闘技大会編2-5
2-5
この日も快晴のデジエンス・タウン。まったく曇りにでもならないのこの街は。と思う今日この頃私、リーナ・アルベルトは度肝を抜く光景を目にしていました。
闘技大会三日目。焔さんの第二試合、焔さんはあの黒い剣で出場。相手選手の名はプギーと言うなんともかわいらしい名前……実は中年のおじさん魔導士。だけど朱門国には知らない人はいないと言われてる炎系統の魔法を操るすごい人なんです。私達二人はさすがに「もうだめでしょアイツ」とか思っていたのですが……
「どうしたんですか?プギーさん、攻撃がかすりもしませんよ」
焔さんがからかうように焼け野原になった草原ステージを走り回る。
「うるさい、ガキ!今すぐ灰にしてくれる!!」
そう言ってプギーさんは炎系統の高位魔法「エンチャート・フレイム」を放つ。この魔法の威力は軽く半径十メートルは焼け野原に出来るすごい魔法なんです。でもそれを焔さんは
「効くかぁぁぁぁぁぁぁ!!」
と叫んで黒の剣を火の球に当てて、爆発。最初見た時は驚きました。なんせ
黒の剣が炎をすべて食べるように黒い石へ吸収したのですから
それからは同じことの繰り返し。炎系の魔法を放つ→吸収→放つ→吸収……
そして二十分が過ぎたころに焔さんは突如剣を振りかざし、
「finish!!」
綺麗にそう発音して「アサルア」を発動し、六十メートルはある距離を二秒ほどで詰め、水平切りを一発お見舞いし……
ほぼ無傷で五万ほど残っていたHPを全損させました。
私は焔さんのことがわからなくなりました。なんなんですか今の。今まで手を抜いていたのですか?と、聞いてみたいくらいの一撃でした。そばにいた、ミネルバさんやアリスも目を丸くしてポカーンとしていました。当然です。
……どうやら驚いてるうちに、焔さんは退出したみたいなので三人でアタックしてみたいと思います。
◇◆◇◆◇
「ふぅー、」
俺、焔は久々の全力を出した試合のあと休憩室でドリンクを飲んでいた。この休憩室は選手と運営側のスタッフが使えるところである。しかし選手以外が使うときは金を払わなければいけない。
そして思いっきり目だったため、人の視線が少しながらあった。無理もない、初めてこんなに人のいる場所で全力を見せたのだから。しかし、
そのあとやってきた、旅の友達、略して、「旅とも」の女子三人がやってきたのには驚いた。
「どうしたんだココまで来て、約束の時間にはまだ時間が……」
と言いかけたところでアリスに首の後ろを捕まれ、引きずられながら外にでて行き、当初の予定のレストランに来た。
「だからなんだよ急に、まだ昼飯には早いだろ」
席に座らされるなり反論をしようとするが、
「これより第一回、戦闘手抜き疑惑、質問審議を行いたいと思います」
と言い始めた。焔はとりあえず黙って聞くことにした。
「被告人、中条 焔 貴方はアレが本当の実力、つまりは全力の試合だと言うことを認めますか。」
まずリーナが喋り始めた。焔はそれにうなずいて答える。
「では、昨日の私との戦いは全力ではなかったと」
次に話しかけて来たのはミネルバ。顔には、答え次第では殴る と言った表情が見て取れた。
そのため、近づいてくるミネルバに焔は手を顔の前に出して、首を何度も縦に振って答える。
「私と初めて戦ったあのときも、全力ではなかったということかしら?」
アリスのその質問に焔は初めて動揺した。
「…………すまん、しかしあの時は短剣だったしさ、全力でやったけど、その、あれ実力じゃないよ、うん」
そう言った瞬間アリスの目に殺気がやどった
「すまない、許してくれ……あと頼むから殴らないでくれ」
普段なら怒鳴りつけて殴ってくるところだが、しかし、杖は振り下ろされなかった。焔が目の前を見ると杖どころか、目の前にはどこから持ってきたかわからない湯気の上がっている紅茶があった。
「飲みなさい。別に脅してるわけじゃないから……ちょっと知りたかっただけよ……」
顔を少し赤らめながら外の方を向いてアリスはそう言い、丁寧にお茶を焔の前に出した。焔はそれをありがたく一口飲んで理由を聞きだすことにした。
「どうして、三人ともそんなことを聞くんだ?」
『あなた(あんた)の強さが以上だったからよ(ですよ)!!』
三人が同時にそう大きな声で言ってきた。焔はその迫力に少し後ろへのけぞった。が、質問を続ける。
「……それじゃあ、どこら辺が?確かに今日は全力でやったけど、あれは剣の能力と相手の相性が良かったからなんだけど」
剣の能力 三人は明らかにその部分に興味を持ったのがわかったため、続けて剣の能力について焔は話すことにた。
「あの黒い剣、正確には、俺の集めている剣にはそれぞれ能力が一つあるんだよ。そしてその能力が、」
『その能力は……』
三人が見守る中、焔はその能力について語った。
