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セブンスソード―七つの聖剣―  作者: 音無 桐谷
第三章 サマースクエア編
15/32

サマースクエア編3-3

都合上、今回は長くさせていただきました。

時間があるときに読まれることを推薦いたします。

 3-3


 三日目 午前 接触


 俺、中条 焔は、初日にリーナに選んでもらった服を着て、ワンダーを頭の上に乗せて、色々歩き回っていた。理由は昨日、ミネルバを使って俺を襲おうとした相手をおびき出そうと思ったからだ。そして、

「おい、相棒の焔、気づいているか?」

「もちろん、気づかないわけがないだろ」

 つけられていた。一応二十分ほど放置して歩き回ったが離れる気がしないので断定した。それから、俺には二つの選択肢があった。

 一つは、うまくミネルバと稽古をしたあの道場へ行き迎撃すること。

 二つ目は、今日一日逃げきって明日降りた後に人気ひとけのないところで撃退する。

 歩きながら、俺は考えて、結局、休みを満喫するために一つ目の選択をとった。


 ◇◆◇◆◇


「そこまででいいだろ?もう出てこいよ」

 焔は道場の中央まで歩き、背を向けたまま、いるであろう追跡者に話しかけた。すると、

「フフフ、さすが私の兄・・・です よく私の追跡にお気づきになりましたね」

 突如聞こえてきたその声に焔は驚き、振り向いた。そこには、身長百五十五センチ前後で焔と同じ黒髪、右の瞳は片方がサファイアカラーで輝いている。服装は頭に白のカチューシャ、白のフリルがたくさんついているスカート、白のヒールを履いている。まさしく普段の焔とは正反対の白尽くめの少女が立っていた。

