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セブンスソード―七つの聖剣―  作者: 音無 桐谷
第五章 七王会議編
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七王会議編5-4

 ――――――焔&アリス


「というわけで、マグヌスのお兄さん・・・・アリスのこと頼みます」

「いやだね……どうしてもというなら、君の地下室にある魔導書を貸してくれ」

「……いいだろう!見せてやる!何でもいいが一冊だけだからな!」


 ただいま二人はマグヌス・ヘルマンの部屋を訪れていた。

 そして、アリスは目の前にいるマグヌスを見て口をパクパクさせていた。

 理由は、突然マグヌスが軽い爆発音と共に煙に包まれたと思ったらそこには、さっきまでよぼよぼのおじいさんだったマグヌスは存在せず、代わりに、短い銀髪、と緋色の瞳を持った青年が立っていた。


「な、何者なのあなた!?」

 アリスはものすごくあたりまえの質問をマグヌスにぶつけた。マグヌスはいかにも だるい と言った顔をしながらもわけを話し始めた。

「……俺はな三代目のマグヌス・ヘルマンだ」

「先代のマグヌス・ヘルマンはどうしたの?」

 アリスが普通の質問をしたにもかかわらず、マグヌスは顔を窓の方へ向けて静かに始めた。


「……死んじまったよ去年の夏に」

「どうして?……まさか、盗賊にでも襲われたの?」

 アリスは気になったので、マグヌスにもしわけないと思いつつもさらなる質問をした。

 そして、マグヌスからはとんでもない言葉が口にされた。

「森を散歩してたらまた・・巣にいたスズメバチに刺されて死んじまったよ」

 アリスは呆然としていた。理由はあんなに高名な魔導士がスズメバチにしかも二度さされて死んでしまうということに。そして同時に、

(七王もやっぱり普通の人なのよね)

 ということも。


「それじゃあ、後でとりに行くから待ってろよ」

「わかったよ、邪魔したな」

 アリスがそんなことを考えているうちに、二人の話は終わり、すぐに二人はマグヌスの部屋を後にした。


 その後、城の地下にある通称「大図書館」へと行き、分厚い本を一冊渡してから二人は城を一度でた。

「この後はどうするの?」

「ん?この後か……ミネルバんのところにでも顔を出すか」

 そして焔は、そのまま付け足すように言う。

「それとお前も明日からマグヌスの所で特訓だからちゃんと行けよ」

「……え?」

 アリスは唐突なことにすぐ返事が出せなかった。


 ◇◆◇◆◇


「群雲城」

 その城では、二本の角先が正面に向かって生えた黒髪で長身の男が、暗い廊下を何度も曲がりながら歩いていた。普通の人ならこの暗がりでは何も見えず、壁伝いで歩いていただろう。

