ブラットパレード編4-1
ブラッドパレード編開幕だぜぇぇぇぇぇぇ!!
というわけでよろしくお願いします。
ブラットパレード編 1-1
「……誰の命令でココへ来た?」
焔は鋭い目つきに加え、怖いくらい冷たい声で目の前の全長二十メートルはある蜘蛛型の悪魔に話しかけた。
「ゴルレス大尉の命令……いや、正確には魔王様の命令かな?」
蜘蛛は顔に着いている六個の目を動かして答える。
「そうか……なら宣戦布告でいいんだよな?」
焔は薄っすら笑みを浮かべて言い放ち蜘蛛を見据えた。
「あぁ、もちろんだとも選ばれし者」
……なぜ、こんなことが起きたのか、否。なぜ今になって攻めてきたことについて焔は頭の片隅で考えていた。
時間を戻ること二時間前である
◇◆◇◆◇
「アリス!!最後の一匹そっち行ったぞ!」
「わかったわ!」
アリスは杖から中くらいの火の玉を放ち突進してくるイノシシを黒コゲにした。
その日は黒の森付近で大量発生しているイノシシの狩りという依頼をこなしていた。そしてノルマの十五匹目をちょうど倒したところだった。
「これで、ノルマね」
「そうだな」
二人はそういいながら木の陰へ行き、あらかじめリーナに持たされていたバスケットからサンドイッチを取り出して少し遅い昼食をとった。
「だけど、まさか焔がカラコンをしているとは知らなかったわ……」
焔はつい三日前に黒のカラコンを無くしてしまい、蒼い瞳をさらしていた。顔を背け笑いそうになっているアリスを見て焔は
「な、何だっていいだろ!」
と返した。ちなみにこの国で蒼い瞳ははっきり言って嫌われている。理由は二十年ほど前にあった朱門国と大東連合の戦争のせいである。だから焔は無用なトラブルを回避するために、大東連合を出るとき、黒のカラコンを買ったのだ。
そしてどこの国の人にでも共通すことなのだが、東は蒼。西は灰色。南は赤色。北は緑。と瞳の色が四つの大陸、四つの国で綺麗に分かれている。(四大陸の中心で中立国のある大陸は色々な国の人々が集まるのでさほど関係はない)
「でも何でお前は俺のこと軽蔑しないんだ?」
焔のその質問にアリスは少しうつむきながら答えてくれた。
「私、この国……と言うより、親が嫌いなのよ 」
「どうしてなんだ?」
そう聞くといっそう顔を下に向け消えてしまいそうな小さな声でアリスは喋る。
「知ってるでしょ、アイテール家っていう上位貴族 私はそこの貴族の子供なのよ ……」
焔は少し驚いたが、何も言わずただ、アリスを見ていた。そのうちアリスは返事も聞かずに話を進める。
「そう、私は貴族の暮らし……いや、生き方に嫌気がさしたのよ ……考えても見て、王家からきた事務的な仕事をこなすだけで、毎日汗水流して、がんばって働いている農民の倍以上のお金が手に入るのよ……だから私はそんなつまらない仕事をして一生を過す(すごす)くらいなら、自由に色々なところへ行ってこの国の民と同じ生活をしていたい!……だから、私は魔導士になるって決めたの自分の力で生きるために」
それを聞いた焔は何か言わなくてはと考えたが自分も、人のことを言えるような立場ではないので、「そうか」という相槌しか打てなかった。しばらくそうしていると突然アリスが焔の方を向いて、
「ねぇ、勝負しない?勝ったほうが相手に自由に命令できるっていうルールで」
と言ってきた。焔はそれでアリスの気持ちが晴れるならと思い、すぐにOKした。
◇◆◇◆◇
二人は森の入り口近くにある広いところまで移動し、焔は剣を、アリスは杖を構えた。
「全力でお願い……」
「わかった」
それだけの言葉を交わして二人の意識は目の前の相手に集中した。
先に動いたのは焔だった。焔は真っ直ぐにダッシュし自分の間合いに持ちこもうとするが、
アリスが「ファイア!」と大きな声で言いながら火の玉を飛ばしてくる。焔はそれをかわしなおも前進する。
それを見たアリスは負けじと連続で火の玉を飛ばし、焔を止めようと全力を振り絞る。
「くっ!」
と苦しそうな声を上げながらも、焔は剣の横で直撃する火の玉のコースを変えて進み続ける。今度は二メートル先の場所に、一度に三つもの火の玉が飛んできたのが見えたため、前進をやめて横に飛んだ。だが、そのときアリスが不敵な笑みを浮かべた。
「甘いわよ!」
「何?」
基本、こういう砲撃系の魔法は直進にしか進まないため、いくら時速百二十キロメートルで飛来しても、横に二メートルも回避すれば当たらないのだが、アリスの放った火の玉はほぼ直角に曲がり焔へと飛んできた。
(追尾弾かよ!!しかもほぼ直角!)
