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セブンスソード―七つの聖剣―  作者: 音無 桐谷
第二章 闘技大会編
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闘技大会編2-7

 まず動いたのは焔だった。手始めに左右に体を振りながら近づきフェイントをかけて斬りかかる。

「みえみえだ!」

 だが、ワルクーレのタワーシールドによって弾き返される。焔はすぐさま距離を取って、剣を構えなおし

「今度は、そっちからどうぞ」

 と挑発をしかける。そんな挑発にワルクーレは鼻ひとつ動かさず冷静な声で

「では、遠慮なく!」

 そう言った瞬間焔の目の前に砂嵐が起きた。

 風魔法、中級、「トルネラ」 

 正確には風を発生させて、敵の動きを封じる魔法なのだが、それと一緒に地面に転がっていた石や砂を一緒に巻き上げ目までも封じようとした。いわゆる応用である。

 そして見事に焔は目に砂が入って涙が出て、一瞬、ワルク-レを見失った。そしてそれが、すきとなった。

 ワルクーレは鎧を着ているのにもかかわらず軽く二メートルはある砂嵐をジャンプで乗り越え、上から剣を突き刺す形で襲ってきた。

 焔はその攻撃をかろうじてバックステップでかわし、目から砂を取り除く。そして今度はタワーシールドでつっこんできて焔を一メートル先にある建物の瓦礫の山まで吹っ飛ばした。瓦礫が崩れて落ちる音がした。

「―――――がっ!!」

 しかし、焔は死ぬこともなく瓦礫をどかして地上に出る。

 そして、ワルクーレの動けないだろう、という先入観のすきを突いて、「アサルア」で突っ込み、鎧に深々と剣の傷をつける。

「―――――くっ!!」

 ワルクーレも虚をつかれたのか、一瞬驚いた。でも一瞬である。そして、魔法を使った後には三秒ほどの停止時間があり、それを停止時間ぺナルティータイムと呼んでいる。

 そして、今度はその隙をつかれた。いや、隙というよりそうなるのは必然だった。ワルクーレは剣を横に振って焔の左腕を切り落とした。無論、赤い鮮血が飛び散った。勿論ガードはしようとしたが間に合わないと踏んで左脇に剣を挟んで、それ以上体に剣が入るのを防いだ。もちろん、叫び声をあげたいくらい痛かったが、もし、あの三人の命がかかっていると思うと何とか叫ぶのは防ぐことができた。

「中々やるじゃないか、第七位!!」

「いえいえ、ここからですよ第六位!!」

 二人は笑いながらそう言って剣と剣をぶつけ合う。そのたびにお互いの服は切り裂かれ、血が出る。

 そして、しまいには、ついにワルクーレの鎧が砕け散るほどに斬り付けあった。

「クックックッ!、もっと、もっと楽しませろ!!中条焔、いや、漆黒の流星!」

「その二つ名で俺を呼ぶな、サイコパスナイト!!」

 そう言って二人は全力で剣と剣をぶつけ合う。その威力は周りの地面が砕け散り、爆風を生んだ。

「くっは!」

「がはっ!」

 剣の衝撃は体中に響いて二人は同時に血を吐き、互いに膝をついた。

「うむ、…………力を、使いすぎたようだ……今日は見逃してやる 次あったときは必ず貴様を殺す!」

 ワルクーレはそう言って剣を杖代わりにして、街の中央に向けて歩いていった。どうやらあくまで俺は見逃して、この街は手に入れるらしい。

 姿が見えなくなるのを確認すると焔ははすぐさま壁に寄りかかって休憩を取った。

「はぁ…………あと、……少し…………だったのにな……」

 視界が若干ぼやけながら動きもしない頭でそんなことを考えていた。そうして、焔の意識は心の奥深くに入っていった。


 ◇◆◇◆◇


「ここは? 俺はさすがに死んだんじゃ……でも、この景色は…………」 

 俺が意識を取り戻したのは街の中央広場だった。周りには瓦礫と化した建物があり、あたりを見回すとアイツの数十人の部下(兵隊)が血だらけで横たわっている。そして、正面の壁にはワルクーレ、と思われる人間の首だけがない体があり、その一帯を黒く塗りつぶしている。

 俺はワルクーレ?に近づき剣をひろって確かめる。その剣は焔の持っている剣同様、片手用直剣で色は白。とても美しく輝いており、剣の柄と刃の間には青い石が埋まっている。そして、剣の鞘には剣の名前らしき文が刻まれていた。

(そうか……まだ、生きているのか俺は……)