 だが、この角男、「アロイス・デュフナー」は悠然と幅三メートルほどの廊下の真ん中を歩いていた。

 理由は二つ、

 一つは、彼がココを何度も通ったことがあり、構造を熟知していたこと。

 二つ目は、彼が「悪魔」で暗闇でも、それなりに目がきくこと。である。

 そして、アロイスは巨大な門のところにたどり着いた。

「まおうさま~ただいま偵察部隊の報告が降りてきました~」

 と言ってから足蹴りで扉を開けた。扉はまるで風に拭かれたかのように軽く開く。そして、アロイスの耳には、魔王からのねぎらいの言葉ではなく、

「おい、デュフナー、いいかげん手で開けろよ……これで十一回めだぞ注意するの」

 みごとにあきられている声が聞こえた。アロイスはその声がするほうに顔を向けると、自分よりも身長が小さい少年が本来なら「王のきさき」が座るところにいた。

「おや?お父上、魔王様は何をしてらっしゃるのですか?」

 デュフナーが少年、否、魔王のたった一人の息子、「レオン・ルー・ミディアム」に話しかけた。レオンは大きく肩を落とし、

「……奥の部屋で自分のプラモ作っているよ」

 それにアロイスは返事をすることもなく、紙を数枚まとめたファイルをレオンに、

「それを魔王様にお渡しください 内容は人間達の侵攻についてです」

 とだけ言って渡し、その場を後にした。

 立ち去ってからレオンは、少し中身を見てから、投げ捨てるように父の普段は座る王座のところに置き、

「ふーん、結構速いじゃないか」

 とだけ言って自分の部屋で、自分もプラモを作るため、その場を後にした。


 ◇◆◇◆◇


 ――――――それから六日後


 ――――――ミネルバ&アクセル

「未来を奪う覚悟ですか……」

 そのころ、ミネルバは、客のいなくなった店でアクセルからそのような言葉を聞かされた。

「そうだ、悪魔は基本卑怯だ この前のようなことを平然とやって相手を、人を、殺しにかかってくる」

 アクセルは、さらに力のこもった声で熱弁する。

「だから、情けはいらない!それが子供の悪魔でもだ!悪魔も人と同じく心を持つ、無論親が殺されたら黙っていないだろう……だからこそこの勝負は永遠に終わらないのかもしれない だが、それを断ち切ることは出来る それが出来るのはその子の親を殺した人間がその手で子供を殺すことだと俺は思う」

 そして、最後にアクセルはやさしくミネルバを見据えて

「だから、そいつらの「未来」を奪う覚悟だけは忘れるなしないと、後々苦しい思いをするからな……」

 と、どこか遠くをみるように、窓の方へと目を向けていた。


 ◇◆◇◆◇


 ――――――リーナ&エドワード

「……で、調子はどうだい」

「ぼちぼちですかね」

 エドワードは、リーナの最後の仕上げとして、魔導書、「睡蓮黒書」の最初のページに書かれている魔法、「ヘル・カレント」が使いものになるかどうかを確認するためにやってきた。


 二人はついて早々、リーナは、水着に着替え湖の水に浸かり瞑想を始め、エドワードは神妙な趣で見ていた。なにせ、この魔法を見るのはこれが初めてで、リーナが「出来るようになったので見てもらえませんか?」と言ってきたのでこうやって来たのだが、はっきり言って威力については皆目見当もつかなかった。

 書かれていた習得方法はいたってシンプル。「霊気の満ちた場所で身体で水を感じ、その状態で瞑想をする」というものだった。そこでリーナが

「とりあえず水着であの湖に浸かりながら瞑想してみます~」

 と言ったので、瞑想の形だけちゃんとしたのを教えてからエドワードはそれが本当に正しいのかどうか調べていたからである。


「いつでもいけますよ~」

 エドワードはリーナの呼びかけにふと我に戻り気合を入れなおす。

「よし!いつでもいいぞ!」

 そしてリーナは詠唱を始めた。

「我水流の名の下に、水のみならず、草木を愛し、それに恩恵を受けるものすべてを愛す者  その純粋で綺麗な心を用いて、草木、水をもてあそぶ悪心に浸りし者のこころを浄化せん!」

 すると空気中から水分を上にかざした両手の手のひらの上に集め、直径十五センチ前後の水の塊が完成した。

 そして力いっぱい叫び、両手を上にかざした水の塊からその魔法を放った

「ヘル・カレント!!!」

 すると水の塊から合計八本の渦を巻いた水が飛び出し、リーナを中心に周りをなぎ払うようにうねった。

 その威力は水が地面を抉り、草木を根こそぎ倒すほどだった。

 それを確認したエドワードは身の危険を感じ、二十メートルも離れていたその場からさらに下がり、三十メートル近くまで距離を取るほどだった。

「これが、四大精霊の持つ魔導書の初級魔法……」

 そうつぶやいてしまうほど圧倒的威圧感だった。


 ◇◆◇◆◆


 ――――――アリス&マグヌス

「で?私は何をするの?」

 アリスがそう尋ねるとマグヌスは一冊の魔導書を取り出した。それは先ほど城の地下図書室から持ってきた書物だった。そして杖を使い自分の開きたいページを一発で開く。

「この防御魔法を覚えるんだな」

 そう言われてその魔導書を見るとそこには「ハート・シールド」と書かれた魔導書があった。

「なんで防御魔法なの?」

 アリスが質問すると、マグヌスは人差し指を立てて

「魔王は炎系の魔法の頂点に立つ魔導士でもある だからお前との相性がものすごく悪い だから防御魔法」

 アリスはその説明に納得し、早速、使用条件を読んだ。

「何々…… 我は愛という名の拘束具にしばられる者であり同時に自由を求め歩み続けるものなり 始めの制約を破り自由を手にするべきとき、我と愛を近いし者に加護を与えん」