 一箇所だけ指摘するのであれば、自分の身長より大きい大鎌を持っていることぐらいである。

「何でお前がココに!!」

 焔は、つい大きな声を出して問いかけてしまっていた。それほど、驚き、あせっていた。そしてその質問の回答が少女から帰ってきた。

「それはもちろん、公務・・に戻ってもらうためです」

「ことわる!!まだ一年あるだろうが!!!」

 その回答にも焔は食いついてワンダーを剣へ変身させて戦闘態勢をとった。それを見た少女はため息をついて、

「困りましたわお兄様、なんせ、父上が体調をお崩しになられて、宮内きゅうないはごった返していてだれも公務につけないと言うのに……どうしても戻る気はないんですか?」

 その質問に焔は、即答で

「ない!父がどうなろうと知ったことか!!」

 と答えた。それを聞いた少女はもう一度ため息をついて焔を見据え

「では、力ずくでもつれて帰ります!!」

 冷徹な印象の強い瞳の蒼い輝きが増した。


 その瞬間、とんでもないスピードで突っ込んできて、大鎌の一振り。焔はそれを同じくらい速いバックステップで回避して着地の反動を使ってカウンターの斬撃をくりだす。

「甘いですよ お兄様!」

 しかし少女は、まわした鎌をうまく柄の部分が自分の体の前にくるように止めて突き出し、焔の鳩尾に突き刺した。

「ぐっはぁ!!」

 焔は思いっきり鳩尾に柄が食い込んだため、距離を取って腹を押さえた。そして肩膝もつく。

「単純すぎますよお兄様 あ、第六位への昇格おめでとうございます」

 少女はあきれてはいるが、賞賛をしている。

「…………他に目的があるんだろ」

「なんのことでしょうか?瑠璃にはまったくこころ辺りがありませんが……」

 そんな態度の少女に焔は右目の瞳を赤にそめて・・・・・・・・・

「とぼけんな!お前が所属する部署は、潜入や暗殺がメインだろうが!!…………俺を連れ戻すのはあくまでお前の第一目標だろう?」

 焔は深呼吸をして高ぶった感情を落ち着かせる。それと同時に瞳の色も元に戻る。そして剣を白兎のワンダーに戻して真っ直ぐ瑠璃をみつめる。

「なぜ半年以上もいなかったのに聞くのですか?」

「……理由が必要なのか?一応同じ部署・・にいるしな、場合によっては協力もするさ、現に何人か協力してやってるしな」

 質問に焔はそう答えを返した。瑠璃はしばらく考えた後、

「いいでしょう……瑠璃も今回は少し手間取りそうだったので協力者がほしかったので」

「あと条件がある もちろんお前の作戦に支障はない条件だ」

 焔は瑠璃に間髪いれず、条件の話を持ちかけた。

「条件?……聞いてから決めます」

 瑠璃は一瞬戸惑ったが、すぐに返事を返す。その回答を聞いた焔はその条件について話し始めた。

「条件は一つだ 俺と一緒に来ている仲間には手をだすな お前の手に掛かれば一撃、いや、彼女達の実力からして、三、四撃で勝負がつくぐらいのレベルだ……それが俺の条件だ」

 条件をきいた瑠璃は顎に手を当てて考える。それを焔は息をのんで見守り返事を待つ。そして一、二分ほど考えた瑠璃は、

「わかりました……一応、お兄様の格好から旅行中だろうとは察しがついていましたし、人を、しかも女性ばかりを連れているのを何度か目撃してましたし、……まぁ、そのくらいの実力ならいいでしょう」

 焔はその返事の内容に若干冷たい視線を感じたがすぐに消えたため気にしないことにした


「で、内容……の前に謝罪をここに要求する」

 焔は一時休戦をとった少女(妹)中条瑠璃と場所を変えて下のデッキが見下ろせるちょっとおしゃれなカフェに来ていた。

「謝罪?なんのことでしょうか?」

 右の瞳を黒い色に戻した瑠璃が紅茶を片手に焔の質問に聞き返した。

「とぼけるのはよせ、昨日魔法を使って俺と稽古していた女性を操ったことだよ」

 少し、いらだった声のトーンで詳しくいった焔だったがまるで堪えたようすがなく、逆に「あ、そうだった」と言う顔をして話し始めた。

「それに関しては私ではありません それは私が始末しようとしていた相手の魔法です」

「どういうことだ?」

 今度は焔が驚きを隠せず、聞き返してしまった。瑠璃は気を悪くすることなく淡々と自分が今何をしているかを話し始めた。

「それの犯人はもういません。私が始末しました。……私は今、デジエンスタウンの事件の首謀者について調査をしていました そしてその組織の幹部と思われる相手から情報を引き出し、抹殺するためにこの船に乗りました。そして作戦は順調に進み、いや、対処が少し遅れ先手を打たれましたが、その組織の支部がこの船の行き先、ヴェイヴタウン、にあることまで引き出し、その幹部を昨日の夜に始末したのです。……それが今、お兄様に合うまでの流れです」

 長い話を聞き終えた焔はしばらく目をつぶりたっぷり考えてそれを信じた。

「……わかった それで最終的な目的は何だ?」

「敵組織が私達の国、大東連合に次はなんらかのテロを企てている情報が手に入ったので先制攻撃をするためです」

 大東連合、正式名所 大東三龍連合国。この国が置かれる数十年前、宗教間の問題で、東の大陸に存在する三つの国は争っていた。だが三年前、三国は和解し、立ち上げたのがこの国で、実際は国と名乗っているが、実際はただ連合を組んで他の三国と同等になろうとしたのが始まりである。そしてつい半年前、国の国境が取り除かれ、政府も一つに統一されて本当の意味で一つの国となった。(おそらく近いうちに国の名前を改名することだろう)

「……連合国が侵略されるって事かよ!!」

 焔は驚きのあまり若干大きな声を出していた。その反応を見て瑠璃は言葉を続ける。

「お兄様が驚くのも無理ありません、ちなみにお父様はそれが原因で体調を……」

「チッ!あの、ヘボ親父め!!」

 焔は瑠璃に背を向けて握り拳を作りいない父に向かって愚痴った。

「で、何でそんな作戦にお前一人しか動いていないんだよ」

 そう聞くと瑠璃はバツ悪そうに顔をしかめて言葉をつむいだ。

「実は、この件に関してまだ情報が錯綜しているため、動員されたメンバーは個々で情報を集めている最中でして、……その、連絡をしたのが今日の朝、お兄様と会う直前だったんでそれで……」