 まずジャンプしたり、ストレッチをして傷の具合を確かめる。どうやら傷はすべてふさがっているらしい。(とんだ体質である)そしてすぐにでも動くことが出来るようだ。背中にはちゃんと剣の感触もある。

「帰るかな」

 忘れ物がないことを確認して俺は徒歩でデジエンス・タウンをあとにした。

 途中、兵士達が十人ほど襲って来たが、黒の剣と白の剣の同時使用(二刀流)で三分ほどで蹴散らした。


 ◇◆◇◆◇


 ――――――あれから一週間が経過しました。焔さんはいまだ帰ってきておらず、全員の空気が日に日に重たくなっていきました。アリスはほとんど一日中紅茶を片手に外を眺めており、ミネルバは外で剣の素振りをし続け、私は森の木を使って焔さんの彫刻を作ったりしていました。

 ちなみに、あの街で起こった戦いは西の国、新・白柱国の仕業が濃厚で朱門国の政府が調べているが証拠がなく、あの時焔さんと戦っていた男、シュナイデット・ワルクーレの独断攻撃だと言っています。

 そのワルクーレとは四つの国の中でもっとも強い七人のうちの一人でその七人には順位がつけられており、ワルクーレはその第六位だそうです。最近の記録では、その白い剣の一振りで幅四十メートルはある川を切り裂き渡ったそうです

 つまり、鬼のように強い人だったということです。そんなのに焔さんは一人で立ち向かいました。ただのフリーの傭兵さんなのに……そして、おそらく命を落としたのでしょう。私達はそれをしっかり踏みしめて生きなければならないのです!

「そうですよ!焔さんがこの世を去ったて、私の命はまだ残っているのだから、焔さんの分までしっかり生きなくちゃ!!」

 アリスの若干涙ぐんだ冷たい目線を無視して、硬い決意をした私は商店街の方へ昼食を買いに繰り出していきました。


 ――――――それから一時間ほどで戻ってきた私はすぐさま腕によりをかけて焔さんが一番美味しいと言ってくれた「一トン豚の肉煮込みカレー」を作って、二人を呼び、カレーの置いてある席に座らしました。もちろん焔さんの席にも大盛りのカレーを置きました。

「これは何のまね、リーナ」

「リーナ、まだ諦めちゃだめです」

 瞳をウルウルさせている二人がやめようと言う声をかけてきましたが

「私達は彼、中条 焔殿のおかけでこうして美味しい食べ物に口をつけることが出来ます そして、命を通して守ってくれた彼に感謝の意をこめ、ここで祈りをささげます」 

 実行しました。私が目をつぶってお祈りをしたのを見て二人共も諦めたように両手を顔の前で組んでお祈りをしてくれました。

「それでは……いただきます」

 数分お祈りをしてから、私がそう言ってスプーンを持った瞬間右の方でなにやら音がしました。その音は食器とスプーンが当たる音だと判断しました。つまり、カレーを誰かが食べている音です。ちなみに、私の席の隣は、焔さんです。………………………………え?

 他の二人もさすがに気づいたようで目を開いて確認しました。そこには、

「リーナ、お前は超能力者か?!俺の一番食べたいものをしかも俺がちょうど帰ってきたときに用意しているとは……祈りをしていた理由はおいとくとして、また美味しくなったな豚肉カレーいつ作ったんだ?昨日のなのか?」

 そこにはスプーンを片手にカレーを食べる焔さんがいました。その黒コートは見るからにぼろぼろでとんでもなく汚れていました。所々には返り血と思われる黒いしみが残っています。

「……生きて……いたのね」

 その瞬間全員の目から涙が流れました。

「焔さんおかえりなさい」

「心配したじゃない!どこ行ってたのよもう!!」

「おつかれさまでした焔さん。」

 みんなでそう言って焔さんが帰ってきたことを祝福しました。そして焔さんはやさしく笑っていいました。

「……あぁ、みんなただいま、そしてありがとうな」


 こうして私の企画・運営した焔さん追悼式は、焔さん帰還祝いへと変更しました。

 ちなみに、足音一つさせずに部屋に入れた所はやっぱり焔さんだなということで水に流しました。

 ――――めでたし、めでたし―――― 


 

ついに……ついに、闘技大会編が終了しました。長かったです。そしてハッピーエンドです。……でもまだ終わりません。なんかそんな終わり方しましたが、終わりません。まだまだ、続けていきます。


それでは次回作の告知です。 次回のテーマは「海」と「恋」と「トラブル」で、行きたいと思います。……どうか時期はずれだなんて思わないでください。

それではまたいつか……

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