そう判断したが、そんな可能性は一ミリも考えていなかったため、見事火の玉を三つ直撃しその場に黒コゲになって倒れた。
◇◆◇◆◇
「いつの間にあんなすごい魔法考えたんだよ……」
焔が偽りのない素直な感想をいいながらなぜにか膝枕をされた状態だったが、仕組みを尋ねた。するとアリスはニコニコしながらその質問に答えてくれた。
「どう?すごいでしょー、正確には追尾弾じゃなくて飛ばした火の玉の後に、相手の回避した時に起きた風を風魔法で増幅させてそこへ飛んできた火の玉を風で無理やり流しただけなんだけどね」
「でも、すごいよ今日は俺の完封負けだな」
それだけもう一度言って焔は立ち上がり、帰るように促した。
しばらく歩いていると道端に一人の人が倒れていた。持ち物からすると、エレフラワータウンにでも来ていた人だと判断し、二人はすぐに駆け寄った。
「大丈夫ですか?」
焔がそう声をかけるが、反応がない。試しに抱き起こして見たがそこには虚ろな目をした商人だと思われる男性がいた。その顔には元気がないというより、血の気がまったくなかった。
「……死んでるの?」
アリスが少々不安そうな声をかけてくる。焔はそれを重い表情で受け止め返事を返す。
「いや、息はある……でも呼吸が小さいな 急いで病院へ連れて行こう」
そういいながら焔は背中に男性を担ぎ、小走りでエレフラワータウンへの帰り道を急いだ。しかし、その途中小さな蜘蛛が五十匹近くも現れ道を塞いだ。
「なんなのよこいつら!!」
アリスはそう言いながら火の玉を飛ばして焼き尽くそうとするが、減っているのだろうがそんな気がしないくらいの数になり、じわじわと後退していた。焔は、
「アリス!俺の体に摑まれ!!」
と指示をだした。アリスは素直に焔の体に摑まり焔の顔を見上げる。それを確認した焔は、
「スプリンガー!」
と脚力魔法の中でも最大の四十メートル近くはジャンプできる「スプリンガー」を唱え大ジャンプした。
地面に隕石でも落ちたかのように直径三十センチほどの円形の窪みを作ったその大ジャンプは見事安全にエレフラワータウンを囲む壁の上の平らなところに着地した。そして眼下の街には、とんでもない光景が広がっていた。街には、顔のない岩だけで出来た大きさ五メートルはある人形、「ゴーレム」や棍棒を持った大小様々な人型で緑の体を持つ「ゴブリン」が闊歩していた。
「どうして、悪魔が来ているの?……」
アリスはそう言ってその場に膝をつき街を見ていた。アリスは今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「……認めるかよ」
アリスはそんな声が聞こえたため、その声の発声者に顔を向けた。そこには蒼色の両目で街の中心にいる大きな蜘蛛?を見据える焔がいた。その目は鋭く、間違えようのない殺意が込められていた。
「どうする、これから?」
そんな焔を見たアリスは泣いていても仕方がないと自分に喝をいれるため自分の頬を二度軽く叩き焔の意見を聞いた。焔は真剣な声でこれからの行動を伝えた
「壁を降りた後、まずこの男性を置く……正直、守りとおせる自身がない 」
その無慈悲にも聞こえる焔のセリフをアリスは反論することなくうなずき、行動に移った。
