく、冷徹な視線でこちらを見据えている。


(ま、これはこれで、少しは楽しませてくれるのかな?)

 そんなことを考えながらアロイスは三度迫ってきたミネルバの攻撃を安全圏でかわし続ける。


 ――――――一方ミネルバは、どうやったらこの悪魔を殺せるかだけに集中していた。

 アリスに頼りたいが、おそらく「焔の死」のショックが大きすぎてしばらくは動けないだろう。

 瞬時にそう判断したミネルバは時間稼ぎのつもりで再度アロイスへ斬撃を放った。


(……みなさん、速くきて!!)

 他の人が早く来るように願ってしまう自分を殴りたい衝動を抑えミネルバは焔の敵討ちと言わんばかりに剣をふるい続けた。


 ……だが、むなしくも焔は、満足そうな笑みを浮かべて、なおも横たわっていた。


 ――――――――――――リーナ&エカテリネ&マグヌス


「……なんだ。もう終わりか」

 そう言ってマグヌスは次の中規模ゴブリン隊に歩いて迫っていく。まさしく「無防備」という言葉が相応しいくらいに。

 しかし、ゴブリンは一撃も与えることが出来なかった。なぜなら、空からはバハムート三体、地上には蛮神の一つ、焔神イフリートが四体でマグヌスを中心にし守るように歩いていたからだ。

 無論、火炎ブレスをそこらじゅうに撒き散らしながらだが。


 だが、それでも突破してくるゴブリンは数対ほどいたが、それらは、

「消えろ」

 そんな言葉と共に、エカテリネの「不可視の一閃」という居合い切りで、まとめて敵を殲滅させる。


 リーナは戦闘開始五分で「陽動だからきついのでは?」という懸念はただの妄言だったと言うことを悟らされた。


「どうりでたった三人という戦力で陽動が出来るわけですね」

 そう心の中で思いながらほかの敵の大、中隊がいないか精霊で索敵をしていた。


 だが、


「やっぱり、数が多いよなこれは」

「そうですね。……魔力の方は大丈夫ですか?」

「もちろん……って言いたいところだけど、ちょっぴり不安かな?」

「リーナは?」

「まだまだいけます!」


 これほどの戦力を保有しながらもそんな風に確認をとるほどの余裕しかなかった。


 攻撃の手順では始めに、バハムートによる火炎ブレスで、森を二十ヘクタールほど焼き払って見たのだがそこには六個にも及ぶ中隊、大隊が息を潜めていた。


 それらの後には、湧き水でも出るかのように次から次へと敵がやってきて、大混戦となった。そしてそろそろ倒した敵の数が千体に届くのではないかと言うくらいの数の敵と戦った。


 そして、リーナは城の方へ目線を向けた。城の近くからは黒煙が見えている。


「気になるんだろ?」

「え?」

「無理はしないでください。気持ちはわかっていますから」

 リーナは突然そんなことを呼びかけられてと惑ったがコクリとうなずいた。

 すると、マグヌスが口笛で空を飛んでいたバハムート一体を呼び戻した。


「これに乗って城へ行くんだ」

「え、でも……」

 マグヌスがそう進めたがリーナはと惑い続けていた。それを見たエカテリネは肩にやさしく手を置き、無言でうなずいた。


「……わかりました。後で必ず助けにきますね」

 それだけ言い残してリーナはバハムートの頭から乗り、城へと向かった。

 大切な仲間を失わないために。


 ◇◆◇◆◇


(……あれ?ここは?……あぁ、俺はアリスをかばって、火の玉をくらって、その後どうなったんだ?)

 焔は薄れ行く意識の中そんなことを考えていた。体に力を入れようとするが入らない。


(そうか、死ぬのか。こんなところでみんなより先に。…………悪い、みんな、もう俺立てないらしい。……じゃあ、先に待ってるよ)


 そして、焔の意識は途切れようとした……


 終わるのか?

(え?)

 キサマはこんなところで終わっていいのかと聞いている

(どこの誰かは知らないが、しかたがないじゃないか。もう立つことも出来ないんだから)

 ならば、闘う意志ももうないのか?

(あぁ、そうだよ。守りたかったけど、もう俺には守れない。)

 意気地なしめ

(なんとでも言え。)

 ココまで言われてキサマは悔しくはないのか?このままでは死ぬぞ?

(あぁ、悔しいけどそうみたいだな)

 何か心残りでもあるのか?

(あたりまえだろ。こんな大事なところで大切な人たちを守ることが出来ずに死ぬんだから)

 なら、守りたいか?

(守れるなら守りたいよ。でも俺にはもうそんな力はない。いくら生命力や回復力が優れていても即死じゃなんの役にもたたないからな)

 ならば力があればいいんだな?

それを聞いた瞬間、焔の目に微かながら光が戻る。

(あぁ!あるなら貸してくれ!俺の意識が消えてもいい!!みんなを、アリスたちを守る力を!!!)

 そして謎の声は大きな声で言った。 


ナラバカソウ ワガ セイリュウノ チカラ!!


 次の瞬間、焔の耳には確かに聞こえた。

 まるで龍が天高く咆哮ををあげるような大きな唸り声を。


 そして、焔の目の前には光が戻ってきた。


 ◇◆◇◆◇


 そのころ戦っている廊下では信じられないことが起こっていた。

「うそ……」

「え?」

「な、何だって!?」

 そして、アリスを含むその場にいた全員が息を呑み、驚きを抑えられずにいた。

 理由は、確かにに死んだと思われていた焔が、何も言わずにゆっくり起き上がり、再び剣を握ったからだ。

 さらに、その左目は、いつの日かのように赤く輝きを放ち、無表情でアロイスを見据えている。


 その場にいた全員が数秒動きを止めて見るほどに異様なプレッシャーを放っていた。


「ウオオオォォォォォォォォォォォオオ!!!!!!!」


 突然、空気が震えるほどの雄たけびをあげ、

「…………俺はお前達を、一匹残らず葬り去ってやる!!」

 と言い放ち剣を構えた。


 それを見たアロイスは狂ったような笑みを浮かべ

「いいね!いいねぇ!!そうこなくちゃ!!!俺をもっと楽しませろよ「選ばれし者」!!!!


 そして、焔の意識は再びこの戦いの場へと舞い戻った。


大事なものを失わないために。


                        続く


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