「あぁ、わかった、で全員集まるのはいつだ?」

 焔はある程度それでわかったので、全員が集まる日=作戦日を聞いた

「速くて三日後ですなにせ中立国のグランド・アースまで人員を出しているので」

 焔は少し目を閉じ結論を出すためにいくつか質問した。

「まず大体の目星はついているのか?」

「いいえ、しかし一日あれば十分だと思います」

 焔はそれだけを聞いて結論を出した。

「よし、今日の夕方にはもう街に到着するからすぐに動いてくれ、あとそこが複雑なつくりだったら地図もたのむ……作戦執行日は二日後だ」

 その結論に瑠璃は

「動員されているメンバーが集まってからの方がいいかと」

 しかし、そんな反対意見に焔は首を横に振って

「情報が少ないなら、すぐに動いた方がいい、……またあんなことになるのはゴメンだからな」

「さすが漆黒の流星であるお兄様です 私とは指揮能力が段違いです」

 それにたいして瑠璃はほめる言葉を口にしたが焔は苦々しい顔で

「瑠璃、それで俺を呼ぶな」

 と返した。


 ◇◆◇◆◇


「私がお兄様の妹の中条瑠璃です 以後お見知りおきを」

 その後、この後おこるであろうトラブル(または誤解)を回避するためにカフェを出た足で昼食の約束をしているレストランへ向かった。

「どうも、アリス・ローゼよ、よろしく瑠璃さん」

「リーナ・アルベルトです よろしくお願いします」

「ミネルバ・レイチェル……よろしく」

 当然のように自己紹介を済ませて全員席に着いた。(ちなみにテーブルは五人用の円テーブルだったので全員座ることができた)

 それぞれが昼食の注文をウェイトレスにした後、焔と瑠璃はすぐに質問攻めに合った。


 焔は、

 ・質問その一;「どうして妹が乗っているの隠していたの?」

 回答;「隠していたわけじゃないよ……たまたまだよ 偶然テラスであったんだ」

 ・質問その二;「どうして妹がいるのを教えてくれなかったんですか!」

 回答;「教える機会がなかったんだよ」

 ・質問?その三「「おい、レタスまだか!」」

 回答;「お前達は少し黙れこのウサギども!」


 そして瑠璃には、

 ・質問その一;「あだ名は?」

 回答;「そんなのはありませんよ 普通に瑠璃って呼んでくださいミネルバさん」

 ・質問?その二;「じゃあ、ルル」

 回答?;「……かまいませんよ」

 ・質問その三;「アイ、……いやお兄さんの弱点教えて頂戴」

 回答;「えぇ、それならいくつかまず……」

 ――――横槍「おい、瑠璃余計なことそこの赤髪のに教えんなよ!絶対だ!!」

 ・赤髪さん;「じゃあ、後で私の部屋に来て」

 回答;「わかりましたわ」


 そして注文した料理がやってきたため、ようやく怒涛の質問は終わりを告げた。


 ◇◆◇◆◇


 三日目 午後 アリスに謝る&奢る


 昼食をすませたあと、瑠璃はミネルバ、リーナに誘われて船の探索に出かけた。そして当の俺はアリスに呼ばれていたため、アリスの部屋の前に訪れていた。

「はいるぞ~」

「ちょっ!……まっ、待って!」

 俺はすぐに用事を済ませて寝たかったので勢いであけてしまった。だがそこには、濡れた赤髪に体をバスタオルで巻いてかがみ、服(下着を含む)を旅行用の鞄から出しているアリスの姿がいた。