「炎系攻撃無力化とその分の剣の威力の増加 それがあの黒い剣の能力 そして今回の相手は名高き炎系の魔導士……これでわかっただろ アイツの炎系の魔法が無力化されて、一撃でほぼ満タンのHPが一瞬でゼロになったか」
そこまで話終えたところでリーナから手が挙がった。焔は目で、いいよ と合図をして話すようにうながす。
「じゃあ、あの薄紫の剣にもあるんですか?」
その質問に焔はうなずいて答えてその話をし始める。
「あぁ、あるよ もう一つの剣のほうはどんな状態異常、つまり毒や病気を治すことができるでも、大量の魔力が必要でとても一人じゃ出来ないんだよ……一人の毒ぐらいならアリスやリーナ、俺の魔力すべてを使えば治せるだろうけど……一人の病気を一瞬で治すには王国魔導士全員くらいの魔力が必要だと思うだからとてもじゃないけど使えるようなものじゃない」
そこまで言い切って焔はまた紅茶を一口飲み、目で「ほかに質問は?」と促した。しかし、それ以上の質問はなく、
「…………つまり、別に今までの勝負に手は抜いていない そう言うこと?」
アリスの結論が述べられた。それにうなずいて焔は答えて、ほかのみんな(とくにミネルバ)の表情はやわらかくなった。そしてみんなで少しにぎやかになった昼食会が開かれた。
◇◆◇◆◇
次の日、ゆっくりしようと早めに控え室へ行こうとしたのだが、焔の控え室の前に駐屯騎士が数人いた。駐屯騎士とはその名の通り、国が街ごとに置いている騎士で左腰のサーベルと、黒を基調とした服装に左肩には王国、つまり朱門国の国旗が記されている。その駐屯騎士の顔が少し険しかったので焔は少しどうしてこの場いるのかを聞いてみることにした。
「どうしたんですか駐屯騎士のお二人さん、俺の部屋の中に何かあるんですか?」
その問いかけに少しムッとした顔を見せた駐屯騎士の二人は最低限公開できる理由を話した。
「さっき、この会場の中に爆弾を仕掛けた と犯行声明があったからそれで調査に来たんだよ……だけど、」
話を続けようとしたが、大きな音が外から鳴り響いた。その音はとても重たく低い音。
「ば、爆発!?」
もう一人の駐屯騎士がそう言いい残し走り出す。
「すまない、説明は後だ!今すぐ自室にいなさい 君の自室はすでに調べて安全だと確認してある」
一度は自室に入ったものの、やはり気になった。時刻をかくにんするとまだ試合開始まで、一時間ほどあったので外の様子を見てくることにした。
外に出ると確かにここから南に一キロほどのところで黒煙が上がっているのが見えた。そして同時に
なぜか覆面の男達がレイピアやら、杖を持って四人ほど焔を囲んできた。
「あんた達も大会の関係者か?」
一応問いかけて見るが返答はない。むしろ、殺気がビンビン伝わってくる。とりあえず焔は覆面集団を敵とみなして背中の黒い剣を抜き放った。
覆面のレイピア使いがまず真っ先に突撃してくる。実に見切りやすい攻撃だった。焔は体を半身にして攻撃をかわし、右手の剣で躊躇なく腹に剣の刃を入れた。
(まずは一人)
相手が死んだかどうかも確かめずその奥にいた魔導士に向かってダッシュし、両手で相手の右肩から左わき腹にかけて斬りつける。血しぶきが上がって焔の黒いコートをわずかに赤くさせる。
残った二人のレイピア使いは二人係で焔を殺そうととても早い突きを連続で無数に繰り出してきた。さすがの焔も剣でガードしながら大きく間合いをとる。
それを好機と見たのか、二人は一気に詰め寄って一撃にかけた攻撃を仕掛けてくる。だが攻撃は当たらず、かわりに、ガラスが銃で撃たれて割れたような音が鳴った。理由は、
焔が二本のレイピアを黒の剣の一振りで真っ二つにしたからである。
「ば、化け物め!!」
「くそ!!逃げるぞ!」
男達は突如気弱になって逃げようとしたが、焔が華麗に脚力強化の魔法で二人の頭上を飛び越えて立ちふさがり、拘束魔法、「シャット」を詠唱して、二人を地面にひれ伏せさした。
「おい、お前らは何者で何が目的だ、答えろ」
焔が冷徹な視線と声で剣を片方の男の喉下に突きつける。しかし、男は平然とした顔で焔の目を見つめる。
「死にたいのか?」
焔が剣を少し揺らしながら煽るが、とうとう目を閉じてしまった。そして、
「殺すなら殺せ その覚悟くらい俺達にはある お前もあるんだろう?」
逆に男が焔に問いかけてくる。焔は少し答えるかどうか迷い、てっきょく懐から取り出した、高圧電流で相手を気絶させる魔法武器スタンロッド(単価 八万円)で、二人とも気絶させ自分の控え室に外からパスワードロックをして入れておいた。
(なにが起こっているのか確かめなくちゃな…………)
そして、焔は所々で黒煙があがっている市街地へ足を向けたのだった。
もう10月です。小説を書き始めてもう、かれこれ3ヶ月が経ってしまいました。
……なにはともあれ、これからもよろしくお願いします。