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セブンスソード―七つの聖剣―  作者: 音無 桐谷
第三章 サマースクエア編
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サマースクエア編3-2

 3-2


 移動日二日目。ミネルバの訓練

「おい、どうしてなんだよミネルバ、こんなとこまで来て剣の稽古だなんて」

 そういいながら焔は剣道の防具を着ながら、稽古を頼んできたミネルバに問いかけた。

「いいじゃないか、昨日はずっと、リーナにべったりだったのだから」

 ……別に、俺だって好きで一日中べったり、していたわけではない。(それに午後からは全員いっしょだっただろ)しかし、それを言ったらさらに反抗されかねないので、だまって稽古に付き合うことにした。


「では参る!!」

 そう言ってミネルバは気合の一撃を上から振り下ろして面をとりにくるが、焔も負けじと竹刀で受け止めて弾き返し、後退させる。それの繰り返しをいくつかして、軽く、四十分は過ぎたころ、よく観察すると、ミネルバの息が上がってることに気がついた。

「おい、もうやめにしないかミネルバ、」

「まだだ!!」

 止めようと声をかけたらミネルバは反発してさらに切り込んでくる。その攻撃の一撃一撃が鋭く、さすがの焔も、これ以上この重さでかわし続けるには限界があった。

 そして極めつけの突きがミネルバの竹刀から焔の顔めがけて放たれた。

(くっ!!)

 焔は首を右側に限界まで倒して、直撃だけは防いだ。だが、面の左半分が破けた。

「そんなのアリかよ!」

 焔はそんな愚痴をこぼしながら、ミネルバの瞳を見た。そして焔は驚きのあまり体がすぐについてこなかった。そこには何度も見てきた、明確な殺意をもった人間の目があったからだ。

(どうしてそんな目をしているんだよ!)

 焔はすぐに体制を立て直し、水平斬りでなぎ払いミネルバを後退させて距離を取った。

「まだまだです!!こんなんで倒れないで下さいね焔さん!」

 そう言ってミネルバは竹刀を構える。それを見て焔はすぐに防具を脱ぎ始めた。さすがのミネルバも驚いたのか、

「なんで防具を脱ぐのですか?」

 とたずねる。焔はそれにそっけなく

「防具つけてたんじゃ、お前に勝てそうもないからな だから脱ぐ それだけだ」

 脱ぎ終わるのを確認したミネルバは一言も言うことなく突っ込んで行き、全力で竹刀を振るった。だが、

「軽いな」

 そう言って焔は右手で持った竹刀だけでミネルバの竹刀を受け止めたあと、もう片方の腕と足も使い、ミネルバを転ばした。

「何!?……うあぁぁ!!」

 そして、ミネルバは何が起きたかわからないまま、地面に仰向けで倒されていた。そして焔が顔の目の前に竹刀の先を向けている。

「私は、負けたのか?」

「あぁ、お前の負けだ」


 1時間に及ぶ、死闘の稽古は無事終了し、ミネルバ自室で寝ている。(正確には、起こしたあと不意打ちの一発をしようとしてきたため、手刀で気絶させた)俺はとりあえず、ミネルバがどこかへ行ってしまわないように、そばで看病しとくことにした。そして同時に白ウサギの「ワンダー」にミネルバを見てもらった。

「どうだ、ワンダー?」

 そう尋ねると、ワンダーは迷うことなく即答した。

「焔の読みどうり、なんらかの操作魔法が掛けられていた 心配はするなもうすでに効力は切れている……どうやら、お前さんを殺そうとしているやからがいる見たいだな…………きをつけろよ」

 それに俺は静かにうなずいてワンダーを部屋に返した。

 それから夕方になったころ、ミネルバが「……ここは?」と言った顔で目を覚ました。

「お前の部屋だ」

 俺はやさしくそう言って、温めたミルクとチョコを手渡した。それにミネルバは手で弾いたりすることなく

「あ、ありがとう…………」

 とお礼までいって、丁寧に受け取った。そして、そばにあったミニテーブルにミルクを置いてこちらを見て、話しにくそうに喋りだした。

「その……すまない 私はお前を…………」

「それ以上は言わなくていい」

 だが、俺はそれ以上喋らせず止めた。理由はそれ以上は酷だと判断したからだ。だが、ミネルバはその程度では止まらなかった。そして、涙を流しながら喋り続けた。

「だが、私は操られていたとはいえ、中条のことをころ……」

「もう、喋るな!!………………たのむからそれ以上泣かないでくれ、俺は誰かが泣いているのを見るのがいやなんだ……だから」

 これは俺の数少ない本音で、同時に、償いでもある。だから自分の胸にミネルバの顔を押し付けて、言った。

「…………だから、泣かないでくれ、俺が必ず、お前を笑顔にさせてやるから」

 俺はやさしくも力強くそう言って自分の頬にも一筋の涙が流れたのを確認した。

「はい………………」

 ミネルバも静かにそう言って俺達はしばらくそうしていた。(といっても、ものの四、五分だが)



 私、ミネルバ・レイチェルはそれから夕ご飯を食べるためにレストランへ行く途中、焔さんと雑談をしていました。

「なぁ、ミネルバ」

「なんですか、中条さん」

 訝しげに私はは応答します。

「ミネルバは十九歳だよな」

「はい 焔さんよりたしか、二つ年上でしたねそれがなにか?」

 さらに何か確認するような口調で中条さんが尋ねてくる。……なにがしたいのだろうか?

「じゃあ、どうして俺を「さん」付けで呼ぶんだ?」

 ……そういえばそうだなと私は改めて思った。そしてそこから言われるであろう質問の内容も。なので、私は

「では、ホムホムでよろしいですか?」

 と言う。それにたいしてホムホムは、

「……………………」

 無言だった。ただひたすら無言を貫き通していた。肯定もなければ否定もない。試しに私は若干使える、水魔法で、目じりからわずかながらの水を出した。そう、まるで涙のように、そして

「だめ?」

 と尋ねたら、ものすごくホムホムはあわてて、

「つっ!!……いいよ、それで というか、ミネルバの好きなように呼べよ 」

「ありがとう」

 私は、とびっきりの笑顔をホムホム向けて送った。


 ◇◆◇◆◇


「ワンダーどうだ?船から降りる前にミネルバに魔法をかけたやつの居場所は特定できそうか?」

「いや、どうやらこの船には、最新の航海システムに魔力を動力とした物を使っているらしい だからはっきり言って、現段階では不可能に近いな」

 焔が静かにベッドの上で寝転んでそう尋ねると、ワンダーはそっけなく答える。

「そうか……なら、使った直後・・ならどうだ?」

 その提案にワンダーは長い耳を閉じて少し考えた後、

「うまくトレースできれば確実に追うことはできる……だが、どうする気だ?」

 そんなワンダーの懸念を焔は、

「大丈夫、かならず相手はもう一度、アクションを起こすはずだ……念のためワンダーは明日俺と行動してくれ」

 証拠のない第六感と策で答えを返した。そして焔は今までにないくらいの怒りを心の奥底に静めなおした。


 ……そして船の旅は、三日目へ


 続く

今度はミネルバと焔のお話しです。

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