出会い編1-2
1ー2
にらみ合いをしてから数秒、先に動いたのは焔(ほむら)だった。
焔は始めに「アサルア」を唱えていっきにローブ(よく見たら繋がっていた)女に突撃し短剣の切り上げ斬りを放つ。
それをフード女はバックステップでかわす。さらにかわしながら魔法を組み上げ、火の玉を放った。
焔はそれを紙一重で直撃をさけて二撃、三撃と連続で斬りかかる。
だがローブの女は鮮やかなバックステップですべてをかわした。
(中々やるな)
焔はそう思いながら火の玉の嵐をかいくぐって徐々に接近する。
それを続けてるうちに、ローブ女が一瞬だけ攻撃を止めたあいだに一秒で組み上げた「アサルラ」で突っ込み短剣を持っていない左手で女を押し倒した。
そして焔はすぐさま右手の短剣を女の喉に当てて
「動くな!!」
と言う力強い言葉で戦闘を終わらせローブの女から杖を奪って横に置いた。
焔は剣を交えた相手の顔は覚えるという少し変わった趣味を持っている。そのため一番気になっていた女の素顔を見ることにした。
ゆっくり、ローブのフード部分をめくって見るとそこには、目じりを若干濡らし、今にも噛み付いてきそうな目つきでにらみつけている、少女の顔があった。
焔は驚いた。にらみつけている理由にではなく、その若さに。
歳は自分と同じ位で綺麗な顔立ちをしている。特に目を引くのが髪の毛である。
少女の髪の毛は、後ろで一つ縛りをしているがおそらく肩より少し下ぐらいまであり、綺麗なスカーレットなのだ。さらに瞳の色もまるで磨きに磨かれたルビーの色をしていた。つまり……
「お前、カワイイな」
こんな、言葉が焔の口から漏れてしまうのだ。それを聞いた少女は精一杯の力を振り絞るも、ナイフの位置がきつくなって、思うように動けなかった。
「あんた、名前は?」
焔が質問(尋問)をする。と少女は少し顔を背けて答えた。
「アリス・ローゼ」
それを聞いた焔はさらに質問を進める、
「じゃあ、ローゼ、君はどこの人間だ?」
「あなたと同じフリーの傭兵よ」
ローゼは迷うことなく即答した。
「誰に雇われたんだ?」
「マフィアの幹部達からよ」
それで焔はなっとくしたように首筋につけていた短剣を緩めて腰に戻した。
「殺さないの?」
そうローゼに聞かれて焔は平然と答える。
「お前さんみたいなカワイイ子を殺したら神様がゆるさないつーの」
ローゼはカワイイと言う言葉の部分に「ビクッ」と体が震えて顔がほんのり赤くなった。焔はそれも見逃さず
(なんか妙にカワイイなこいつは。自己主張の激しいウサギを見ているみたいだ)
と考えてしまいこちらもほんのり顔が赤くなったことがわかった。
「……してよ」
「え、何?」
ローゼの小さくて聞こえにくかったセリフにもう一度焔は聞きなおした。
「だ・か・ら、その体をどかしてよ!!もう戦うつもりはないからさ!」
焔はどこか子供っぽい声のローゼの大声で耳がおかしくなりそうだったが何とか無事だった。
焔は「悪い……」と言って体をどかし数歩下がった。ローゼはローブについた土を綺麗に払い落として焔を見つめてきた。
「何だよ」
そっけなく聞くと、以外にも普通の質問がやってきた。
「あんた、名前は?」
「中条焔だ」
するとローゼは、ふーん、といった顔をして横に転がっていた杖を拾った。
「中条焔、しっかりあなたの名前と顔覚えたわ。……次戦う時は負けないんだからね!」
そう言ってローゼは身を翻して正面門から出ようとした。しかし、それを焔が「待ってくれ」と言って引き止める。
ローゼは明らかに不機嫌そうな顔をしてふりかえり、
「何よ」
「いや、また会えるかな?俺たち」
そう言うと猫が怒ったときに見せるような鋭い目で
「またあんたと会うなんて金輪際ないんだからね!!」
そして彼女は今度こそこの街から立ち去った。
それから焔はその日その街の宿屋で一泊した後、再びリュックを背負ってデザート・タウンを後にし次の目的地、エルフ族と花の街エレフラワーズ・タウンを目指して歩き始めたのだった。
◇◆◇◆◇
「いかがでしょうお客様?楽しんでもらえたでしょうか?」
君はふと我に返っていつの間にかいたあの男性の質問に耳を傾けた。しかし、男性は返事も聞かずに続きを話した。
「まぁ、全体の一割にも満たない内容なので気楽にしてください」
それから君は質問をした。
「だいぶ時間がたったみたいだけどこれで返してくれるのかい?」
その質問に男性はテキパキと答えた。
「いいえ、これは第一休憩でございます」
「え、第一休憩?!」
男性は驚きもせず淡々と今後の予定(休憩)について話した。
「はい。お客様。……失礼ながらまだまだ続きます」
君は若干顔が引きつってしまった。理由はまだ物語が続き、返してくれないということに関してだ。
そして男性は無言でまた幕の方へ姿を消してしまった。
――――――それから何分か経った後に上からさっきと同じ白い色のスクリーンが下りてきたのだった。