「……あの、ごめん」

「死んでね☆」

 アリスはすぐさまそばの杖を持ち速攻で風魔法を放ち俺をその場から後ろへ吹き飛ばした。もちろん俺は少し狭い通路の壁にひびが入る勢いで激突した。


「悪い、なんでも一つ食べ物でも服でも買ってあげるからさ、ね?」

 俺はそんなことをいいながらアリスのご機嫌取りをしていた。

「………………だめね」

 そしてアリスは後ろを向いたままそういって言葉を続けた

「じゃあ、明日一日私の言うことはすべて聞く、それでどう?」

 それと俺に拒否権は存在しないので自然に

「あぁ、いいよ何でも言うこと聞いてやる」

 という返事になるのであった。

「で、本題を聞きたいんだけど、聞かせてもらえるのかアリス」

 それを口にすると、アリスはこっちを向いて

「ちょっとお使いなんだけど……お願い聞いてくれる?」


 そういってつれてこられたのは、アイスクリーム店だった。

「ここに何かあるのか?」

 俺がそう聞くと焔はアリスに背中を押されて半ば強制的に中へ入っていった。

 その店の中はアイスも置いてあるので涼しく、右側にはショーウィンドーがあり、そこには色とりどりのアイスが綺麗に並んでいた。

 その正面、入り口の左側には、3つほどの対になった薄いオレンジ色の円テーブルとそのオレンジを濃くした椅子が置かれている。そしてショーウィンドーの張り紙には要約すると

「ただいまカップルへの特別アイス、アマミヤストロベリーシャーベット注文可能!ぜひ注文を!」

 と書かれた張り紙があった。俺は念のためアリスの顔を見て張り紙を指差すと、

「早く注文しなさいよ!!」

 と言われた。俺は何も聞かずに二つそのアマミヤストロベリーシャーベットを注文した。(ちなみにアマミヤストロベリーは品種である。通常のイチゴの三倍の甘さを誇る)


 数分で用意されたシャーベットを持って俺達は席に着いた。アリスはすぐに一口分スプーンですくって口へ入れた。

「さすが、アマミヤ、シャーベットにしても美味しいわね」

 と、とろける様な笑みを浮かべながら食べていた。しかし俺は一口食べてやめた。

 理由は単純明快、予想以上に甘すぎるのである。それだけだ。

「何アンタいらないの?なら、いただき~」

 アリスはそれだけ言って俺の返事も聞かずに自分のスプーンで俺の分まで食べてくれた。

 俺はそこで気がついたので手元にあったナフキンを手に取り、アリスの口元へ手をやった。

「な、何すんのよ!このヘンタイ!」

 予想通りアリスの罵声が飛んできたが、気にせずナフキンでアリスの口元を拭いた。

「何って、口元にシャーベットが着いていたから拭いただけだよ」

 それを聞いたアリスは急におとなしくなって、顔をほんのり赤く染めた。俺はそれを恥ずかしかったのだろうと解釈した。

「あ、ありがとう……」

 拭き終わったので口元から手を離すと突然アリスがそう言ってきた。俺は別にお礼をされることをしたわけではないので普通に返した。

「気にすんなよ たいしたことねぇよ」

「…………じゃあ、また夕食で……」

 そう言って俺達はそれぞれの部屋へ戻っていった。


 その後この船で最後の夕食の席でもアリスがケッチャップが口元に着いていたのでふき取ると

「「「…………………………」」」

 他の三人からとても白い目で見られ、その時間俺はとても居心地が悪かった。


 途中エンジントラブルが発生したため予定より一時間ほど遅れたが無事港へ着いた。

「やっと着いたわね、ヴェイヴタウン」

「楽しみましょうね~みなさん」

「明日泳ごう、ホムホム」

「お兄様、目的をお忘れなく」

 アリス、リーナ、ミネルバ、瑠璃がそれぞれ一言言いながら船から降りた。

 俺は四人が降りた後に続いて船を降りた。


 そして、すぐに宿へ行き、全員一晩何事もなく(正確にはもう瑠璃は動いていたが)過ごした。


 続く

今回は少し長めに書きました。(でも出会い編の時に比べたら短いです)

読んだらぜひ感想ください

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