風魔法で安全に着陸した後最初の目的を達成し、全速力(アリスをお姫様だっこして)のアサルアで
宿へ向かった。宿の近くではリーナやミネルバが必死に抵抗していた。だが見るからに門の入り口のそばにもいた一メートル以上はある蜘蛛に、今にも負けそうになっていた。
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
焔はうなり声をアゲながら淡い紫の直剣を抜き蜘蛛たちを飛び越え二人を庇うように立った。
「大丈夫か!?」
焔は背中越しに二人に聞いた。すると疲れきった二人、ミネルバとリーナの声が聞こえてきた。
「何とか大丈夫……でも、もうしんどい」
「私ももう魔力が底をつきそうです~」
そんな二人に焔は力強く指示を出した。
「退路は作る!そのうちにアリスと一緒に街の方に向かってくれ」
三人は素直にうなずいた。それを見た焔はムーンライト・ラスト・ホープに魔力を集め、
「流星撃」
と小さく唱え下から切り上げの剣撃を放った。その後から蒼い光を放つ衝撃波が真っ直ぐに突き進み蜘蛛を蹴散らし一つの道を作った。その後には地面が数メートルにわたりえぐれている。
「今だ!進め!!」
焔のその声を合図に二人も焔の後に続き駆け抜けた。逃げる時にアリスが気を効かせて「スモッグ」の魔法を放ち黒煙を撒き散らした。その後黒煙がうまく自分達の行動を撹乱させてくれたのか蜘蛛に接触することもなく山を降りることができた。
「どうしましょ~街はゴーレムやゴブリンであふれ返っていますよ~」
今にも泣きそうにリーナが偵察用の精霊を飛ばして映像を見せていた。ちなみに今は山から一番近い場所にある酒場に身を隠していた。リーナ精霊から送られてくる映像だけでもゴーレムは十体以上いる。
すると突然酒場の前で爆発音がした。
「ばれたの!?」
アリスがすぐに杖を構えて確認しようとするが焔は手で制した。
「大丈夫見方ですよ そこにいるのは第七の隊長でしょ?うちの隊長から聞いていますよ 援護しにきました」
その声を聞いた焔はその名前を読んだ。
「お前かロベルト」
その名を呼ばれた男は黒髪で黒い瞳の身長百九十以上はある大男だった。体には頑丈そうな金属の鎧にタワーシールドと長さが三メートル近くはあるランスをたづさえていた。
「どちらさま?」
ミネルバが焔に尋ねると簡潔に説明し始めた。
「彼の名はロベルト・アコノール 俺の知り合いの騎士だ。」
焔の説明に三人はいささか不満を覚えないでもなかったがいったん棚上げして今の状況を聞くことにした。
「今の状況ははっきり言って芳しくないですね……各ポイントにゴーレムやらゴブリンやら蜘蛛まで出てきますから正直にうちらの第二小隊だけでは手があまります。ただいま本国にも増援を要請しているのですが……」
そこまで話終えた後焔は腕を組みしばらく(と言っても一分もたっていないが)考え次のような結論を出した。
「親玉だと思われるあの蜘蛛を俺が抑えるからそのうちに逃げてくれ」
続く
まず、何か切り方が不自然ですいません。これ以上長くすると読者の皆さんが大変かな~と判断したためです。
次は多分ですがお正月特別編になると思います。
感想はいつでもお待ちしております。
by音無 桐谷