 そしてその続きを読むと同時にアリスの顔が赤くなり、大反論をする。

「こ、こんなの、で、出来るわけないでしょ!……き、キスよ!!」

「でもお前の魔力が尽きない限り絶対にキスした対象を守り続けれる」

 その言葉にアリスはどう反論していいかわからなかった。そして最終的には

「わ、わかったわよ!……ちなみに、加護の対象は一人なの?」

「あぁ、一人だ ちなみにもうそれは焔と決まっている」

「ど、どうゆうことよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 それを聞いたアリスはさらにパニックになりかけたが、城の中を十分近く走り回ってようやく冷静になれた。

「……つまり、作戦の要であるアイツを絶対に守り通すだけの防御を私が担うことでいいのよね?」

「気づくのが遅い!」

 そしてアリスは魔法の発動条件とマグヌスからの指示で「魔力の量を底上げする訓練を書いた紙」を受け取り、目的は達成できたので、その場を後にした。

 ◇◆◇◆◇


 ――――――焔&六本の聖剣


 そして、それぞれが自分より強い存在にあれこれ教えられ、進歩していく中、焔は自分の仕事にとりかかる。

 焔がやってきたのは、第三研究棟の一室。そこは出来た武器などのテスト空間であり、ただ広い空間が広がっている場所だった。

 ただし、その中心には円を形作ったように剣が置かれている。

 その一つ一つは使い方によっては世界を統一することが出来る力を秘める聖剣。そして焔は魔石だったのも含めた六本の聖剣を順番に鞘からぬいた。


「選ばれし者 六つの剣を手にしとき、七本目の聖剣を手にし魔王を打たん 」   オーディンの書、最終章、第八節より


 焔はそこに書いてあったのと、旅の途中で集めた古文書や古代魔法の書物を元に、七本目の聖剣を見つけた。

 そして焔は短い呪文のような言葉を唱える。

「七つの星の頂点に立ち、すべてを切り裂く光よ 古の光が降り注ぐ聖なる夜に 我が願いに答え悪霊百鬼を打ち倒す力与えたまえ!!」

 実はこれで、もう五十回目にもなるのだが今だ成功したためしはない。そして、今日成功させなければ、今回の作戦の成功はほぼ絶望的になるのは目に見えていた。

 焔は強く、強く願い、意識を集中させた。

 数分経っても何も起きず失敗かと思った次の瞬間、周りの空気が焔を中心に渦巻き、上から一筋の光が静かに差し込む。

 この部屋には窓一どころか、鉄格子一つとしてないので、そのことから当然、自然な光ではない。そしてその光は静かに焔の目の前に降り立ち、瞬く間に、光輝く白龍へと変貌した。

 焔は白龍が話す言葉に意識を集中させる。

「君が今回の選ばれ者かい?」

 白龍は静かに話しかけた。焔も静かにうなずき、

「はい、その通りです」

 と言った。白龍は焔の目を見るように目線を合わせ、語りかける。

「願いはなんだ?」

 その問いに焔は真剣な表彰で、そして大きな声で言った。

「俺の知り合いが笑顔で暮らしていけるような世界を自分のこの手でもぎ取ることです……だからそのための力、魔王を打ち破る聖剣の力が欲しいです」

 数秒のあいだ白龍は見つめていたが不意に

「いいだろう、我が聖剣「無限銀河インフィニティー・ギャラクシー」を授けよう」

 そして焔は受け取ろうと思ったが、付け足すように白龍が言葉を続けた。

「対価はどうするのだ?」

 その言葉に焔は俯いた。そして頬を二回ほど叩き覚悟を決め、

「俺の命をかけます」

 その言葉に白龍は満足そうにうなずき、七本目の聖剣、「インフィニティー・ギャラクシー」へと姿を変えた。


 そして、ついにすべてが決まる、「魔王討伐作戦」が行われる、日となった。


 七王会議編 完




完結だぜぇぇぇぇぇぇぇ!!


そして……


次回から最終章開幕!!こうご期待!!!



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